デュエルにも強い永木。所属の鹿島でも存在感を増している。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 先の11月シリーズで、Jリーグでプレーするふたりの選手が日本代表デビューを果たした。

 永木亮太と丸山祐市である。
 
 ロシア・ワールドカップ最終予選のサウジアラビア戦に先立って行なわれた親善試合、オマーン戦にふたりは揃って先発出場した。永木はこれが日本代表デビュー。丸山はすでにオーストラリア戦に出場していたが、プレー時間はわずか数分だったのだから、初先発のこの試合が実質的なデビュー戦と言っていいだろう。
 
 ふたりのニューフェイスに共通するのは、湘南ベルマーレでのプレー経験を持つことだ。永木は大卒で10年に湘南入りして以来、今季鹿島に移籍するまで6年間湘南でプレー。丸山は14年の1年だけだが、期限付き移籍により当時J2だった湘南でプレーし、ほぼ全試合(41試合)に出場。勝点100超という圧倒的な強さでのJ2優勝に大きく貢献した。
 
 12年に者貴裁が監督に就任して以来、湘南は攻守に運動量の多いアグレッシブなサッカーで注目を集めてきた。今では「湘南スタイル」という言葉もかなり浸透したほどだ。
 
 高い位置でボールを奪い取る球際の強さ。ボールを奪った勢いをそのまま厚みのある攻撃につなげる推進力。攻守をすばやく切り替えて上下動を繰り返す運動量。それらの武器を兼ね備えた湘南は、クロップ時代のドルトムントに例えられたほどだ。どちらかと言えば、一度引いて相手の様子をうかがうような戦い方をするチームが多いJリーグでは、異彩を放っている。
 
 こうした特徴は当然、ハリルホジッチが目指すサッカーとの相性はいい。湘南スタイルを身につけた彼らが、こうして日本代表に加わってきたのは自然な流れだろう。湘南で求められるものが、いかに現代サッカーにおいて必要な要素であるかを物語っている。
 
 永木が見せるボールアプローチの速さはJ1屈指。今季のJ1王者でも、日に日にその存在感を強めている。ボランチとしての前への強さは、日本人選手のなかでは山口蛍と双璧だろう。また、丸山には日常的に森重真人とコンビを組めるアドバンテージがあり、レフティという特徴もある。ふたりとも、すぐに代表でポジション奪取というわけにはいかないだろうが、今後、日本代表で地位を高めていく可能性は高い。
 さて、こうして湘南出身者が日本サッカーのメインストリームを歩み始めた現在、彼らに続く選手もチェックしておかなければならない。
 
 このシーズンオフ、アカデミーから湘南で育った菊池大介は浦和が、大卒で13年に加入して以来、湘南で4年間プレーした三竿雄斗は鹿島が、それぞれ獲得に動いているという。湘南にとっては、主力が次々に流出していくことはゆゆしき事態。サポーターにしてみれば、冗談じゃないと、悪態のひとつもつきたくなるところだろう。
 
 だが、第三者的に全体を俯瞰したとき、彼らの移籍は間違いなくキャリアアップだ。熱血監督の薫陶を受けた精鋭たちが新たな舞台で活躍することは、間違いなく湘南の価値を高めることでもある。最近よく耳にする言葉で表現するなら、どこでプレーしていようと彼らは「湘南のレガシー(遺産)」なのだ。
 
 海外組の動向が気にかかる昨今、日本代表を活性化する可能性を秘めるのは、実はなかなかJ1に定着できず、J2との間を行ったり来たりしているクラブ育ちなのだとしたらおもしろい。
 
 湘南スタイルの矜持を胸に戦う選手たちに、これからも注目しておきたい。
 
文:浅田真樹(スポーツライター)