世界各国のベンチャー企業や大学の研究テーマ、特許、新製品への投資データを保有し公開しているアスタミューゼ株式会社。実は世界中でさまざまな情報は公開されているが、そこにたどり着き情報を生かせている人は多くはない。

集めた膨大なデータを徹底的に分析し、仮説を立てながら社会のトレンドを読み取る……それらはアスタミューゼが展開する法人向け・個人向け各事業へ活用されている。

事業企画・マーケティング部に所属し「astamuse.com」のサービスディレクターも務める波多野智也氏(以下、波多野氏)は、分析データや人々の検索ワードから次のトレンドも読めると話す。

アスタミューゼ 波多野智也氏


「『IoT』という言葉を耳にすることが多くなったと思うかもしれませんが、実は2年前にはすでにその傾向が現れ始めていました(2016年10月取材現在)。アスタミューゼのサイトに来るユーザーの動きを見ていると『あぁ、次はこの領域が盛り上がるんだな』っていうのがわかるんです。IoTに関連する技術用語がよく検索されているな、と思っていたらその後バッと広がりました」

アスタミューゼが収集した膨大なデータにたどり着く人たちの興味を知ることで、これから話題になるキーワードが見えてくるということらしい。そもそもアスタミューゼとは何のためにデータを集めているのだろうか?

分析したデータを公開することで、必要な人が情報にたどり着く

「アスタミューゼは世界中からデータを集めています。知的財産や技術、特許のほかに論文や投資データなど細かな情報に至るまで収集しています」と波多野氏は話す。

だが、データベースのようにそれを公開するだけではない。
「そこからは、データをひたすら分析していきます。データとデータをつなぎ合わせることで見えてくるものがあるんですよ」

実際にアスタミューゼは膨大なデータの分析を通し、新規事業開発の支援なども行っている。企業向けには投資や新規事業支援のコンサルティングを行い、個人向けにも人材事業において研究者、技術者を中心に年間4万人以上もの転職支援を行っている。

「たとえばドローン技術と農業とクラウドコンピューティング。それぞれ全然違う領域に見えてもつなぐことで、農薬を効率的に散布したり作物のデータを収集して収穫率を向上させたり、と革新的なことが起こるわけです。他の例でいうと富士フィルム株式会社がわかりやすいですね。カメラの関連事業で培った研究力と技術力が化粧品や医療技術に活かされた……一見すると離れた存在のものも、未来に向かって融合していくことがあるんです」

データはそのままだと、当事者にとっても自分とは関係ないものに見えがちだ。そこで「こういう可能性もある」という提案をすることでわかりやすくしてくれる。

アスタミューゼのサイトでは社会の課題とそれに取り組んでいる企業や市場を見ることができるだけでなく「このページを見ている人が注目している技術」という具体的な技術や知識も知ることができるのだ。

「技術の名前だけでは専門的過ぎてピンとこない人や企業があるかもしれませんが、それをわかりやすい言葉に翻訳する作業をしているというイメージです」と波多野氏は話す。
また、さらにそこに自分の役割を感じているという。

「アスタミューゼの名前を聞いて、何をしている会社がわからないという人が多いと思います。また、少し説明しただけでは事業内容もわかりにくいかもしれません。この会社の中での自分の役割も、それをわかりやすく翻訳することだと思っています」

アスタミューゼは10月に、革新的科学技術の事業化を支援する独立系ベンチャーキャピタルのBeyond Next Venturesと人材採用支援領域においての提携も発表している。ロボットやIoTなど科学技術をベースとしたベンチャー企業が増えているが、事業には資金だけではなくもちろん人材が必要不可欠だ。

「事業アイディアを実現する技術力」や「事業領域に対する豊かな知見」などのマッチングが重要になってくるが、今回の提携でアスタミューゼはサービスの利用者へ自分のスキルに合致した将来有望なベンチャー企業への転職機会の提供を加速させるという。

IoTのつながっていく面白さに役割を感じる

波多野氏は、アスタミューゼにいると大きな世界の流れがよくわかる、という。
「IoTはモジュールの集合体です。つながっていくことが本質。ここに僕が面白さを感じているんだと思います。何かをつなげていく、違う領域の何かとつながっていくということに意義を感じます。ニッチなものでも言い方を変えるだけで伝わることがあり、そこの翻訳する部分に自分の役割を感じますね」

IoT の可能性を未来へ向かって融合することだと話す波多野氏だが、彼自身がフレキシブルに未来を見つめていることがわかるのがその働き方だ。マクロの視点を持つアスタミューゼのほかに、スマートセキュリティに特化した株式会社セキュアルでマーケティングスペシャリストとして籍を置いている。

セキュアルは薄型のセンサーを窓やドアに貼るだけで、その振動を読み取ってスマホに通知してくれるというシンプルなサービス。出荷前にグッドデザイン賞を受賞するなど高い注目も集めているサービスだ。

アスタミューゼの仕事とは反対にセキュリティという特定の領域に絞った仕事だが、どちらも本質を伝えるために利用者の立場に立ってわかりやすく伝えるのが波多野氏の仕事だ。

アスタミューゼは決して副業を推奨しているわけではないというが、それぞれの仕事をすることで広報に広がりを持つことができるなどメリットがある点から、会社側が承認してくれたのだという。一見すると違う仕事内容にも見えるが、波多野氏は仕事への取り組み方も「何かをつなげていく、つながっていくことに面白さを感じる」という IoT の可能性と同じ楽しみを大切にしている。

 

<プロフィール> 波多野 智也(はたの ともや) 

千葉県印西市生まれ。音楽専門学校卒業後、フリーター〜音楽業界を経て 13 年前に IT 業界と出会う。2010 年より頓智ドット株式会社で PR・企業提携を担当。
2012 年にイノベーション支援事業を展開するアスタミューゼ株式会社に入社、事業企画、広報を担当。2015 年 8 月からはホームセキュリティのスタートアップ「Secual(セキュアル)」のマーケティングを兼務。先端技術を利活用し、世界中のイノベーション創出量を上げること、未来が訪れるスピードを速くするために活動中。

アスタミューゼ
http://astamuse.com/

secual(セキュアル)
http://secual-inc.com/

筆者:IoT Today