「ストレスチェック制度」実施に20数社で携わった現役産業医だから気づいた3つの反省点

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◆ストレスチェック制度1年目の課題

 うつ病などのメンタルヘルス不調を持つ人が100万人を超えるとも言われている現代。各自が自分のストレス具合、つまりこころの健康に早めに気づき対処し、メンタルヘルス不調者を減らすべく、2015年12月、「こころ」の健康診断とも言えるストレスチェック制度が始まりました。私は産業医としてこの1年間、新制度導入から実施まで20数社の制度導入や実施に関わってきました。

 前回の記事(「ストレスチェックテスト」初年度で、現役産業医が本当に伝えたかったたった1つのこと)では、ストレスチェック制度実施の成功例について書かせていただきました。今回は実際にストレスチェック制度を現場で1年間やってみて、反省と今後の課題について振り返ってみたいと思います。ストレスチェック制度の詳細については、こちらの過去記事(いよいよ始まる職場の「ストレスチェック制度」、効果がなくても受診すべき理由とは?)をご覧ください。

◆一喜一憂だけでは意味がない

 ストレスチェック制度について、私が最近、企業の担当者からよく受ける質問は他社の受検率、高ストレス率、面接指導受診率などです。これら数値が気になることは理解できます。しかし、これら数値を他社と比較して一喜一憂することほど意味ないことはないでしょう。

 なぜならば、ストレスチェックテストの受検はあくまで任意であり、その受検率による罰則はありません。高ストレス者の割合についても、低くしたければ判定基準を高く設定すればいい(それを衛生委員会で承認すればいい)だけなので、その割合を他社と比較するのは意味がないのです。また、希望すれば自分の詳細な結果が会社に開示されてしまう面接指導など、受けたいと思う人はそもそも少数派です。

 前回の記事で“いい”ストレスチェック制度の事例として、この制度を個人及び管理職の“きっかけ”として活用できた企業のことを書かせていただきました。反省の余地のあるストレスチェック制度に関しては、上記の“きっかけ”としての活用ができなかったこと以外、共通の反省点など一括して言えることはありません。

 ただし、個々の会社の事例を見ると、それぞれに次年度に向けて反省(改善)すべき点がありました。私のクライエントや産業医仲間の事例、実際に私が相談を受けた事例などからいくつか紹介させていただきます。

◆1年前から入念な準備をしていた企業の場合

 1つ目の事例は新制度の社内への告知や従業員の会社への信頼度について考えさせられた事例です。

 この企業(総従業員数約約2000人、受検率約90%以上、高ストレス率約約10%)は保健師の方が中心となり、複数の医師による面接指導の機会や、カウンセラー等心理職による補足的面談、相談対応など、1年前から入念な準備のもと、ストレスチェック制度を実施しました。

 受検率は高かったものの、面接指導の希望者はいなかったとのことでした。面接指導の受診は義務ではありませんので、希望者ゼロも法的には問題ありません。ただし、この結果には、担当の保健師さんはがっかりしたようでした。

 この事例の学びとしては、ストレスチェック制度は制度を用意すれば終わりではなく、例えば面接指導や補足的面談の担当者のプロフィールや顔写真も含めて社員に紹介することや社員への案内にプライバシーがしっかり守られることなどを明記すること(社内マーケティング)も大切ということだと思います。

◆前向きに取り組みたいという思いがアダに

 2つ目の事例は、補足的面談も含めた臨機応変な対応も大切と考えた内容です。この企業(総従業員数約約1200人、受検率約67%、高ストレス率約約50%)では、事前に決めていたストレスチェック制度の規約通りに、高ストレス者に面接指導の希望を募ったところ、約200人が手を挙げたそうです。