本作の魅力を政治的な視点で考察

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 軍事用の無人戦闘機(ドローン)を駆使した現代の戦争をテーマにした映画「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」の公開を記念し12月8日、ジャーナリストの田原総一朗氏と、作家で元東京都知事の猪瀬直樹氏によるトークイベントが、都内で開催された。

 ドローンを戦場における“目”として、会議室で作戦の実行が決断される英米合同のテロリスト捕獲作戦。ナイロビに潜伏するテロリストの隠れ家を突き止めた英米軍は、ターゲットが大規模な自爆テロを計画中であると突き止める。作戦関係者たちはテロリストを一掃するべくミサイルの発射準備に入るが、殺傷圏内に民間人の少女がいるとわかり、撃つべきか否かで会議は紛糾する。

 この日はちょうど、1941年に日本軍が真珠湾を攻撃した日米開戦の日。ここから2人の話は、本作にも通じる“決断”へ。猪瀬氏はかつて自身が上梓した「昭和16年夏の敗戦」という本を紹介。開戦直前の昭和16年の夏、各専門分野の若きエリートたちが集められ、日米が開戦した場合の展開をシミュレーションし「敗戦」「ソ連の参戦」など、その後の史実を見事に言い当てる報告を内閣にしていたが、それが生かされることはなかったという事実に触れ「決断をしないまま、時間切れで会議が終わってしまうことがある。(日米開戦は)不決断から始まった」と語る。

 猪瀬氏は、この「決断できない」性質は、現在でも続いていると指摘。自身が都知事在任中に招致に成功したが、現在、さまざまな問題で揺れる東京オリンピックについて「ガバナンスがない!」とバッサリ。田原が「森さん(=喜朗元首相)のせい? なんで責任者がいないの?」と尋ねると、猪瀬氏は「森さんはIOC(国際オリンピック委員会)とつながりがあるから」「タテ割りだから、ち密さがないんですよ」と意見を繰り出す。

 田原氏は、この「決められない」日本社会について、映画「シン・ゴジラ」の官僚による延々と続く会議を本作「アイ・イン・ザ・スカイ」との比較対象に提示。主演のヘレン・ミレン演じるパウエル大佐を「現場の責任者。会社でいうと部長で、彼女は決めるんだけど、上の役員たちがたらい回しにしていくさまが面白かった」と語る。特に、発射命令を受けた中尉が、心情的な理由だけでなく、法に基づいて「“(撃つのは)イヤだ”と言う」と決定に至るシステムそのものについても言及。

 猪瀬氏は、本作の会議室には「意思決定がある」と、責任を背負って決断するパウエル大佐を高く評価。「決断できる『シン・ゴジラ』(笑)。部長が1番つらいんですよ。決断をすれば犠牲者が出るものだけど、それを避けたら(犠牲が)より増える。政府関係者は見ておくべき」と決断する立場の人間こそ見る作品だと強調していた。

 「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」は12月23日より公開。