アメリカのトップ・フォーミュラ=インディカー・シリーズに参戦してきた元F1ドライバーの佐藤琢磨が、2017年の参戦体制を発表した。

 彼にとってアメリカ8シーズン目は、念願がかない、ついに強豪チームからのエントリーになる。ホンダのエースチームであるアンドレッティ・オートスポートにシートを確保したのだ。過去4人のシリーズチャンピオンを生み、4回のインディ500優勝を誇るチームの一員として、琢磨は2017年シーズンを戦う。

 2010年、KVレーシング・テクノロジーからインディカー・デビューした琢磨は、2012年はレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングで走り、2013年に移籍したAJ・フォイト・レーシングでは第3戦のロングビーでキャリア初優勝を飾った。

 しかし、2014年以降は2勝目をマークすることができないまま、伝説のドライバーが率いるチームとの関係は、2016年までの4シーズンで終焉を迎えることになった。2017年、AJ・フォイトのチームは使用マシンをホンダからシボレーに変えることになったため、琢磨はホンダ系のチームに新たなシートを見つけなくてはならなくなったのだ。そして見事に、強豪アンドレッティ・オートスポート入りを決めた。これにより過去7シーズンと比べ、明らかに戦闘力の高いチームからの参戦が実現することになる。

 ただし強豪といっても、2016年、アンドレッティ・オートスポートは1勝しか記録できていない。その勝利がシリーズ最大のレース=インディ500という値千金のものだったとはいえ、常勝チームを目指すオーナーのマイケル・アンドレッティは、不振から脱出するためにシーズン終了後に体制の刷新に取りかかった。

 最初に行なったのがエンジニアリング部門の強化で、ライバルのチップ・ガナッシ・レーシングで重要なポジションにあったエンジニアを、テクニカル・ディレクターとして招聘した。他にも優秀なエンジニアを獲得し、ドライバー・ラインナップにはセッティング能力の高さで定評のある琢磨を加えることにしたのだ。

 アンドレッティ・オートスポートといえば、4台を走らせることで豊富なデータを集め、戦闘力を高めるシステムを最初に完成させたチーム。もちろん2017年も彼らは4カー体制を敷く。

 琢磨のチームメイトになるのは、2012年チャンピオンで2014年インディ500ウィナーのライアン・ハンター-レイ、2016年インディ500ウィナーのアレクサンダー・ロッシ、そして、マイケルの息子でキャリア2勝のマルコ・アンドレッティで、いずれもアメリカ人ドライバーだ。彼らと琢磨は力を合わせ、強豪チームの復活を目指す。
 
 だが、その目標達成はそう簡単ではないだろう。2015年からのルールで始まったシボレーとホンダによる空力競争(エンジン以外に空力パーツもそれぞれのメーカーが開発する)で、シボレーが優勢を保っているからだ。2015年は16戦10勝、2016年は16戦14勝と、シボレーの空力での優位は明らか。ホンダ勢は、超高速のオーバルコース以外では、非常に厳しい立場に置かれ続けている。

 そして、想定を遥かに上回る戦力格差がついたことで、インディカーはマニュファクチャラー間の空力競争の廃止を決定。2018年から空力はワンメイクに戻すことに決めたのはいいが、2017年シーズンは移行期間として空力開発を凍結することになった。つまり、来季は2016年とまったく同じ仕様で戦われることに決まったのだ。ホンダは2016年に空力の性能を向上させたが、まだまだシボレーの優位は動かない。琢磨は強豪チームに入りはしたものの、そうそう簡単に勝ち星を重ねられる状況とは言えない。

 それでもホンダの空力パッケージは、超高速オーバルではわずかながら有利と言われ、またストリートコースでなら空力面の影響力は比較的小さい。それらのコースにおいて、2017年の琢磨はかつてない大きさのチャンスを手にすることになる。

「2017年の目標は、まずはキャリア2勝目を挙げること。そして、その後は1シーズン中に複数回の優勝を飾ることです」と、琢磨は話している。これは十分に実現可能な目標だ。

 開幕戦は3月の中旬。フロリダ州セント・ピーターズバーグのストリートは、琢磨もアンドレッティ・オートスポートも得意とするコース。いきなりの大活躍が見られることを期待したい

天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano