絶妙な前進で「あとちょっと」に迫りつつ、ズサーーーでは飛躍的進化を遂げた羽生結弦氏のGPファイナル男子SPの巻。
予定どおりの2015年NHK杯超え!

一歩ずつ、まさに一歩ずつジワジワと階段を上がっていくような絶妙な歩み。羽生結弦氏のグランプリファイナルは、ここまでの歩みが狙いどおりに上手くいっていることを感じさせる、最高の滑り出しとなりました。男子シングル・ショートプログラムで叩き出した、106.53点のSP今季最高点。自己最高にはまだ及ばないものの、演技を重ねるごとに振り付けもこなれ、得点を上積みしていくさまは、順調の一言です。特にこの106点という絶妙な塩梅が素晴らしい。

そもそも今季の最大の目標は、2季連続で苦杯を舐めた世界選手権での勝利。それにあたって外野から見て思う課題は、「毎年仕上がるのが早すぎる」という部分でした。全部の試合で勝利と完璧を求めれば、仕上がるのが早くなるのは当然。しかし、一年中ベストではいられないのも、生き物として当然の部分。そこにどう折り合いをつけるのかは、解決すべき大きなテーマだったと思うのです。

「調教師の言うことを聞かない」獰猛な闘争心の持ち主だけに、それをなだめてすかすのは簡単なことではありません。しかし、来季に迫った五輪での戦いをも見据えれば、今季の戦いにおいて「2月までピークに上げずに戦い抜く」という経験を積んでおきたかった。「こうすればバッチリ合うんだ」という実感を得ておくことが。

だからこそ、この106点という絶妙な感じ、昨年のNHK杯でのスコアをほんの少し超えてきたあたりに、大きな手応えを覚えずにはいられない。それも、上り調子で超えてきたあたりに。そのちょうどよさ。出遅れを揶揄されるぐらいのスローな立ち上がりから始まり、じょじょにステップアップし、「一戦ズレて」状態が上がってきているというのは、まさに今季狙うべき「シーズンの過ごし方」にほかなりません。

4季連続のGPファイナル制覇へ。

「自己最高の制覇」ではなく、「まだやれる」という余地を残した制覇へ。

羽生結弦氏の今季、ここまでは完璧です。

ということで、絶妙な「一歩前進」を見せた羽生氏の歩みについて、8日のテレビ朝日中継による「フィギュアスケートGPファイナル 男子ショートプログラム」からチェックしていきましょう。

◆観客とコネクトはするが、誰とコネクトするかは当日のお楽しみ!

世界の頂点を争う6人の集い。これがそのまま平昌でのメダル争いと言われても納得の顔ぶれ。フランスはマルセイユのリンクは、彼らの戦いを見守ろうとビッシリとイスで埋まりました。見渡す限りのイス・イス・イス。もはや一脚の余地もありません。日本からの大応援団もイスとイスの間に小さくなるような雰囲気。なるほど、これがアウェーというヤツか。むしろ、心は燃えてくるかのよう。

アップをつづける羽生氏は、今日は直立姿勢での動き。「よ、四つん這いは…」という一部の声などイヤホンでシャットアウトするがごとき鋭い視線。そうか、今日は戦いなのだ。いつもなら人気アニメ「ユーリ!!!」のグッズをスケーターに配布している加藤泰平アナも、この日ばかりは静寂を保ち、戦いを最大限尊重している模様。加藤アナの気配り、スケーターにも届くといいですね。

↓加藤アナありがとう!「見守る」というサポートもあるよね!

ユーリのグッズはまた今度配ってください!

オフシーズンまでいけば、みんなゆっくり見られると思うので!

6分間練習の時点から光と音の演出でイスの興奮は最高潮。リンクに選手を並べて紹介をするなんて、目新しいショーアップもされました。6人だけの頂上決戦ならではというところか。ある者は笑顔で、ある者は獰猛に引き締まった表情で、6分間練習で「気」をぶつけ合います。4回転、4回転、4回転。少し前まで「4回転を決めたら勝てる」だった競技が、今は「跳ぶのは当たり前で、種類と回数と出来栄えを競う」という世界観に変わってしまった。そういう世界観を作ったのは、ここにいる選手たち。ふぅー、ハイレベルな争いです。

↓6人の区別がつきやすくなるように、SPの衣装の色でお知らせしますね!


