4月に集団脱北した北朝鮮レストランの女性従業員たち

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今年4月、中国の北朝鮮レストランの女性従業員ら13人が集団脱北し、北朝鮮当局に衝撃を与えた。本来、北朝鮮レストランで働くウェイトレスたちは、脱北しないという前提で海外に派遣されているからだ。

日本アニメのファンも

韓国人や一部の日本人の北朝鮮マニアの間で人気をよぶ北朝鮮レストランの美貌のウェイトレスらの多くは、良家の出身だ。

(参考記事:美貌の北朝鮮ウェイトレス、ネットで人気爆発

北朝鮮当局は、脱北しない、すなわち「北朝鮮を裏切らない」と判断した女性のみを派遣していたつもりだったのに、彼女たちはリスク覚悟で、北朝鮮ではなく韓国で生きることを選んだ。

この集団脱北には韓国の情報機関の関与説もあるが、たとえそうだとしても、彼女らが最終的に脱北を決断したのは金正恩体制に対して多かれ少なかれ不満を持ち、北朝鮮に未来がないことを知ったからだろう。

そもそも、北朝鮮ウェイトレスの脱北は、これまでもたびたび起きている。監視下に置かれ、厳しい労働環境で働かされているとはいえ、一度中国で海外の空気と自由を知ってしまえば、国家への忠誠心など一挙に吹き飛んでしまうのかもしれない。

そんな彼女たちに裏切られた金正恩第1書記は、相当焦りを感じているようだ。デイリーNKの内部情報筋によると、国家安全保衛部(保衛部=秘密警察)が、海外派遣に関係する党幹部に対する統制を強めているという。

また、北朝鮮当局は以前から、工作員を脱北した人々に接近させ、「素直に帰ってくれば罪は見逃す。しかし言うことを聞かなければ家族がどうなるか分からない」と脅迫。北朝鮮に連れ戻し、国内メディアで「韓国当局にだまされた」などと証言させ、国際社会からの人権権侵害追及に対する防波堤にするオペレーションを展開してきた。

いま、そのような活動の最大のターゲットとなっているのは、まず間違いなく、4月に集団脱北した北朝鮮レストランの女性従業員たちだろう。金正恩体制は、彼女らが韓国当局により「拉致された」との主張を、今に至るも続けている。

そのような主張に、耳を貸す人は少ない。しかし、彼女たちのうちの1人でも北朝鮮に帰国させ、「私は韓国当局に拉致されました」と証言させることが出来れば、集団脱北から受けたダメージを少なからず相殺できるかもしれない。

しかしそれで、体制に空いた穴を埋めようというのは無理な話だ。7月に家族とともに亡命したは太永浩(テ・ヨンホ)元駐英公使にしても、10年にわたって英国に在住する中で、子どもたちが日本アニメのファンになるなど資本主義の文化に馴染んでしまい、帰国したら生死かかわるたいへんな問題に直面しかねないというリスクを感じていたはずだ。

北朝鮮が近代国家として存続することを望む以上、外国と接点を持ち、海外に人材を派遣することは避けられない。今後も発生ペースの波はあろうとも、金正恩氏にとってショッキングな脱北ニュースはなくなることはないだろう。