親の借金が発覚しました。今の給与では返済できずに困り果てています

連帯保証人になっている場合はともかく、親の借金を子どもが肩代わりする義務はありません。親と子は別です。

――300万円くらいであれば頑張ろうと思いますが、金額が多くて……。

相続を放棄すれば、相続財産はもらえませんが、負債を肩代わりする必要もなくなります。

――その場合、親の末路はどうなるのでしょう?

借金を返済できなければ自己破産することになります。そうなればたいていの場合、借金は帳消しになるはずです。裁判所の判断で金目の物を差し押さえられる程度で、命までは取られません。

――その後も、親の生活費が不足するかもしれません。いくらか仕送りする必要が出てきそうです。

「自分のご飯は自分で食べる」というのが、人間が大人として自立する大原則ですから、無理に親の生活費を仕送りする必要はありません。

――「育ててもらった」という恩は感じなくていいんですか。

動物は親に育ててもらっても、巣を出たら知らん顔でしょう。それが自然界の姿です。

クールに言えば、生活に困ったら公的保障もあるわけです。どうしても自立できない人は社会全体で面倒を見るべきで、家族が苦労するべきではありません。もちろん、余裕があれば親に仕送りしてもいいとは思いますが。

――でも、日本では「親孝行」が善い行いとされていますよね。

学者に言わせれば、それは人為的につくり出された家族に関する虚像です。人間≒動物であると考えれば、子どもを持つことは、成人までその子どもの面倒を見る義務を負うことです。人間は成人するのが遅い。それは動物としての人間の特性なので、仕方がありません。

アメリカは厳しいですよ。子どもが成人する前に父親が蒸発したら、まず公的機関が養育費を立て替えます。そして「養育費を払え」と、国家権力が父親を追いかけ続けます。

――なかなか捕まらずに、支払われなかった場合は、どうなるんですか。

たとえば、州によっては運転免許証を無効にする。アメリカは国土も広く免許証がないと通勤も難しいですから。国家が『闇金ウシジマくん』のようなものです。

――親孝行が当たり前という風潮のほうがおかしいんですね。

ただ、親に限らず、お世話になった人が金銭的に困っていたら、「助けてあげたい」と思うのはわかります。人情としては当然です。でもそれは、自分の懐に余裕があることが大前提です。

Answer:相続を放棄しましょう。無理に親へ仕送りする必要はありません

----------

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長 
1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。

----------

(出口治明 構成=八村晃代 撮影=市来朋久)