快晴のもと第11回目を迎えた湘南国際マラソン。フルマラソンの部には約1万9000人が出場し、それぞれの目標に向けて力走した。今大会は"すべての人がHAPPYになる日"をコンセプトに、様々な取り組みも実施。そのひとつ『湘南ハッピー給水』では、レース中に「釜揚げしらす」や「えぼし岩ようかん」など地元の名産を食せる企画が実施され、大会を盛り上げた。

 レースとしても新たな試みに挑戦した。それは、記録更新を狙う一般ランナー向けに5分おきのペースメーカーを走らせることだ。

 そのペースメーカーを務めるひとり、濱崎武雅さんは、午前9時のスタートを前に徐々に高まっていく会場の熱気を感じて、「お祭りみたいな雰囲気がいいですね。楽しみたいです。一緒に走る人たちには、(目標達成を)頑張ってほしいなと思っています」とエールを送った。

 コースは、西湘バイパス大磯西ICをスタートして、江ノ島入口付近で折り返し、大磯プリンスホテルがゴールとなる海沿いの42.195km。今大会では、世界と戦うような実業団選手とは違う、仕事の傍ら練習を積んできた一般ランナーの人にもそれぞれのドラマが生まれた。

 3時間15分を切るのが目標だったという中野睦大(むつひろ)さんは、3時間11分でゴール。見事目標を達成した。ゴール直後は、「ここまで走れるとは思っていませんでした」と自身の記録に驚いた様子。ベストタイムはこれまで、今年の3月に出した3時間31分だったというから、今大会で20分も自己ベストを更新できたのだ。

 そのひとつの要因として、「ペースメーカーについていけばいいんだ」と思えたことも大きかったという。「ひとりで走っていても自己ベストは更新できたかもしれませんが、ここまで記録を伸ばすことはできかなかったと思います」と、レースを振り返った。

 こうした記録更新の裏には、レース前からペースメーカーとの信頼関係が築かれていたこともあった。9月にスタートしたランニングチームNB Silent Hunters(ニューバランス サイレントハンターズ)の活動がそれだ。

 コアメンバーには元箱根駅伝ランナーなどが参加して、中野さんのような一般ランナーの人たちと毎週練習を重ねるなかで、ひとつの目標タイムに向かってチーム一丸となってきた。中野さんは「チームのコーチがいて、一緒に練習してきた仲間がいたから結果が残せた」と、その効果を実感していた。

 一方、ペースメーカー側として参加したランナーにも、今大会で新たな発見をしたという人がいる。2年前の箱根駅伝で優勝した青山学院大学のメンバーだった高橋宗司さんだ。

 大学卒業後は一般企業に勤め、市民ランナーとして走っているというが、フルマラソンは今回で3回目の挑戦だった。1回目は昨年の11月に社員旅行で走った那覇マラソン、2回目は2年前の学生記録(※)が使えるうちに走っておこうという理由で参加した、今年3月のびわ湖マラソンだ。
※びわ湖マラソンの参加資格として、過去2年の記録が参加記録を突破していることが条件なため

「もともと走るのが、好きなタイプではなくて(笑)。陸上やっていた理由も目立ちたいからとか、勝ちたいからだったので、それ以外で走る理由が見つけられなくて......」という高橋さん。ところが、今大会をペースメーカーとして走り終えて、「市民ランナーになってから少しずつ感じていた、走る楽しさを改めて感じた」としみじみと語る。

 ここ最近は仕事が忙しく、あまり走れていなかったというが、今回これまでとは違う立場で走ったことで、これまでとは違うマラソンの魅力がはっきりと見えたようだ。

「練習不足で少し不安もありましたが、今日は無理にでも出るべきだと思っていたので、出場して正解でした」と、高橋さんは笑顔で振り返った。

 記録更新を目標に走り、達成できた人、できなかった人。ペースメーカーとして集団を引っ張りながら、これまでとは違う視点で走る楽しさを感じた人。様々な思いを抱いて参加しながらも、ゴールした人たちの顔はみんな達成感で、きらきらと輝いていた。

text by Sportiva