本作の製作経緯を語る八木景子監督

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 アカデミー賞を受賞した映画『ザ・コーヴ』の一方的な描き方に問題提起をし、あえて和歌山県太地町側と環境団体の両方の視点から描いた『ビハインド・ザ・コーヴ〜捕鯨問題の謎に迫る〜』が米公開され、同作について八木景子監督が11月29日(現地時間)ニューヨークのカフェで単独取材に応じた。

 2014年、オーストラリアが日本の調査捕鯨は商業捕鯨であり、国際捕鯨取締条約に違反するとして国際司法裁判所に提訴し、日本は裁判所から南極海における調査捕鯨を停止すべきという判決が下された。このような捕鯨問題の現状を危惧した八木監督が個人的な調査を開始するが、その過程で太地町をめぐるイルカ漁問題を知り、捕鯨とイルカ漁の問題をさまざまな観点から捉えていく。

 今作の撮影前に『ザ・コーヴ』の舞台が太地町だと知らなかった八木監督は、「わたしは鯨を追いかけて太地町に来ていました。2014年に日本がオーストラリアから調査捕鯨が商業捕鯨の隠れみのではないかと訴えられて負け、その敗因が規定より多く獲ったからではなく、少ししか獲っていないと訴えられて、そんなことで負けることもあるのかと思いました。そんな矛盾した理由から、なぜなのか? と思い、関係者に聞いていくうちに太地町にたどり着きました。太地町は『ザ・コーヴ』でイルカ漁が知られたのですが、もともとは捕鯨が有名な町です」と捕鯨問題から製作が始まったことを語った。

 環境保護団体シーシェパードは、『ザ・コーヴ』の公開後に捕鯨反対活動をするキャンペーンで大きな資金を得ていた。「(『ザ・コーヴ』公開後に)太地町は、環境保護団体の人たちにとって、ある意味ブランドのような場所でした。沖の方でイルカ漁をしている県は他にもあります。でも、それだと映像的に面白くなく、追い込み漁を沿岸でやる太地町は撮影もできるため、それで環境保護団体が集まっていました」と明かした。もっとも、資金調達は幹部レベルの人が理解し、太地町を訪れたシーシェパードの人たちは環境保護の信念を持っていたそうだ。

 現在、太地町の漁師はどのような仕事をしているのか。「昔、南氷洋に行っていた鯨の漁師さんたちは、今は違う小魚を捕っています。裁縫をやったり、土産物屋さんを経営していたりする方もいます。イルカ漁に関しては、いくら非難を浴びようが、合法的に国から許されています。そのイルカ漁も水族館に送られるためのものです」と説明した。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)