そこに描かれているのは、半グレ化する不良老人の恐るべき実態―。無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんが今回紹介されているのは、そんな老人たちに迫った渾身のノンフィクション。長寿大国日本に生きる者すべてが読むべき、まさに「必読の書」と言っても過言ではありません。

『老人達たちの裏社会 万引き、暴行、ストーカー、売春……他人事ではない長寿社会のリアル』

新郷由起・著 宝島社

新郷由起『老人達たちの裏社会 万引き、暴行、ストーカー、売春……他人事ではない長寿社会のリアル』を読む。最近こういった高齢者関係の本をよく読むが、長寿はマイナスの面が多いとつくづく思わされる。半グレ化する不良老人が急増している。老齢者による殺人、暴行、性犯罪などもはや珍しくなくなった。従来の老人像にはあてはまらない「ネオ老人」とも呼ぶべき彼らの言動の裏にあるものは何か。そのエネルギーの源泉はなにか。未曾有の高齢化社会で噴出する諸現象を、著者(女性)は体当たりで取材する。シニアストーカーの凄まじい思い込みと執念に翻弄される恐怖の実体験も。

6章にわたる「ネオ老人」たちの実態は、万引き、ストーカー、暴行・DV、売春、ホームレス、孤立死である。ストーカー加害者の約9割は男性。女性にとってはまさに生命の危機で、勘違いさせる曖昧な態度や優しい言動は文字通り命取りになる。彼らが決まって口にするのは「やり残したことがあった。それは恋愛だ」だという。おぞましい実態。老人は「性のない存在」という認識をあらためなければならない。高齢者の暴行検挙は20年間で45倍になったという。売春、長寿時代に「女の業」はさらに深まる。「いつ発見されるかが大問題」なのが孤立死で、時間が経つにつれて凄まじいことになる。これは避けたい。

残りの人生を誰もが生き甲斐を持ち、胸を張って送れるのなら問題はない。取材を通じて浮き彫りになったのは、もてあます時間とエネルギーをどう使ってよいか分からず、老いに焦りながら迷走を続ける、不器用な高齢者の姿だったという。迫り来る死を意識し、残された時間は限られているはずだが、毎日の時間は有り余っている。現状が幸せとは思えない。満たされていない。だが打開する術が分からない。達成感や充足感とは無縁の、砂を噛むような時間が延々と続くとしたらまさに「生き地獄」だ。「こんな長生きするはずはなかった」という戸惑い。「枯れるだけ」で日を費やすには余生はあまりにも長い。

あとがきの提言が正しい。

少子化で労働力の低下が叫ばれる今日、「枯れない」高齢者を一日も早く、社会の中で有効活用しない限り、超老人大国となるこの国はいずれ潰れてしまうと感じている。「時間があり過ぎて困る」とボヤく高齢者があきれるほど多いのだ。彼らの余暇とエネルギーを無駄遣いさせていることこそ、この国の大きな損失だろう。

彼らの持つ虚ろな時間を、活力を、能力を、空費させることなく、社会の何かへ生かすシステム作りが急務ではないのか。これから高齢者になる人に向けた対策だ。いま現在の高齢者には無駄な過剰な医療は停止し、自然に任せるべきだとわたしは思う。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock

 

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出典元:まぐまぐニュース!