左から、黒黒、黒黒、紫紫、黒黒、黒黒、紫濃紫ですからね!

色で区別すれば簡単です!

モノクロ絵の世界

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まず最初に登場したのは、2季連続の世界王者ハビエル・フェルナンデス。羽生氏とは同じコーチに師事する間柄ですが、今回は1番手と6番手というイイ順番での演技となりました。これなら両選手ともゆっくりコーチがサポートできる。うむ、チカラを出し合えるイイ環境です。

冒頭の4回転+3回転のコンビネーションを美しく決めて場内の観衆とイスをわかせるフェルナンデス。しかし、つづく4回転サルコウでは大きく軸が傾き、お手つきこそ逃れるものの着氷を乱します。さらに演技後半のトリプルアクセルも乱れ、最後はブリッジで耐えるみたいな珍しい転倒に。最後は気も抜けたか、決めポーズもサクッと切り上げるような演技となりました。

↓悪い日のことを吹き飛ばすように、キス&クライでトボけ顔を見せるフェルナンデス!


悪い日でも笑顔を絶やさないのはイイね!

深刻な日本人が学ぶべきスタイルはここにある!

2番手のパトリック・チャンは冒頭の4回転+3回転をキレイに決めると、やや不安のあるトリプルアクセルもこの日は雄大なジャンプを見せ、淀みない演技。出来栄えでひとつもマイナスがつかないという好演で、ISU公認大会での自己最高を更新する99.76点!SPでの4回転はほかの選手より控え目の1本ながら、100点ゾーンへの突入が見えてきました。さすがパトリック・チャン。衣装がピンクとか面白い感じだったら、何かわかんないところの加点で100点いってましたね!

↓自己最高記録を更新も落ち着いた表情でドヤ顔はナシ!

もっと喜ぶかと思ったら、そうでもないのな!

これはまだ上がありそうだな!

伸びてる、これだけ実績ある選手が、まだ伸びてる!

両手を恋人つなぎで握りしめるコーチに送り出されたのは日本の宇野昌磨クン。なかなか練習でも上がってこなかった冒頭の4回転フリップは、本番での強さを見せてクリーンに着氷。しかし、つづく4回転+3回転のコンボは、最初の4回転が回転不足となり、前向きに氷についたことで転倒のオマケもつきました。コンボが抜ける痛い失敗に。

それでも宇野クンは自分の演技を最後までやり切ります。トリプルアクセルにクリムキンイーグルをつけるオリジナリティある振り付けは、これを見るだけでも十二分に価値を感じさせる美しい仕上がり。もう少しイーグルが長ければ完璧でした。本当に転倒が惜しかったですが、あれだけの大失敗があって4番手なら悪くない。「表彰台圏内」での発進です。

さぁ、4回転時代の申し子の登場。アメリカのネイサン・チェンは、4回転ルッツ+3回転トゥループのコンボから入りますが、ルッツの着氷が乱れてオーバーターンに。つづく4回転フリップも転倒となり、得意のジャンプで大きなミスが。そのぶんやや苦手としているアクセルではクリーンに決めて取り戻しますが、やはり4回転を跳んでこそのネイサン・チェン。今日は、「自分の日」ではないようです。

逆に、「自分の日」のパフォーマンスを見せたのはアダム・リッポン。ハウスミュージックの軽快な調べに乗せて、セクシーな衣装で自分の世界を構築。6人の中でひとりだけ4回転を含まない演技のため、どうしても基礎点では不利になりますが、そのぶんを「爪痕」で補っていきます。

ウォーレイからのリッポン・ルッツや、まるでエキシビションのような楽しさいっぱいのステップシークエンス。指さし確認で観客の視線をひきつけつつ、ツルッツルの脇を強調してくる。「順位?」「6番ですけど何か?」「客に、誰の演技をもう一回見たいか聞いてみな」と言わんばかりの堂々たる演技。点数表に載ってないところの戦いで、大きく他をリードする熱演でした。

↓初のGPファイナルでしっかりと爪痕を残した!


