ソフトバンクの孫正義社長、米国に「5兆円超」を投資(2010年5月撮影)

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2016年12月8日、東京株式市場は朝から買いが優勢で3日続伸。日経平均株価は1日に年初来高値(1万8513円12銭)を更新。終値は前日比268円78銭高の1万8765円47銭で取引を終えた。前日に史上最高値を更新した米国の株高を好感。その勢いをそのまま引き継いだ。

米国の株価上昇はなんと言っても「トランプ効果」だが、それをさらに勢いづけたのが、5兆7000億円ともいわれる米国への投資を明らかにした、ソフトバンクグループの孫正義社長とされる。積極的な海外投資に対して、日本への投資はどうなっているのだろう――。

米国に5兆7000億円、英国では3兆3000億円

米ニューヨーク株式市場は2016年12月7日、ダウ工業株30種平均の終値が前日比297ドル84セント高の1万9549ドル62セントと、3日連続で史上最高値を更新した。トランプ次期米大統領による景気刺激策や規制緩和策への期待感で、相場の先高観は根強い。

そうしたなか、動きが目立ったのが通信株。ソフトバンクグループが2013年に買収した米携帯会社のスプリントや、通信大手のAT&Tなどが上昇。ハードディスク駆動装置(HDD)のウエスタンデジタルなども大幅高で引けた。

8日の東京株式市場は、こうした流れを好感して取引がはじまった。日経平均株価は午前から活況で、終値は前日比268円78銭高の1万8765円47銭。東証株価指数(TOPIX)は22.07ポイント高の1512.69と、ともに3日続伸した。銘柄の71%が値上がり。出来高は28億1860万株だった。

ソニーやトヨタ、富士通、コマツなどが大幅に上昇した。なかでも、ソフトバンクグループは、孫正義社長が米国で5兆円超を投資することを明かした7日午後から買い気配が強まり、7日の終値は前日比431円高の7387円。8日の終値は405円高の7792円だった。一時、583円高の7970円まで上昇。前日に付けた年初来高値をあっさり更新した。

12月6日午後(日本時間7日未明)、ソフトバンクの孫社長は、トランプ次期米大統領とNYの「トランプタワー」で会談。そこで、「Masa(孫社長)は総額500億ドル(約5兆7000億円)を米国に投資し、5万人の新規雇用に合意した」という。トランプ氏が自身のツイッターで発信した。

「米国ファースト」を打ち出す「トランプ政策」で米国経済が成長。孫社長も、「事業機会も拡大する」と期待感を示した。米国での情報技術(IT)分野を中心にした新興企業への投資が進むことや、オバマ政権時代に米連邦通信委員会(FCC)が却下したソフトバンク傘下の米スプリントとTモバイルUSの合併観測が再度浮上したことなどが「買い」を誘ったとみられる。

米NY市場も東京市場も、株価の上昇は「ソフトバンク銘柄」がけん引したといってもいいかもしれない。

日本国内では5億円〜10億円

「5兆7000億円」の米国投資も含め、ソフトバンクグループによる大型の海外投資は、2016年に入って相次いでいる。9月の英国の半導体設計大手、アーム・ホールディングスの買収(約3兆3000億円)に続き、10月にはサウジアラビアの政府系ファンド「公共投資ファンド(PIF)」と共同で投資ファンドを設立すると発表した。とくに、サウジとのファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は最大で10兆円規模となる見通しで、ソフトバンクも今後5年間で2兆5000億円を出資する計画。孫社長は、「世界中のテクノロジー企業への出資をさらに推し進めます」と、その狙いを話している。

J‐CASTニュースが2016年12月8日、米国への5兆7000億円の投資について、ソフトバンクに、この「10兆円ファンド」から拠出されるのかどうか、聞いたところ、同社は「コメントは差し控えたい」と答えた。

とはいえ、このファンドの設立時に孫社長は、「われわれは、出資先のテクノロジー企業の発展に寄与することで、情報革命をさらに加速させていきます」とのコメントを寄せていた。米国投資の中心に、通信業を軸としたIoT事業があることはうかがえる。

一方、積極的な海外投資を横目に、ソフトバンクによる日本国内への投資案件はすっかり鳴りを潜めている感がある。ソフトバンクに、「国内投資は魅力がないのか」聞いたところ、「(国内に)力を入れていないわけではありません。ソフトバンクグループは、『事業と投資』が両輪ですから」と話し、国内外と問わず、積極的に投資を進めていくとしている。

2016年にソフトバンクが行った国内の投資案件は、公表ベースで、自動運転技術を活用したスマートモビリティーサービスの事業化に向けて4月に設立した「SBドライブ」に共同出資する先進モビリティへの、5億円の出資。また、フィンテック分野での個人向け投資管理サービスの事業推進を目的に、7月にスマートフォン向けのオンライン証券会社One Tap BUYへの10億円の出資などがある。

しかし、海外投資とは、投資規模のケタが違いすぎるのは確かだ。