北朝鮮の金正恩党委員長は先月末、両江道(リャンガンド)三池淵(サムジヨン)郡を現地視察した。しかし、最も行くべきところに行かなかったことで、幹部や住民の間から疑問の声や、何らかの異変が起こるのではないかという声が上がっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

朝鮮中央通信は28日、金正恩氏が三池淵郡にある朝鮮人民軍(北朝鮮軍)第1045軍部隊の山岳歩兵部隊のスキー訓練の現地指導を行ったと報じた。現地情報筋によると、同郡に到着したのは26日とのこと。

金正恩氏は、これまで三池淵郡を何度も視察している。しかし、父金正日総書記の生家を一度も訪れておらず、今回も通り過ぎ、別荘に滞在したという。

両江道の軍関係の情報筋は「今回の視察はまもなく始まる軍の冬季訓練を控え、戦時司令部の点検を行なったものと思われるが、初めてのケースなので、尋常ではない」と述べ、何らかの異変が起こる可能性について示唆した。

両江道のある幹部は「(金正恩氏は)三池淵に到着した翌日の27日、新しく立てられた金正日氏の銅像と学生少年宮殿などを視察した。天候の悪化でその翌日まで飛行機が離陸できず、3日間の滞在となったが、こんなに平壌を留守にしたのは今回が初めてだ」と述べながら、今回の滞在が異例のスケジュールであったことを指摘した。

今回の金正恩氏の訪問に際し、両江道のリ・サンウォン労働党委員長が現地に向かったが、周りの幹部ですら金正恩氏の視察への随行と気付かないほど、機密保持が徹底されたという。また、現地では金正恩氏を歓迎する行事が開催されたが、住民に知らされたのは前日(26日)のことだった。

金正恩氏の行動の「異変」については様々な声が上がってはいるものの、実際に何が起きているかについては、いずれの情報筋も言及していない。

住民の間からは「金正恩氏が訪問する際には、住民にプレゼントがあるものだが、トラクターを贈っただけで、以前のような魚の特別配給はなかった」と不満の声が上がると同時に、「なぜ父親の生家に行かなかったのだろう」と疑問の声が上がっている。

ちなみに北朝鮮の国史では、金正日氏は1942年2月16日に「白頭山密営」で生まれたことになっている。しかし、実際はソ連(現ロシア)の沿海州で生まれたというのが定説で、北朝鮮の人々の中にも「政府の宣伝はウソだ」と思っている人がいると伝えられている。

金正恩氏は、祖父金日成主席の生家も訪れていない。こうしたことから、「金正恩氏は金日成氏の実の孫ではないのではないか」といぶかしむ声も上がっている。