こりゃ一回ユーリ変換を経てからの同人誌制作などが捗りそうだ!

今季、絶好調!

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「負けておれんな…」と思ったかどうかは知りませんが、いつも以上の気迫で登場したのは我らがラスボス・羽生結弦氏。なるほどハウスか、なるほどセクシーか、だが僕も負けてはいない。プリンスだし、ピッチピチだし、クッキリだし、紫に映る影は濃い。シースルーとは真逆の概念で向こう側にあるものを想像させながら、羽生氏はリンクに降り立ちます。

まずは冒頭のイーグル・ループ・イーグルの4回転へ。練習でも何度も感触を確かめたジャンプは、大きくバランスを崩すもののお手つきナシでこらえ、イーグルも頑張ってつけました。つづく4回転+3回転は美しく決め、コンボを終えると指パッチン風の動きでガッツポーズのような動作も。

スピン、ジャンプ、スピンとつづく中でも、その動作のひとつひとつがプリンスの歌や歌詞とリンクしているさまは、氷の上で行なう超高速回転「音ゲー」だと考えると凄さも実感できます。よくまぁこんなに合わせるもんだと改めて感心するしかありません。

そして、ギターに合わせてズサーーーーっと滑る直前には、音と音の隙間をぬって「カモン!」と客席のベイベーたちに手招き。「どんどんゆづが悪い子になってる!」と急速なオトナ化でベイベーたちを喜ばせたり戸惑わせたり大変な感じにさせておいて、羽生氏はズサーーーーっと逃げていく。

いや待て、NHK杯のときはズサーーーの前にジャッジ側に指差しをしていたではないか。今回は反対側に向かって手招きとは、まさかこれは、俗に言う「目線」というヤツか!?羽生氏は客席を見渡しながら、どこに今日のとびっきりのプレゼントを贈るか、生殺与奪権を握ってズサーーーーしているのか!?何その抽選会みたいなイベント!

しかも、基本的に片手をリンクにつけてバランスをとっていた振り付けが、胴体のチカラだけでこらえるようにアップグレードされている!空いた手は、代わりに拳を握ってガッツポーズみたいになってる!「このアップグレード、すごい大変なワリに得点に微塵も関係ない感じがするね!」という身もふたもない感想を生みながら、羽生氏は過去最高のズサーーーを決めていきました。

ズサーーー終わりにはもう一度指先ひるがえして「カモン!」のサービス。得点に直結する部分は、ほぼほぼ落ち着きを見せたプログラムで、NHK杯からの2週間ズサーーーを揉んでいたとは。あるいはスワンの衣装でのズサーもその揉みの一部だったのか。この探究心こそが羽生結弦の真骨頂でしょう。「今がどうこう」ではなく、未来に高い目標を掲げて、自分の意志で頑張れる。「ズサーーーは適当でもいいんじゃないですかね」とは絶対にならない心意気に、ほとほと感服しました。

↓「あとちょっと」の指がドンドン狭まっている、「ほんとうにあとちょっと」の演技!


最終的に指と指がくっついたら「マル」になるんだね!

マルを全日本で見て、二重丸を四大陸で見て、花丸を世界選手権で見られれば最高です!

写真でわかる腹筋・背筋のトレーニング

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得点を追求する。エンターテインメントを追求する。両方を追求して、面白く勝つ。これができる選手はなかなかいないものですが、さすがは羽生氏。「こういうのが見たい、こういうのが好き」というワガママな客の心に、予想以上のもので応えてくれる男です。その進化していくスピードがあるから、追いかけたくもなるというもの。

自分で自分の伸びしろを見つけてくるんだから、そりゃあどんどん伸びるわけです。ズサーーーにも伸びしろがあるんだと教えてもらえて、僕もひとつ成長できた気がします。採点などおこがましいですが、謹んでZUSAAにGOE+3、つけさせていただきます。はたして次はどこを伸ばし、どこをアップグレードしてくるのか。油断も隙もない進化から、目が離せませんね…!

全日本では「ノータッチズサーーー」になってるかもしれませんね!