トップ営業マンが実演! 「契約を取れる宴会術」

写真拡大

宴会を仕切るには、仕事と同じくらいスキルが必要。店選び、席次から手土産まで、今回、現役の営業マン2人がその極意を披露。プレジデント編集部のために、鮮やかに宴席を仕切ってくれた。

酒が入る席を仕切るには、いつも以上に気遣いや段取りの技術が問われる。今回、ビール会社と生命保険のトップ営業マン2人が、その鮮やかな宴会術を披露してくれた。

実践から編み出されたその極意は次ページからに譲るが、まずは宴席を仕切るための基本マナーを確認しておきたい。企業秘書時代に“宴会部長”の異名をとった研修インストラクターの篠原あかねさんに、宴会を仕切る側の作法と心構えを聞いた。

まず重要なのは店選びだ。参加者の分析が必須となる。居住区のエリア、年齢層、男女比、騒ぐのが好きな人たちかどうか、お酒メーンか料理重視か……などを考慮して候補を絞っていくが、その際に一番大事なのは「この宴席のテーマは何か」を意識すること。ゆっくり話がしたいのか、明るく同僚を送り出したいのか。目的によっても店選びは変わるはずだ。

会費制なら懐具合の分析も重要。「通常ビジネスマンが一回の宴席に使う金額は3000円前後」(篠原さん)だが、そこからメンバーを考慮して高低をつける。金額が決まったらその中で料理と酒の予算を配分する。食道楽の友人がいれば、協力を依頼するのもいいだろう。「基本は知っているお店を指定するほうが無難ですが、初めてのお店なら必ず下見、もしくは電話をして、従業員の対応を見ましょう」(篠原さん)。電話に出るのが早いか、復唱確認があるか、自分の名前を名乗ったかなど従業員の対応で店の質は十分はかれる。

店が決まっていざ予約となったら、「酒を飲むメンバーなので、料理のボリュームは減らしてその分質を上げてほしい」「盛り上がると思うので他のお客に迷惑のかからない席にしてほしい」など、こちらの要望を伝えて店と交渉する。無理強いは禁物だが、事前に交渉すれば、できる限りのことはしてくれるはずだ。

接待などで手土産を用意するときは、持ち帰りやすい小ぶりなサイズで日持ちするものを。限定品など希少なものが用意できれば特別感が出てなおいいが、デパートで包装してあるものなら十分だ。

そして、宴会当日。幹事がもっとも意識したいのは、時間管理である。

「時間通りに始まって終わるのが一番気持ちのいい宴会。タイムマネジメント能力が問われます。乾杯、余興、締めの時間を自分の中で決めておきましょう」(研修インストラクター 篠原あかねさん)

宴会開始の20分前には店に入って、コースや席次などをチェック。開始時間になったら、少人数でなければ遅れてくる人がいてもまずはスタートする。時間通りに来た参加者のテンションが下がってしまうからだ。

始まったら、みんなが楽しんでいるか絶えず目配りを。大人数だと歓談の輪に入れず、ぽっかり一人になる人が必ずいるので、その人が周囲になじむためのアシストをしていく。

「初対面の人には料理の感想などを聞きながら、頃合いを見て近くの輪に話をふって、橋渡しするといいですね」(篠原さん)

会話のネタは星占いでも犬の話でも何でもいい。お互いの距離さえ縮まれば何でも話は弾んでくるものだ。また余興を促されたら、自信がなくても必ず何かやってみせるのが大事。慣れてきたら持ちネタをつくっておくといい。できる営業は、必ずネタを持っている。

宴会中、自分は飲まず食わずだと参加者に気を使わせる。相手のペースを追い越さない程度に楽しく飲み食いするのもマナーだろう。

 

■私と飲んでいるときに、空のグラスはありえません!

