心の病の人はなかなか病院に来たがらない。また、地域によっては専門医がいないなどの問題がある。そこで、慶応義塾大学の研究チームが病院と自宅をテレビ電話でつなぎ遠隔治療を行なう臨床実験を行ない、精神科領域では日本で初めて効果を立証した。

研究成果は「日本遠隔医療学会雑誌」の2016年12月号に発表された。ひきこもりや高齢化で急増している認知症の治療に役立つことが期待される。

治療を受けられない人が増加

慶応大の11月30日付発表資料によると、現在、国内の精神科患者数は約700万人で、増加傾向にある。一方、高齢化、専門医の偏在、「引きこもり」状態で外出が困難などの理由で治療を受けられない人が多くなってきている。この問題の解決のために、テレビ電話システムを使って対面と同程度の治療効果を上げられるかどうか検証した。

60歳以上のアルツハイマー型認知症患者、軽度認知障害者、健康な人の合計30人に協力してもらい、対面とテレビ電話の両方で診断と治療の効果を比較した。治療には、認知症診断で用いられる「長谷川式簡易知能評価スケール」を使った。これは「名前」「現在の日時」「現在いる場所」「簡単な計算」「聞いた言葉をすぐ言えるか」「物を見て名前を記憶できるか」などをチェックし認知能力を調べるものだ。

この結果、テレビ電話でも直接対面した場合と変わらない治療効果を得られた。また、強迫症の患者3人の自宅と病院をインターネット回線でつなぎ、ウェブ会議システムで心理治療を行なうと、対面と同等の効果が確認できた。