MRI検査で「認知症」の診断と治療が向上(shutterstock.com)

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 国際アルツハイマー病協会(ADI)の『世界アルツハイマー報告書2015』によれば、世界の認知症の患者数は現在約4680万人。毎年約990万人ずつ増加すれば、2050年には約1億3200万人に達する。なぜ重篤な記憶障害や精神機能障害に襲われる認知症が急増しているのだろう?

MRI検査で「アルツハイマー型」か「レビー小体型」かがわかる

 オンライン版『American Academy of Neurology』(11月2日)によると、メイヨー・クリニック(ミネソタ州ロチェスター)のKejal Kantarci氏は、軽度認知障害(MCI)の患者が「アルツハイマー型認知症」になるか、「レビー小体型認知症」になるかを判別するために、MRI(磁気共鳴画像)検査が有効であると発表した。

 Kantarci氏は、思考力や記憶力に軽度障害のある患者160人を2005年からおよそ2年間ずつ追跡調査し、MRI検査で海馬(記憶を司る脳の部位)の容積の変化を測定した。その結果、61人がアルツハイマー型認知症を発症し、21人がレビー小体型認知症を発症したが、後者の患者の海馬の縮小は見られなかった。

 つまり、海馬の容積に変化のなかった患者は、海馬の縮小があった患者よりも、レビー小体型認知症になる確率がほぼ6倍だった。レビー小体型認知症とみられる20人中17人(85%)が正常な海馬の容積を維持し、アルツハイマー型認知症を発症した61人中37人(61%)は海馬の縮小が見られた。

 レビー小体は神経細胞内に発生する異常な蛋白群だ。レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症に次いで多い変性性認知症だが、錯乱、意識清明度の変動、硬直、幻視、レム睡眠行動障害のほか、衝動的な暴力、パーキンソン病のような運動異常を伴う。確定診断は、患者の死亡後の解剖によってのみ可能だ。

「MRI検査は認知症の種類を判別するために重要だ」

 MRIは強力な磁界、電波、コンピュータを用いて脳の精細な画像を描写するため、海馬の容積を画像の目視と診断ツールによって測定できる。

 Kantarci氏は、「MRI検査によってレビー小体型認知症のリスクがある患者を特定できれば、有望な治療法による早期診断を適正に行える。レビー小体型認知症の患者の半数は、抗精神病薬による重篤な副作用のリスクがあるので、早期診断は、投与すべきでない薬剤を判断するためにも有用だ」と指摘する。

 ノースウェル・ヘルス(ニューヨーク州グレートネック)のGisele Wolf-Klein氏は「レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症の患者に用いられる抗精神病薬が奏効しないので、MRI検査は、認知症の種類を判別するために重要だ」と説明する。

2025年には65歳以上の3人に1人が認知症患者とその予備軍に

 厚生労働省によれば、65歳以上の高齢者の認知症患者は約462万人。認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の高齢者は約400万人。2025年の認知症患者は約700万人に上り、65歳以上の3人に1人が認知症患者とその予備軍になると推計している。

 認知症は、アルツハイマー型認知症、脳血管型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4種類に分けられる。原因の約60%はアルツハイマー型認知症、約20%は脳血管型認知症とレビー小体型認知症だ。
認知症の早期診断、早期治療が命運を分ける!

 このような認知症を予防するためには、どうすればいいのだろう?

 脳の神経細胞の破壊によって起きる中核症状は記憶障害だが、判断力の低下、時間・場所・状況を正しく認識できない見当識障害も伴う。中核症状に性格や環境の変化が加わると、妄想、幻覚、暴力、徘徊などの行動・心理症状(BPSD)が現われ、うつ、不安感、無気力などの感情障害も示す。

 したがって、認知症を長期間にわたって放置すると、脳の神経細胞の死滅による慢性的な機能不全を招き、回復が望めなくなる。最悪の場合、歩行障害、嚥下障害、寝たきり、肺炎などを併発すれば、致死率が高まる。

 いかに早期診断と早期治療が重要であり、患者の命運を分けるかが明白だろう。

 特に初期は、専門の医療機関の受診が不可欠になる。CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI検査、脳血流検査などの画像検査、記憶・知能などの心理検査のほか、様々な病理検査が行われる。

 対策はある――。たとえば、アルツハイマー型認知症なら投薬で進行を遅らせられるので、QOL(生活の質)を維持できる。

 終末医療や介護問題などを相談できるかかりつけ医やケアマネジャーを持てば、進行を管理できる。障害の軽いうちに後見人を自分で決める任意後見制度などの準備もできるだろう。

 しかし、認知症を発症するのは、高齢者だけではない。64歳以下で発症する若年性認知症も急増しているからだ。

 仕事や生活に支障をきたすほどの記憶障害や見当識障害があっても、認知症と気づかない。うつや更年期障害などと間違われやすいため、診断までに時間がかかり、進行が早いので、発見が遅れる。

 予防の特効薬はない。バランスの良い食事、塩分・糖分・アルコールの節制、禁煙、適度の運動を習慣化して肥満にならないこと。生活習慣を見直す心のゆとりが大切だ。
(文=編集部)