かしこまった席でなくとも、数人の仕事仲間と飲むシチュエーションはよくあること。こういった場を生かして取引先と親密な関係になっておくことが、後々の仕事に響いてくるのだ。「週に3回から5回は仕事相手と飲みます」と微笑むアサヒビールの立野さんの気遣いは、凄い。

盛り上げ上手が鎬を削るアサヒビールの営業の中でも、その気遣いはトップクラスと囁かれる「接待の猛者」。立野陽之さんの仕切り方はまさにプロというべき、素晴らしいものだった。

「初めての相手は接待というと萎縮されるので『プロジェクト成功のお祝いを』とか『繁盛店の視察に行きましょう』など仕事を絡めて声をかけます」

その1回目で、相手の情報をこれでもかというほど頭に叩き込む。食べものの嗜好、雰囲気、お酒のペース、何杯目に何を注文したか、誕生日や家族構成……。その情報を次回からきっちり生かす。情報を基に好みの店を選び、「○○さんは2杯目からハイボールですよね」と飲み方のパターンを先に読んでオーダーする。誕生日にはケーキで祝福することも珍しくない。

「『そんなに気を使わないで』と言われるぐらいが丁度いい。一定のサービスを提供できている証明ですから」

酒好きにはとことん付き合う。何度も会うより一回朝まで付き合うほうが記憶に残るから。そうしているうちに、相手との距離は確実に縮まるという。

「実は接待で契約を取った、というのはそれほどないんです。でも、酒の席だからこそ本音を語ってもらえるし、少々の失敗で怒られなくなりました」

本来は人見知りで「妻の友達が遊びに来ても、挨拶もできない」。そんな彼だからこそ、人一倍の気遣いが可能なのかもしれない。

■【3人〜5人編】接待の極意

▼極意その1:なにより早く! 席を立ってでも注文

ドリンクはテンポよく届くことが何よりも重要。「男性なら1杯目は生ビールでほぼ間違いない。揃ったらすぐ全員分、頼んでしまいます」。もちろん相手の好みがわかっていれば、それを基にオーダー。店員が来なければ自ら立って注文にいく。

▼極意その2:料理のオーダーはお勧めメニュー中心。女性には希望を聞く

料理の注文も主導権は自分。少人数ならお仕着せのコースよりアラカルトのほうが盛り上がる。店のキラーメニューと本日のお勧めを中心に注文すると、旬の食材や店の姿勢などが見えて話題が広がる。女性には注文の希望を聞いて、飲むペースなども配慮する。

▼極意その3:常に目配りを忘れず、相手の先を読んで行動

グラスは空いていないか、料理は足りているか……常に目線を投げて状況を把握。グラスが3分の1になったら相手の好みを把握しておいて、しれっと次をオーダーしておく。また、定期的に視線を合わせるのも重要。相手は見られていないと疎外感を持つ。

▼極意その4:積極的にネタを披露して皆を楽しませる

同じ取引条件であれば、面白い営業マンが選ばれるだろう。「お客様の芸者であれ」を心がける立野さんの得意技は、グラスにマイクをのせたエアピアノ弾き語り。トイレ戻りにトイレットペーパーで三角巾を作って「今、そこで転びました」も鉄板。

▼極意その5:飲み会ならではの“ホンネ”を聞いたら自分にメールしておく

酒が入れば相手の本音が飛び出すもの。対応が必要なものもあるので、自分も酔って忘れそうならトイレに行くタイミングなどで要点を自分あてにメールしておく。酔ったときに肉筆で手帳に書き込むと、読み返せないこともあるので注意。

▼極意その6:大量に注文はNG。“皿は空”もマナー

料理が残るのは自分の調整ミス。オーダー時に店員と適量か相談しながら食べきれるくらいの注文を目指そう。コース料理なら事前に「小食だから料理は3割カットで」「何品か抜いて質を上げて」など相談しておくと相手にも負担が少ない。

■皆で楽しくがモットー。皆で笑って解散、が理想やね

飲み会も6人以上となると、気配りの仕方が変わってくる。全員で会話するのは難しいので、数人が固まって話す形になるだろう。そこでプルデンシャル生命の村田さんは、全体で盛り上がるためのグッズや話題を仕込んでおくという。

