サイト「グーグル」より

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 かつて、アップルのデザイン工業部門を喉から手が出るほど欲しいと痛感したのは、グーグル創業者で現持株会社アルファベットCEO(最高経営責任者)のラリー・ページであった。アップルにあってグーグルに足りないもの、それはデザイン力を主眼に置いたモノをつくる力、まさしく製品力である。

 アルファベットは端末のプライベート・ブランドを確立するため、ネクサスシリーズをスマートフォン(スマホ)やタブレット市場に断続的に投入してきた。だが、そのほとんどの試みは低調に終わり、消費者に魅力ある製品を提供できずに失敗を積み重ねてきた。

 そこで、2012年に125億ドルでモトローラ・モビリティを買収して、ハード部門の刷新を図ったが、シナジー効果を生み出すどころか赤字経営を改善できず、14年には約30億ドルで中国のレノボ・グループに売却している。

 圧倒的な技術力で、インターネット検索エンジンやスマホ向けOSなどを開発して、市場シェアを高めてきたアルファベットにとって、ハード事業はまさに鬼門となっている。コア事業に中核的な経営資源を集中させる一方で、ハード事業への予算や人材の投入はこれまで限定的なものであった。

 だが、この流れを止めるための試みが、ここにきて日の目をみようとしている。今秋に投入した新型スマホ「Pixel(ピクセル)」が、堅調な滑り出しをみせているのだ。先月末発表されたモルガン・スタンレーのデータによると、ピクセルとピクセル XL の両端末が年末までに300万台の販売台数を達成することが明らかになった。この勢いは17年も続き、販売台数は500〜600万台に達すると見込まれている。

 一般的には、この期間に起きたiPhone 7 Plusの品薄状態やGalaxy Note 7の発火問題により、ピクセルが米国消費者の新たな買い替え候補になったとの見方もできる。だが、それだけの要因でこれほどの販売数を達成するのは不可能である。ピクセルは間違いなく米国で一定の評価を獲得しつつある。

●アプリの動きがスムーズ

 ピクセルは、アルファベットが初めてソフトとハードの両方を手掛けたスマホである。同社がアップルに並々ならぬライバル心を持っているのは、アンドロイド開発の経緯を見れば明らかであるが、外見のデザインはiPhone7に酷似している。アルファベットがiPhoneを大きく意識してスマホ開発を進めたのはアンドロイドの開発以来で、これが2度目となる。

 デザイン面だけをみればピクセルは亜流といわれても仕方がないが、ソフト面でそれを大いに凌駕する。ピクセルは、Gmailをはじめとして、グーグルマップやグーグルカレンダーなど、グーグル独自のウェブアプリケーションのすべてがスムーズに動き、使い勝手が良い。また、グーグルアシスタントの精度が高く、スケジュールなど個人情報の提供により、文脈を理解した提案や最適化された情報を示してくれる。

 今春、モトローラ・モビリティで社長を務めていたリック・オスターロー氏をトップに据えてハード事業を統括する新部門を設立したアルファベット。抜本的な見直しを進めて開発に漕ぎ着けたピクセルが、消費者から一定の評価を得た。この初代ピクセルの成功に、アルファベットは今後光明を見いだしていけるのだろうか。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)