ふじよ / PIXTA(ピクスタ)

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「パワーポイント資料を、少なくとも100頁作成すれば、合意形成できます」「あっと驚かせて、二の句を告げないようにすればよいのです」――。

 個性派揃いで、各々独自の強い主張を持っているクライアント企業H社の役員会議が行われることになった。冒頭の発言は、その会議で新しい戦略プランのプレゼンテーションする役割を担う、H社の経営企画担当役員T氏の発言だ。T氏は直前まで大手戦略コンサルティング会社のコンサルタントだった人物だ。

 現役コンサルタントとしてH社を支援している私は、T氏の発言をジョークかアイロニーかと受け止めた。一時代前の紙(パワーポイント資料)でしか勝負しないコンサルタントをあげつらったか、揶揄しているのかと思ったのだ。笑いながら取り合わず、「時間がありますから、参加する役員一人一人とミーティングを持ち、現状と課題をヒアリングして、プランに盛り込めるかどうかを検討してみましょう」と真顔で応じた。

 すると、T氏も真顔で、「そんなことをしたら、収拾がつかなくなります」「ビジネス部門の意見など絶対聞いてはいけません」「あるべきプランを打ち出せばいいだけです」……と答えるではないか。読者のみなさんが役員会のメンバーだったとしたら、T氏の発言をどうお感じになるだろか。

◆戦略策定だけがコンサルタントの役割か?

 私は二の句を告げることができなかった。それではまるで、表現は異なるが意味としては「自分はファシリテーションができません」「部門はレベルが低すぎるので、無視するに限ります」「戦略を実現できるかどうかは私には関係ありません。私はただ戦略を説明すれば良いのです」と言っているようなものではないか。そして、そうした真意は、表に出た言葉とは裏腹に、相手に必ず伝わるものだ。

 実は、パワーポイント資料の量で勝負しようとするコンサルタントやコンサルタント出身者は未だに多い。大量のパワーポイント資料を、それも驚くほどの短時間で作成して、クライアントの前に積み上げる。内容もびっしりと密度濃く、細かく作り上げられている。それに圧倒されてしまうクライアントも……かつては、いた。

 パワーポイント資料が悪いとも不要だとも言うつもりは全くない。しかし、うず高く積み上げられたパワーポイント資料だけで、納得するクライアントは、今時、ほとんどいない。にもかかわらず、パワーポイント資料の量で勝負しなければならないと思い込んでいるコンサルタントが後を絶たないのだ。

◆役に立たないコンサルタントの勘違い行動

 そればかりではない。パワーポイント資料にまつわることだけをみても、コンサルタントの勘違い行動は枚挙に暇がない。次の表は、クライアントに役に立つか、役に立たないかという観点で、私が直面した実例だ。

⇒【資料】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=120929

 戦略は、もちろん必要だ。しかし戦略策定が目的ではない。クライアント企業が切望していることは、戦略を実行してビジネスの変革を図ることだ。その役に立たずして、何のためのコンサルタントか。

 役に立たないどころか、「戦略コンサルタントの仕事は、戦略を描くことで、実行支援ではない」と、その後のアクションを放置して、企業の変革行動を減速させてしまった事例もある。

◆変革行動の実現が成果を生み出す

 戦略を描いただけで変革が起きるなどと、今日のクライアントは誰も思っていない。むしろ、戦略をただ唱えるだけであれば、右から左へ聞き流されていく。むきになって唱えれば唱えるほど、ひいては抵抗感さえもたれていく。

 戦略策定は、戦略を実行に移して、ビジネスの変革を実現するためのものだ。コンサルタントの果たすべき役割は、ビジネス現場での実行を支援することに違いない。戦略から実行支援、成果創出に至るまで、一環して、コンサルタントが経営者を支援するコンサルティング会社は実在する。私の所属会社は、そのリーディングカンパニーで、設立4年で100名を超える総合経営コンサルティング会社となったことからもわかるように、ビジネス現場での実行支援のニーズは切実だ

 大手戦略コンサルティング会社も、それに追随するかのように、組織体制を整え始めている。私がクライアント向けに展開している「分解スキル・反復演習型能力開発プログラム」は、変革行動を実現し、成果を生み出すための、ひとつの取り組みである。

※「役に立つコンサルタント」のスキルは、丸善名古屋本店 ビジネス・経済書売上ランキング1位(2016年12月4日発表)になった山口博著『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)で、セルフトレーニングできます。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第23回】

<文/山口博>

【山口 博(やまぐち・ひろし)】株式会社リブ・コンサルティング 組織開発コンサルティング事業部長。さまざまな企業の人材育成・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある

※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。