「開始5分で今日は契約取れないな、とわかるときもあるんです。でもせっかく会ったんだから楽しく。くすぐってでも笑ってもらいますよ!」と、類いまれなるサービス精神の持ち主の村田生男さん。日々お客との飲み会の予定で一杯だ。一体、どんな話術で相手を巻き込んでいくのか。

「初対面や付き合いの浅い相手で情報がない場合、まず自分の素性を語ります。生い立ちから、家族の話まで、ウソ偽りなく。そのうちに相手がどこかで話に入ってきたら、そこから聞き役になればいいんです」

村田さんの作法は自分を含めて、とにかく楽しむこと。ただし酔ってハッピーな空気を壊す行為はご法度。とりわけ慎むべきなのが、「吐く」と「脱ぐ」。それを許す雰囲気をつくっている時点で幹事として失格だ。事前に席次を工夫するなど配慮しておく。

宴会となると会費制も多いが、盛り上がっている終盤に請求されるとテンションが下がるもの。基本は会の冒頭で集金するが、できなかったときは立て替えておいて「今後またお会いするために、ワリカンにしましょう」と後から声をかける。たまに集金できないこともあるがそれはそれ、と笑う。

「お金にかかわらず、ああそういえば村田にはお世話になったなあ、といつか思いだしてもらえれば僕にとって十分意味がある。それがいずれ仕事につながることもあるのです」

■【6人〜10人編】宴会の極意

▼極意その1:日頃からターミナル駅ごと“使える店”を集めておく

誰もが集まりやすいターミナル駅を起点に、宴会しやすい店をいくつかストックしておけば安心。店の入り口に業務用品が置かれておらず、トイレの掃除が行き届いている店はサービスのクオリティがえてして高いとか。

▼極意その2:料理は大皿ではなく個別が理想的

大勢で箸をつつく鍋や大皿料理は、親睦が深まるイメージがあるが、取り分け係を強要される人が出たり、量が均等に行き渡らなかったり、意外に気を使う。大人数なら最初から銘々の分で出されるほうが時間配分もしやすい。

▼極意その3:皆を笑わせる“おバカ役”を抜擢して耳打ちしておく

参加者の中から盛り上げてくれそうなキーパーソン=“おバカ役”を素早く見定める。自分が喋ってばかりでなく「こんな感じでよろしい?」などその人に話題を振ると一体感が出る。あだ名を作って呼ぶのも手。

▼極意その4:おもしろアプリ、写真などを活用して全体を盛り上げる

話題のアプリや写真で遊べるタブレットは宴会の最終兵器。「絶対当たる星占い」で参加者を占ってみたり、参加者同士で“自撮り”した画像に順位をつけるのも意外に盛り上がる。時間を費やすビンゴなどは基本NG。

▼極意その5:偉い人には専属で人をつけておく

その場にちょっと気を使う偉い人がいた場合、その人が退屈しないようにあらかじめ担当をつけておく。当人よりもちょっと職位が下くらいの人間がベスト。飲み物のケアや会話が途絶えないように気を配らせる。

▼極意その6:上司の無茶振りに戸惑う若手には、なんでもいいからやらせて笑い転換!

宴会でよく見かける、新人への無茶振り。止めるよりもなんでもいいからやらせて褒める。「上司は咄嗟の適応力を見ようとしているので、モジモジするのが一番よくない。すべっても飲み会終わったら皆、忘れてますからね」

▼極意その7:理想は涙と笑顔の楽しい宴会。最後に大笑いしたら勝ち!

「シリアスな話もします。仕事かなんかでええ話やなと思えるようなやつね。メリハリつけて、最後に全員で笑えたら最高の宴会です」。高等テクニックだが、まずは自分が率先して笑おう。笑いは周囲に伝染する。

(鈴木 工=構成 相澤 正=撮影)