特集上映で上映される『霧の中のハリネズミ』
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 生誕75周年を記念して、『霧の中のハリネズミ』をはじめ代表作6本をHD修復し世界に先駆け一挙上映する「アニメーションの神様、その美しき世界」開催に合わせて来日したアートアニメーションの巨匠ユーリー・ノルシュテインが、長年にわたり親しみ、自作にも影響を与えたという日本文化や、日本のアニメーション作家との交流について語った。

 今回の来日期間中は各地で講演を行い、また日本を代表するアニメーション作家・山村浩二やスタジオジブリの高畑勲らと対談を行うなど、積極的に活動したノルシュテイン監督。1987年に広島国際アニメーションフェスティバルの審査員として初来日して以来、多くの日本のクリエーターと交流を続けている。「彼らが素晴らしいのは自国の文化を大切にしていること。異なる文化への興味や尊重が、わたしたちの関係をより深めている」。

 ノルシュテイン監督が初めて日本の文化に触れたのは、少年時代のこと。「小学校高学年から中学生にかけ、旧ソ連で出版された日本の詩や俳句、短歌の本を手に取ったんだ。初めは意味がわからずにいたが、長い時間をかけて読み解き、その意味を理解できるようになった」と振り返る。「その時に感じたのが、俳句や短歌が醸す香りや空気。それ以来わたしの心は日本に近づき、その哲学はわたしの作品にも影響を与えている」。

 講演やワークショップなどを通じた日本との交流は、彼の作品資料集という形でも結実した。日本で出版された「ユーリー・ノルシュテインの仕事」(ふゅーじょんぷろだくと刊)は、原画やデッサン、絵コンテなど豊富なアートワークやインタビュー、メイキングなどを収録した集大成というべき一冊だ。「ロシアに持ち帰ると、誰もが驚き大評判になったものだよ」と笑うノルシュテイン監督。「この本を生み出したのも、わたしと日本の方々との友情や交流によるものなんだ」。

 そんな日本との関係を象徴するのが、ノルシュテイン監督の親友である人形アニメーション作家、故・川本喜八郎さんが企画・監督した連句アニメーション『冬の日』(2003)だ。35人の作家が松尾芭蕉の俳諧七部集を紡ぎ出したこの短編集で、ノルシュテイン監督は第一話「発句」を担当した。「五・七・五の三行からプロットを組み立てるという、チロー(喜八郎)のアイデアが素晴らしい。異なる民族が互いの文化を認め合い、受け入れる素晴らしさを感じた」と当時を回想し、『冬の日』は「わたしにとって学校のような作品だった」と結んだ。(取材・文:神武団四郎)

「ユーリー・ノルシュテイン監督特集上映〜アニメーションの神様、その美しき世界〜」は12月10日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開