東大首席エリート実践! 覚える力を上げる「ストーリー記憶法」

世の中には最短の勉強時間ですらすら覚えられる人もいれば、何度も徹夜して頑張っても結果が出せない人がいる。どこに違いがあるのか。“勉強の達人”である山口真由さんに、ビジネスに生かせる勉強法を教えてもらった。

山口真由●東京大学在学中の3年生時に司法試験合格。4年生時に国家公務員採用I種試験合格。2006年に東大法学部を首席で卒業後、財務省に入省。大手弁護士事務所にて企業法務で活躍後、16年にハーバード大学ロースクール卒業。
(写真=PIXTA)


■ステップ2:覚える力を上げる「ストーリー記憶法」

▼レッスン1:個人的な体験と勉強内容を結びつける

何らかの情報を覚える際は、別の「何か」と紐づけることで「意味」を持たせ、「ストーリー」のようにして覚える。ここでいう「ストーリー」とは、記憶したい情報に何らかの「エピソード」を紐づけることで、一つの流れをつくる方法のことを意味する。

エピソードの中身だが、山口氏の経験上、個人的な体験に基づくものが最も記憶に残りやすいという。

「たとえば、勉強している場所や部屋の情景、季節や気温、その日あった出来事といった、ある時期のエピソードを覚えたい情報と組み合わせて、一つの流れで覚えます」(山口氏)

具体例を挙げると、「朝ごはんはパンと牛乳とハムエッグだった」という個人的なエピソードと、朝ごはんを食べながら覚えたTOEICの英単語を紐づけると、記憶が定着しやすくなる。

「もしくは、一定期間にわたって繰り返し勉強した経験そのものをエピソードとして、覚えたい情報と組み合わせて記憶する、という方法もあります」(山口氏)

たとえば、勉強した期間の四季の移り変わりと、覚えた情報を紐づければ、記憶が定着しやすくなる。

▼レッスン2:記憶するコツは、時系列を意識すること

「人は好きな小説や映画のストーリーなら、どんなに複雑な話でも、かなり細かい部分まで語ることができます。その理由は、小説や映画のストーリーが、頭に記憶しやすい『時系列』で展開されているからです」(弁護士・山口真由氏)。

たとえば、人がある映画のワンシーンをすらすら思い出すとき、時系列に沿って語られた物語の記憶を頭の中で再現し、そのワンシーンにたどり着いて思い出している。山口氏の記憶法は、この「時系列」を利用している。

ものを読む、聞くというインプットの経験は、必ず自分にとって、読んだ順番や聞いた順番という「時系列」のある経験となる。たとえば、山口氏が司法試験のときに勉強した法律や、大学受験のときに勉強した化学のテキストは、情報自体は時系列で記載されていないが、「自分が学んだ順」という時系列は存在している。山口氏はこれを利用していた。

学んだ知識を思い出す際は、自分が「経験」した順番、つまり自分が読んだ(見た)順番や聞いた順番で思い出すことで、必要な情報に容易にたどり着くことができていた。つまり、インプットの順番とアウトプットの順番を同じにすることで、思い出しやすくしていたのだ。

▼レッスン3:好きな部分と紐づければ覚えやすい

「記憶というのは、いわば覚える対象そのものを自分の中に取り込む行為です。だからこそ、覚えるものは好きなものに限るべき」と山口氏は言う。

しかし、仕事ではまったく興味の湧かないことを覚えなければならない場合もある。その場合も対象を好きにならないと、しっかり記憶できないのだろうか。

「たとえば仕事で人脈を広げるためには、たくさんの人名を覚える必要があります。

でも、人名を機械的に覚えるには限界があります。それに、そもそも本当は嫌だけど我慢して人名を覚えて、それで人脈が広がって仕事がうまくいったなんて話は、私はあまり聞きません。人の名前を覚えたければ、その人の発言に共感できる部分を見つけたり、『方言のある話し方が親戚のおじさんに似てる』というふうに、身近な人にイメージを重ねてみるなどして覚えるとよいでしょう」(山口氏)

つまり、好きになる部分を見つけることで、ものを覚えやすくなるということだ。山口氏はロースクールの授業も、この方法を使うことで乗り切ったという。興味のないことを覚えられないからといって自分を責める前に、対象を好きになる工夫をしたほうが早いというわけだ。

(大島七々三=文 PIXTA=写真)