取材中もお酒を愛するオタール・イオセリアーニ監督

写真拡大

 現在82歳にしてなお意欲的に活動を続ける名匠オタール・イオセリアーニ監督が最新作『皆さま、ごきげんよう』のPRのために来日、その創作の裏側について語った。

 『月曜日に乾杯!』『ここに幸あり』など、混沌(こんとん)とする社会の不条理を、反骨精神たっぷりのユーモアで、ノンシャランと笑い飛ばすイオセリアーニ監督も現在は82歳。1962年のデビュー以来、発表した作品はそれほど多くはなく、寡作の作家と呼ばれることも多い。

 その理由についてイオセリアーニ監督は、1年に1本のペース、100歳を超えてもなお作品を発表し続けてきた映画監督、故マノエル・ド・オリヴェイラさんの名前を挙げながら、「オリヴェイラにどうしてそんなにたくさん映画を撮れるのかと聞いたことがあるんですよ。彼はわたしの友人だったからね」とポツリ。続けて「彼は自分に残されている時間が短いからだと答えました。彼は長い間、映画を作れない時期があっただけに、失われた時を取り戻したいと思ったのでしょう。自分の生命に限界があるからこそ、死んだ後に恥ずかしい思いをしないようにしたいと真面目に考える。だからこそ自分の映画に責任を持つことができるんです」と振り返る。

 そして「だが、わたしは1本撮り終わったからと言って、すぐに次に取りかかることはできません」と続けたイオセリアーニ監督は、「ただ何もせずに、愛したり、嫌ったり、戦ったり、自分の名誉を守ったりしている。つまり一言で言えばただ生きる時間が必要なのです。映画を撮り始める前には、考えなければならない。そのためには、すべての人と同じくまともな生活を送らなければなりません。そうやって生きた後にようやく考える権利が得られるのです」と説明。

 「そうしていると、天から命令が下りてくるんです。その時わたしは仕事をしなければなりません。天の命令に対してわたしが役に立つ存在でいられる限り、わたしは仕事を続けたいと思います。わたしの一生をかけて、人生という名の1本の長い映画を作らないといけないですからね」と続け、傍らにあったウイスキーをゴクリ。「でも今は何もしていない時期なんで、何かが降りてくるのを待っているところなんです。だから映画について話すためにウイスキーを飲むことにしているんです。お酒を飲むたびに頭がクリアになってきますからね」といたずらっぽく笑ってみせた。

 さらに「わたしはゼロからすべてを生み出す映画という作業が大好きです。だからこそわたしのフィルモグラフィは少ないのでしょう」と付け加えたイオセリアーニ監督は、「だからこそわたしの映画がリメイクされないことを祈っています。といっても、わたしの映画を作り直すのは不可能なように作ってありますけどね」とニヤリ。「日本人はわたしたちと同じユーモアを持っているように感じます。だからこそわたしが映画に託したメッセージは日本の方が評価されるのではないかと思っています」と付け加えた。(取材・文:壬生智裕)

映画『皆さま、ごきげんよう』は12月17日より岩波ホールほかにて全国順次公開