「ビートポート」がもたらした面白さは、細かな音楽ジャンルの壁を取っ払った点にもあると語るモーリー氏

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『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンがクラブミュージックに“突然変異”を生んだ資本主義について語る。

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突然ですが、クラブミュージック専門のストリーミングサービス『Beatport(ビートポート)』をご存じでしょうか。世界中のDJやミュージシャンが次々と楽曲をアップロードする音楽配信サイトです(もちろん曲を購入できます)。

アーティスト側は、自分の考える最高の新しい音を提供し、リスナーは感性だけで“勝者”を選ぶ。そのため、セールスランキングは完全なる自由競争の世界。このサービスに、僕は「正しい資本主義」の姿を見ました。当然、そこには“業界のお偉いさんの思惑”なんてものが入り込む余地はありません。

面白いのが、ここがなんでもアリの弱肉強食の世界で、「パクりパクられ」も当たり前なことです。せっかく新しい音を作っても、すぐにコモディティ化してしまうので、常に新しい音を提供しないと“過去の人”扱いされ、ランク外に追いやられる。この容赦なき切磋琢磨(せっさたくま)によって、作品そのものの変異と進化がものすごく早くなり、結果、本当にイノベーションを起こせるような(いわばスティーブ・ジョブズ級の)アーティストだけがランク上位に食い込み続け、それ以外はニシンが餌に群がるように浮動票を奪い合っている状態なのです。

現在、この世界で最強といわれるなかのひとりに、Skrillex(スクリレツクス)というアメリカのミュージシャンがいます。彼は自分の楽曲が売れれば売れるほど、さらに危ないチャレンジをする。放っておいても自分の音が模倣されることをわかっているから、あえて積み上げてきた「自分らしさ」を放棄し、スタイルもスピードもその都度、全部変えてしまう。だから常にシーンの真ん中にいる

一方、数年前まで絶大な人気を誇ったポーランド出身のXilent(ザイレント)というDJは、成功を手放したくないがために自分のスタイルに固執し、“Xilent節”ともいうべきおなじみの音作りに終始してしまった。最近では新しく刺激的な音を生み出すことができず、すでに「懐メロ」扱いされてしまっています。

DJであり、ジャーナリストでもあるという僕の立場からこの世界を見ると、いろいろな発見があります。考えてみればこの構造は、ノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマンが生きていたら大喜びしたであろう、勝者と敗者のくっきり分かれる新自由主義の世界なのです

このビジネスモデルがもたらした面白さは、ハウス、ダブステップ、ドラムンベース……といった細かな音楽ジャンルの壁を取っ払った点にもあります。マーケットのなかでジャンル同士が“交配”したほうが儲かるという資本主義的なインセンティブが働き、それまでお互いに反目し合っていたようなジャンルでも「カッコよければOK」と、簡単に結びつくようになったのです。無節操さが音楽を活性化させて、文化の突然変異を生み出したわけです。

この厳しくもエキサイティングな競争と進化を目の当たりにすると、日本のメディアに蔓延(まんえん)する怠惰な空気がどうしても気になります。

なぜ、いいかげんな言説をバラまく“自称専門家”や“自称ジャーナリスト”が淘汰(とうた)されず、大きな顔をしていられるのか視聴者や読者はそれを許し続けるのか。そこに純粋な競争原理が働く日は来るのでしょうか。

●Morley Robertson(モーリー・ロバートソン)

1963年生まれ、米ニューヨーク出身。国際ジャーナリスト、ミュージシャン、ラジオDJなど多方面で活躍。フジテレビ系報道番組『ユアタイム〜あなたの時間〜』(月〜金曜深夜)にニュースコンシェルジュとしてレギュラー出演中!! ほかにレギュラーは『NEWSザップ!』(BSスカパー!)、『モーリー・ロバートソン チャンネル』(ニコ生)、『MorleyRobertson Show』(block.fm)など