がんの転移に関与する分子を発見、バルセロナ科学技術研究所が発表

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がん細胞の転移が、単一の分子に大きく依存しているとの研究成果が発表されました。

発表したのは、バルセロナ科学技術研究所・生物医学研究室の研究チーム。12月7日付のNatureに掲載された論文によると、マウスの口腔内にできた口腔がん細胞を調査した結果、がん細胞の集団が転移する際には脂質を消費しており、このとき、脂質を取り込むのを助ける「CD36」(脂肪酸受容体CD36)という分子の発現が確認されたといいます。

がん細胞が転移するには多くのエネルギーを必要としており、転移先の新しい組織に適応し、すみやかに増殖を開始するために、がん細胞は転移プロセスのエネルギー源として脂肪を消費します。今回の研究によって、転移プロセスを実行するためには、このCD36を介する必要があることがわかりました(ただし転移を開始する細胞そのものの同定はなされていません)。

研究チームは論文の中で、中和抗体によってCD36をブロックすると、副作用なく腫瘍の移転が阻害されると述べています。残念ながら元の腫瘍の発生と成長には阻害効果が見られなかったとのことですが、臨床的に"CD36+転移を開始するがん細胞"の存在は、多くのタイプのがんの予後不良と相関することが明らかになっており、これはCD36のブロックによって、がん細胞が体中に移転することを食い止められる可能性を示唆します。

研究チームは現在、CD36の発現を阻害する抗体を開発しています。臨床試験の準備が整うまでは少なくとも4年以上の開発期間が必要との予測を明らかにしつつも、実験抗体ではマウスの転移性腫瘍の15%を破壊し、80%に収縮が見られたことを報告しています。

また研究チームは同時に、高脂肪食品ががんの転移を促進すると判断するには時期尚早であり、現段階ではがんの転移を防ぐ目的で食事を低脂肪食に切り替えることは却って危険なので、絶対にしないよう呼びかけています。