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 12月14日に行われたイタリアの上院議会の改革を問う国民投票で政治生命を賭けたマテオ・レンツィ首相が敗北を契した。この国民投票については、これらの記事を参照されたい。

●またしても離脱国を生み出すことになるか!? EU加盟国が不安視する「レンツィの賭け」(HBOL2016/10/20)
●自滅か存続か? EUの命運を左右する選挙が5か国で予定されている(HBOL2016/11/20)

 この国民投票の結果を受けて、レンツィ首相は即座に辞意を表明したが、マッタレラ大統領の要望により、即座の首相辞任を延期して、来年度予算の議会の承認を待ってからの辞任ということを受けいれて7日夕に正式に辞任した。

 首相交代が頻繁に行われているイタリアで、レンツィ首相は比較的安定政権を維持していた。しかし、今回の同氏の首相辞任に伴って、イタリア政界がいつもの不安定な状態に戻るのは必至である。

 ユーロ通貨の危機そしてEUの存在そのものも疑問視されるようになっている現在、EUのユンケル委員長はオランダのテレビNPOのインタビューに答えて<今回のイタリア危機はEUを分解させる導火線になる可能性を秘めている>と指摘し、<EUが解体されると軍事防衛力も無くなり、第三次世界大戦を引き起こすことに繋がるかもしれない>と発言した。(参照:「HispanTV」)

 そんな中、もう一つの懸念が欧州で湧き上がり始めている。それは、大規模な戦争が勃発する背後には常に金融危機がそれを誘導するかのような状態になっているという歴史的事実に基づくものだ。そして正に、その危機がイタリアで始動している、というのである。

 イタリアは<ユーロ圏の中で、不良債権を一番多く抱えている国で、全体の3分の1を占めている>。<その額は3600億ユーロ(44兆円)、イタリアGDPの22%に相当する>規模である。しかも、<イタリアの銀行が発行している債権の12%は小規模な預金者が保有>している。その額は相対的には低いとしながらも、イタリア市民の預金にまで影響するようになることは国家の危機を招くことは必至である。(参照:「El Pais」)

 イタリアの銀行危機の中で一番注目されているのは、世界で最も古い銀行「モンテ・ディ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ銀行)」が経営難にあることである。この銀行は1472年の創業で、イタリアでは3番目の規模である。しかし、赤字経営が続いており、<今年の同銀行の株価は80%下落し、9月までに8億4870万ユーロ(975億円)の損出を計上している>のである。昨年は<5億8470万ユーロ(672億円)の経常利益を上げている>としていながらも、<2016-2019年の間に不良債権の一部276億ユーロ(3兆1700億円)を譲渡することと、また年内に50億ユーロ(5750億円)の資金調達が必要>だとされている。(参照:「El Pais」)

 50億ユーロの資金調達については、現在まで確保しているのは<その20%の10億2800き万ユーロ(1182億円)だけである>という。<カタール、アラブ首長国連盟そして米国>からの投資を期待していたが、今回のレンツィ首相の辞任に伴う政治危機で、イタリアへの信頼は薄いものになっているという。(参照:「El Pais」)。

 この様な事情から、モンテ・パスキは欧州中央銀行(ECB)には債務の返済は1月末までの延長を要請しているという。ECBのマリオ・ドラギー総裁はイタリア人で、イタリア政府への全面的な協力を約束しているようである。

 そして、最終的に政府からの支援を仰ぐことになるであろうと見られている。その支援額は20億ユーロ(2300億円)になる見込みで、同銀行株の40%を取得することになり、残りの20億ユーロは政府が介入したということで安心感を与える材料となり、一般投資家から集めることを計画しているようである。恐らく、カタールやアラブ首長国連盟が投資に再度興味を示すはずであろうと見られている。