今回のルール改正にジョンソン本人も喜び(写真は全米オープン時)(撮影:岩本芳弘)

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今年の全米オープンで大騒動になったダスティン・ジョンソンの1罰打事件。あれからほぼ半年が経過した今、あのときのジョンソンのようなケースが今後はノーペナルティとなるようにルールが改正された。USGA(全米ゴルフ協会)とR&Aによる今回のルール改正は、きわめて早いスピード対応。ジョンソン本人も「とてもいいこと」と喜んでいる様子だ。
この件、半年前の夏の出来事の詳細を忘れてしまった人も多いと思うので、ざっとおさらいしてみよう。
問題の5番グリーンを動画で、動いた?動いてない?
オークモントで開催された今年の「全米オープン」最終日の5番グリーン。ジョンソンがパーパットを打とうと構えた際、グリーン上のボールがわずかに動いた。ジョンソンはその場でルール委員を呼び、そのルール委員の判断によってジョンソンは無罰でプレーを続行。
しかし、12番ティでUSGAの別のルール委員がやってきて「ホールアウト後に1打罰が科されるかもしれない」という可能性を告げた。ジョンソンはメジャーの優勝争いの真っ只中、1打罰の不安を抱えながら残り7ホールをプレーするという奇妙な事態に陥った。
それでもジョンソンは68をマークし、2位に4打差をつけて悲願のメジャー初優勝を遂げた。1打罰は最終的には科されることとなり、68は69へ、2位との4打差は3打差へ変えられてしまったが、それでも堂々の勝利。1罰打が勝敗を左右することにならなかったのは、せめてもの幸いだった。
「でも僕は1罰打にはやっぱり納得できない」
ジョンソンはUSGAの裁定に対しては最後まで納得しておらず、欧米メディアもUSGAの対応の仕方と下した裁定に嵐のような批判を浴びせた。
そして今、USGAとR&Aは「意図せずして偶発的に(=accidentally)グリーン上でボールが動いた場合は、無罰で元の位置にリプレースできる」とするルール改正を発表。来年1月から施行されることになった。
ゴルフのルール改正は4年に1度、五輪開催年とされているが、USGAによれば「ゴルフルールの近代化の一環」あるいは「早急に改正が必要な特殊ケース」とみなされるものは例外で、今回は特殊ケースに当たるそうだ。
米ツアー選手やキャディの間では、すでに「DJルール」と名付けられている。「ジョンソンのためのルール改正」という意味だ。これまでも「タイガー・ルール」「デュバル・ルール」「チャールズ・ハウエル・ルール」「ジェイソン・デイ・ルール」等々、トッププレーヤーのための特例と思えるような内容や形でツアーの決まりごとが変更された際、ジェラシーを込めて、そんな名前が付けられてきた。
「DJルール」という呼称にもジェラシーの臭いは漂っているが、DJ以前にも、たびたび混乱を招いてきた複雑なルールの1つがシンプルでわかりやすくなったこと、DJの騒動がきっかけとなり、あれからわずか半年で改正されたことはウエルカムだ。
意図せずして偶発的に(=accidentally)」という言葉の解釈の仕方次第で裁定の仕方も変わるだろうから、今後も騒動が起こる可能性はまだ残ってはいる。だが「わざとじゃなければノーペナ」という明確な約束事ができたことは大きな前進だ。
全米オープンではジョンソンがリードを維持して優勝できたから良かったものの、あの騒動、あの1罰打のせいで負けていたらと考えると怖い気さえしてくる。ルールの裁定に勝敗を左右され、その結果、負けた選手の心には大きな傷が残る。それが糧となり、モチベーションになればいいが、トラウマとなり、メンタル面から転落していくことだってある。
それを乗り越えてこその一流アスリートなのかもしれないが、アスリートだって生身の人間。付けなくてすむ傷は付けないであげたいではないか。
そう考えると、やっかみ混じりに「DJルール」と呼ばれても、今回のルール改正はUSGAとR&Aのグッジョブだと私は思う。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
<ゴルフ情報ALBA.Net>