「ストレスチェックテスト」初年度で、現役産業医が本当に伝えたかったたった1つのこと

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◆ストレスチェック制度1年目の成功例

 うつ病などのメンタルヘルス不調を持つ人が100万人を超えるとも言われている現代。各自が自分のストレス具合、つまり、「こころ」の健康に早めに気づき対処し、メンタルヘルス不調者を減らすために、2015年12月、「こころ」の健康診断とも言えるストレスチェック制度が始まりました。その内容につきましては過去に本連載で書いた通りです。

 私は産業医としてこの1年間、20数社においてこの新制度導入から実施に関わってきました。今回は実際のストレスチェックの結果や経験について、現場からの率直な感想を共有したいと思います。

◆邦人企業のほうが受検率は高い

 私の産業医クライエントにおいては、従業員数が50人以上の会社はすべてストレスチェック制度を実施しました。ストレスチェックテストの実施方法は1社以外はすべてパソコンを用いたオンライン形式によるストレスチェックテストでした。また、そのほとんどは厚生労働省の提示する標準的57問を利用し、高ストレスの判定基準も指針に沿う形で行いました。

 実際のストレスチェックテスト受検率(実際にテストを受けた人数÷テストを受ける対象となる社員の人数)は最高が100%、最低が約30%でした。邦人企業のほうが受検率は高く、外資系企業のほうが受検率は低い傾向がありました。また、いずれも定期健康診断の受診率よりも高い会社はなく、定期健康診断受診率の高い会社ほどストレスチェックテストの受検率も高い傾向でした。

 各社の制度担当者の方々は受検率が高いほうが喜ぶ傾向が強かったです。これに関しては実施方法、案内文の表現の違い、企業文化や従業員の性格的傾向など、さまざまな条件が異なるので、他社との比較はできないと、私は考えます。

 また、受検率についても来年の自社の受検率との比較は意味がありそうですが、今回のものに一喜一憂するものではないと思っています。何故ならば、受検率が高いからといって社員が本心を答えているとは限らないなど考えられるからです。

◆高ストレス者の面接指導希望者は2〜3%

 実際の高ストレス者の割合(高ストレス判定者÷ストレスチェックテスト受検者)は8〜18%と開きがありました。厚生労働省の試算では高ストレス者の割合は約10%でしたので、ほぼその通りとも言えます。これについても、解釈はさまざまに可能なので、来年の自社データとの比較以外には他者と比較として語ることは何もないというのが、私の感想です。

 この制度では高ストレスと判定された者には実際に医師との面談である面接指導が勧奨されるのですが、高ストレスにも関わらず面接指導を希望した社員がいない会社もありました。(制度実施中のため)最終的な数はまだ出ていませんが、多い会社でも面接指導は高ストレス者の中の10%もいない、高くて2〜3%程度というのが率直な印象でした。

 実はこれには理由があります。体の健康診断に比べ、心の健康診断の結果は、誰もが他人、特に会社には見せたいとは思わないもので、プライバシーのより高いものであるということは、数々の裁判事例でも認められていることです。しかしながら、ストレスチェック制度の指針では「高ストレス者が面接指導を希望した場合、その従業員は自分のストレスチェックテストの詳細な結果を会社に開示することに同意したとみなしてよい」となっています。

 自分のストレスチェックテストの結果内容を会社に開示してまで、自分のストレスについて医師に相談したい人以外は、よほどのことがない限り、面接指導に手を上げないことは初めから予想できたことでした。なので、こうなることは、制度開始時からわかっていたことでした。