授乳に新たな選択肢を(shutterstock.com)

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 潜在的なニーズがあるものの、日本では製造・販売されない乳児用「液体ミルク」。海外ではスーパーやドラッグストアなどで購入できる。

 菅官義偉房長官が10月17日、その解禁の検討を発表。ところが、11月14日に開かれた男女共同参画会議の専門調査会では、業界団体の日本乳業協会が「液体ミルク製品化に数年を要する」と見通しは暗い。

 液体ミルクの何が問題なのか? 液体ミルクはその名のとおり、液体状のミルク。パックやペットボトルに入っており、滅菌済みで常温保存が可能だ。粉ミルクとほぼ同じ栄養をもつ。

 液体ミルクの最大の利点は簡便性だ。哺乳瓶に移し替えたり、専用の吸い口をつけてそのまま飲ませることができる。海外では、夜間の授乳や外出時の持ち歩きなどで広く利用されている。

 国内でも近年、災害時での活用を望む声が上がっている。液体ミルクならば、粉ミルクに必要な水や燃料、哺乳瓶の消毒環境が不要だ。避難時のストレスで一時的に母乳が出なくなるリスクにも備えることができる。

 東日本大震災や熊本地震では、ボランティアの寄付によってフィンランドから液体ミルクが緊急輸入され、避難所に届けられた。

 認知されつつある液体ミルクだが、国内ではいまだに製造・販売されていない。その理由はいくつかある。
日本で液体ミルクが製造・販売されないワケ

 まず、制度面だ。粉ミルクを含む乳製品は、食品衛生法の中の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」で規格が設けられている。だが、省令成立の1951年に存在しなかった液体ミルクは、法改正しないかぎり規格外の扱いなのだ。

 また、乳児に向けた食品は、健康増進法により「特別用途食品」として国の許可が必要だ。液体ミルクは「乳飲料」に分類されるため、<母乳代替品>として売ることもできない。

 食品衛生法を管理する厚生労働省、「特別用途食品」を許可する消費者庁、この省庁にまたがる法制度が液体ミルクの製造・販売を阻んでいる。

 コストにも課題がある。仮に国内で製造した場合、商品の安全性はもとより、容器の開発、生産ラインの確保、輸送コストや人件費など、クリアすべき点は多い。海外で売られている製品も粉ミルクに比べて価格が高く、国内で同等の物を置いた場合、消費期限が半年〜1年と販売期間も短いと予想される。

 液体ミルクの研究を進めている粉ミルクメーカーもあって、技術的には製造可能だ。しかし、「平成27年度乳幼児栄養調査」によれば「調製粉乳(粉ミルク)」の国内生産量は減少傾向にある。少子化が進むなか、メーカーが二の足を踏むのも仕方ない。

 だが、日本で液体ミルク渇望の声が盛り上がらないのは、その存在を知る機会が極端に少ないことかもしれない。

 国内での授乳育児には、母乳か粉ミルクしか登場しない。市町村や産科病院、ショップなどで液体ミルクはない。これは、粉ミルクメーカーが授乳指導を主導しているという現実があるからかもしれない。

 むろん、<育児の先輩>はその存在を知る由もなく、世代間での情報共有の場にその名が挙がることもない。
 
「必要」の声を上げ続ける

 2014年に液体ミルクの存在を知った一人の女性が、国内での製造・販売を求める署名キャンペーンを始め、約2週間で1万人の賛同を得た。

 「乳児用液体ミルクプロジェクト」と冠された署名は2015年12月、内閣府主催の規制改革会議に提出され、同時に法的整備を求める提案文も付された。

 菅官房長官の発言につながったともいえるこの活動は、今年8月に「一般社団法人液体ミルクプロジェクト」へと進化。

 このプロジェクトへの賛同者たちの思いは、「液体ミルクがあれば、育児の大変さが軽くなる」だ。

 夜泣きする赤ちゃんを、あやすこともできずに粉ミルク作りに追われるとき、外出に必要なお湯や粉ミルク、保温ケースの重さに負けそうなとき、体調を崩して服薬し、母乳をあげられないとき――。

 11月21日、参議院特別委員会で塩崎恭久・厚労大臣が、液体ミルクの普及に向けて規格基準の整備を急ぐ旨を発言した。

 「必要だ」との声を上げ続けることで、道が開けることに期待したい。
(文=編集部)