今季グランプリ(GP)シリーズ2大会で優勝がなく、演技内容でも課題が山積していた全日本女王の宮原知子だったが、GPファイナルではそれを払拭するような力強い演技を見せた。

 公式練習から調子のよさがうかがえ、本番会場で練習を重ねるごとに滑りがよくなっていった。そして、迎えたショートプログラム(SP)では、気合いの入ったキラキラ衣装を身にまとい、まだ完成半ばという『ムゼッタのワルツ』でスピードと勢いのある演技を披露。自己ベストを2.16点更新する74.64点をマークして3位発進となった。

「低い点数かなと思っていたので、自己ベストの得点が出てびっくりしています。GP大会の2戦とも納得いく演技じゃなかったので、今回はどうなっても思い切っていこうと思って、最初から思い切っていくという気持ちを意識して滑りました。ただ、思っていたよりちょっとステップで足が震えてしまったので、自分としてはもうちょっと滑れたかなと思っています。

 いままでの中では一番音楽に乗って滑ることができたので、まあまあかなと思います。SPで回転不足を取られなかったのは、演技自体の滑りが全体的によかったからかなと思いますし、もうちょっと気持ちの面で自信を持てばいいのかなと思いました。もうひと息、という感じです」

 SPでつかんだ手応えは、フリーにもしっかりとつなげることができた。得点源となる3回転ルッツ+3回転トーループの連続ジャンプとプログラム後半の3連続ジャンプを決めるなど、自己最高得点となる143.69点。合計218.33点で、昨年に続く2大会連続の総合2位となった。

 課題にしている「回転不足をしないジャンプ」では、3回転フリップにアンダーローテーションがつく小さなミスを1つ出したが、「ミス・パーフェスト」と呼んでもいい出来栄えだった。宮原自身も会心の演技に納得しており、昨季の四大陸選手権で出した自己ベストを、またも大きな舞台でSP、フリー、合計と、すべてで記録してみせた。フリーの演技後には、珍しくガッツポーズも飛び出した。

「演技はまだ完璧ではなかったんですけど、何とか滑りきったという気持ちと、しっかり演技ができたらガッツポーズしてもいいんじゃないかと(濱田美栄)先生にも言われたので、演技がよかったらガッツポーズはしようかなと思っていました。今日のフリーは調子もよくて、ここまで来られたからしっかり滑ろう、自分のできることをしようと思いました。フリーの完成度としては、いままでのGP2大会と比べると思い切って滑ることはできたし、完璧ではなかったですがよかったです。140点台が出たことについてはうれしかったです。

 まだ改善点はあると思っていますし、今後プラスアルファしていく部分としては、やっぱり自分の一番の課題はジャンプだと思うので、試合でいつでもきっちり跳べるように頑張りたいです。あとは不安のあるSPをもっとしっかり滑りたいです。自分の演技ができれば表彰台に乗れると思うので、今回の結果は自信につながります。順位は2位ですが、自分のベストが出せたので、それほど悔しさはないです」

 今季前半戦のGP大会での戦いでは、世界の女子フィギュア界を席巻するロシア勢に遅れを取ってしまったかと思われたが、宮原にとって、ロシア勢とも十分に戦えることが分かったのは大きな収穫だったはず。ガッツポーズにしても、シャイな18歳が少しずつ殻を打ち破りつつあることを証明したシーンと言ってもいい。

 そのガッツポーズについては、濱田美栄コーチがこんなエピソードを明かしてくれた。

「フリーはスピードがあって思い切りできたことがよかったですし、ジャンプの質もSPよりよかったです。アップのときからよく体が動いていて、氷も合っていたので、終始安定していたと思います。GP2大会でよくなかったので、ちょっとずつ修正してきて、このファイナルで一番いいものが出せました。

 練習は嘘をつかないということでやってきましたし、ガッツポーズまで練習しましたから(笑)。何でも練習しないとできないので、ガッツポーズも練習させました。いつもよりも張り切ってできたと思います。トレーナーがいろいろやらせて、キャラを変えようとしていました」

 NHK杯で本人が「ひと皮むけつつあります」と話していたように、気持ちの成長があれば、演技にも好影響が出ることは間違いないだろう。着実に階段を上がってきた宮原の可能性は、この1年の技術的な成長を見ても、さらに花開くことが期待できる。

 濱田コーチは愛弟子の成長についてこう語る。

「滑りがよくなってきたと思います。体が小さいですから、背の高い海外勢と比べて見劣りをしてしまうので、倍、大きさのある滑りを見せないといけない。そう思ってスケーティング練習に取り組んできて、毎日1時間を費やしてきた成果がやっと出てきました。練習通りの演技をすれば、145点以上を出せる力はあると思いますし、もう少し演技構成点も出てくれば150点台も夢ではないと思います。努力家な子なので、今回の2位で自信を取り戻してくれたと思います。

 シーズン後半戦に向けて、SPのワルツを滑ることがまだできていないので、そこを手直ししていきたいです。

 今後もとにかく練習あるのみ。練習したら必ずできる子なので、自信が持てるジャンプになってきて、ちゃんとやれば評価が出るんだと思ったはずです。このファイナルではロシア勢と十分戦っていけることが分かったことが収穫だと思います。十里を行かんとする者はまずは一里からということでいうと、知子はいま七里くらい(の道半ば)ですかね。さらに、もう少し先に行くつもりでやっていきたいです」

 自他ともに認める日本のエースに成長した宮原が、次なる目標に見据えるのは、3連覇が懸かる12月下旬の全日本選手権、そして来年3月にある世界選手権での平昌五輪の出場枠取りだ。

辛仁夏●文 text by Synn Yinha