NHK 大河ドラマ「真田丸」(作:三谷幸喜/毎週日曜 総合テレビ午後8時 BSプレミアム 午後6時)
12月4日放送 第48話「引鉄」 演出:清水拓哉


まずは48話をおさらい  やっぱり戦国ホームドラマだった 


「お主の不屈の気構えには感服つかまつる」大野修理(今井朋彦)
「わたしは勝つためにここへ参ったのです」幸村(堺雅人)

真田丸もなくなり堀も埋められ絶体絶命のなか、真田幸村の奮闘が描かれる48話。
巡らす策も、有楽斎(井上順)を脅す短刀さばきも、銃(馬上筒)の扱いも、すべて決まる幸村。


だが、豊臣と徳川が、家康の影武者暗殺など、裏の裏をかきながら牽制し合ううち、やっていることが裏目裏目に出て、「わしの手で奴らを滅ぼす」と家康(内野聖陽)の感情が沸点に達してしまう。

「戦が起こるときは誰も止めることはできぬ」(幸村)

その悲劇への道筋のなかに、三谷幸喜は、「真田丸」が元来描いてきた「家族」の姿を点描する。
幸村の案で、牢人たちの身内が城に呼び寄せられる。大野修理(今井朋彦)と大蔵卿(峯村リエ)の「薄気味悪い母子」(後藤又兵衛)関係が垣間見えるのをはじめとして、登場人物たちがひととき家族と触れ合う様は、序盤から中盤にかけて色濃かった“戦国ホームドラマ”が戻ってきた感じもした。
とはいえ、状況はかなりシビア。
弟・治房(武田幸三)との確執や、幸村の息子・真田大助(浦上晟周)と、信之の息子・真田信吉(広田亮平)と真田信政(大山真志)の複雑な関係性も描かれた。



後藤又兵衛(哀川翔)の孤独と「妻も子もとうの昔に死んだ」と言う与左衛門(樋浦勉)も印象的だ。
茶々(竹内結子)、秀頼「中川大志」、千姫(永野芽郁)の場面では「肉親が敵味方に別れるのは辛いものだ」としんみり語られ、大野兄弟に自分たち兄弟の姿を照らし合わせる信繁(ここは幸村より信繁としたい)を経て、最終的に信繁と信之(大泉洋)の各々の立場が描き出される。
信繁からの手紙を読んでの信之の台詞、
「いや、おれにはわかる 弟は死ぬ気だ。文には書いておらぬがわしにはわかるのだ。おそらくは大御所様と刺し違えるつもりであろう。止められるのはわししかおらぬ。
大阪へ参る」
これもかなり重い。


また、作兵衛(藤井隆宏)や春(松岡茉優)たちが畑仕事に精を出すなかで、その畑は千利休の茶室跡であったことがわかったうえに、そこから馬上筒が出て来るという流れも鮮やか。
信繁が義兄・小山田茂誠(高木渉)と、馬に乗ったまま大将の首を狙うにはどうするかと語り合うのも印象的。馬に乗ったまま火縄だと扱いに手間取る・・・という話の流れから、信繁が茂誠に託そうと信之や松宛の手紙を書き、その後、馬上筒が発見される運命にはぞくぞくした。


そういった家族描写のひとつに、佐助(藤井隆)の求婚を秒速で振ったきり(長澤まさみ)が父・内記(中原丈雄)の腰を揉む場面がある。そこでの会話がまたニクイ。

きり「はじめて痛めたのはいつなんですか?」
内記「九度山で雁金踊りを踊った時」
きり「そんな前から・・・」

3度、登場、「雁金踊り」! 



雁金踊りは11回、41回に登場して、視聴者を沸かせた踊り。時代考証を徹底しているという「真田丸」だが、雁金踊りは創作だったとSNS でも話題になっていた。
あの妙に説得力のある踊りがどうやってできたか詳しく知りたくて、吉川邦夫プロデューサーに取材を試みた。

吉川「11話の初稿には、おこうの台詞に『真田名物からす踊り(?)をご披露します』と書いてありました。三谷さんに確認すると、特に出典はなく、思いつきとのこと。そこで、時代考証会議で、それに類するものがないか相談しました。『史料には見当たらないが、からすからの連想で“雁金踊り”とすれば、真田っぽいのでは?』というアイデアが出て、芸能指導の友吉鶴心さんと橘芳慧さんに何か考えていただけないでしょうか? とお願いしたところ、友吉さんが雁金の『金』は、雁の鳴き声が鉦の音に似ているからという由来を見つけて、鉦を中心としたリズムを考案し、おこう役の長野里美さんが、橘さんによる『結び雁金』の家紋を模した振りを見事に体現してくれて、ものすごく面白いシーンになりました。それで、九度山を脱出するときにもう一度、あの雁金踊りを登場させることにしたんです。今度は長いので、友吉さんが歌詞を考えて、『結び雁金めでたけれ』の節を作り、稽古で堺さんのアイディアを橘さんがうまく活かして振りを改良し、さも本当に地元で伝承されているかのような踊りが完成しました。ちなみに、歌の前半『一張(いっちょう)の弓の勢いは、雁金や』は、友吉さんが、新しく中国の故事来歴から、ネタを見つけて作りました。敵の捕虜となった兵士が、故郷に自分の無事を知らせるため、手紙を雁の足に結んで放ったところ、雁は家族のもとにたどり着き、家族は彼の無事と武功を知ることができた、というお話です。『武功を伝える』というのを、鳥のように空を飛ぶ武器である弓矢にだぶらせて、この完成したとのこと。本当にもっともらしくて、伝承歌っぽくてよくできていると思います。“ディテイルに神が宿る”ということを体現してくれていますね」

41話の再登場の際、「信濃では蕎麦がきの次に有名らしいです」という台詞もあったので、本当にあるものかとネットで検索してしまったと言うと、吉川プロデューサーは「きっと100年くらい後になったら、伝統の雁金踊りと歴史に残ってしまうかもしれないですね。こんな映像も残っていると、『真田丸』が資料として見られていたりして」と笑った。

三谷幸喜は、「真田丸」がはじまるときのインタビューで「可能なかぎり史実に近いものを書こうと思っている」と言いつつ「ただ分かってない部分は、今回も思いっきり想像でつないでいきますよ。(中略)だってそのほうがおもしろいから」と語っていた(NHK出版「NHK 大河ドラマ・ストーリー『真田丸』」前編より)。

雁金踊りにも、思いっきり楽しませてもらった。
ただ、面白いだけでなく、注目すべきは、歌詞の内容が、「敵の捕虜となった兵士が、故郷に自分の無事を知らせるため、手紙を雁の足に結んで放ったところ、雁は家族のもとにたどり着き、家族は彼の無事と武功を知ることができた」というやっぱり「家族」と関連があったことだ。
きりと内記の父子の触れ合いのなかで「雁金踊り」の話が出てきた回で、信繁が信之に固い決意の手紙を送る(武功と無事の報告ではないのが悲しいけれど)場面もあって・・・とまるで必然のようではないか。まったく「真田丸」はどこまでも細かくて深い。

現在、秀忠役の星野源が“プロの独身”を自称する男・平匡役で出演している「逃げる恥だが役に立つ」(TBS)の「恋ダンス」が大流行中だが、「真田丸」には「雁金踊り」がある。紅白でダンス合戦やってほしい!
(木俣冬)