(写真提供=SPORTS KOREA)

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2016年のプロ野球の主役は、二刀流が一段と進化した大谷翔平(日本ハム)であった。韓国でも日本の野球への関心は高く、大谷は広く知られた存在である。

しかし、彼が高校(花巻東)時代、韓国で試合をしたことを知っている人は、そう多くない。

ソウルで開催されたU18世界野球選手権のことである。もっともこの大会での日本代表の主役は、藤浪晋太郎(阪神)と森友哉(西武)の大阪桐蔭バッテリーであった。
(参考記事:日本の写真週刊誌でも紹介された韓国プロ野球の美しき“バットガール”たちの真実)

それでも大谷は、初戦のカナダ戦に4番・投手で出場し、登板しない時は、外野手やDHで中軸を務めるなど、二刀流の原点をみせた。

この大会日韓戦は、第2ラウンドと5・6位決定戦の2回あった。第2ラウンドでは、藤浪が完投して4-2で日本が勝ち、5・6位決定戦では、先発した大谷が2点を失うなどして3-0で韓国が勝った。

この大会、韓国は優勝したアメリカや準優勝のカナダに勝ち、日本は3位の台湾に勝っており、上位チームにはほとんど差がなかった。

あれから4年。日韓の代表選手たちはどうなったか。改めて調べてみると、日本と韓国の環境の違い、韓国野球の状況が浮き彫りになった。

大谷や、今年やや不振であった藤浪の活躍はもちろん、今年は田村が捕手でベストナインに輝き、北條が内野手でスタメン出場するようになった。

森はもっとやれるという思いはあるが、打撃センスの良さはみせている。

しかし濱田は2年前に5勝を挙げたが、その後は肘を痛め、このオフ、戦力外を告げられ、育成契約を結ぶことになった。

大学に進んだ選手は、佐藤、中道、金子がプロ志望届を提出したが、中道がオリックスに育成枠で指名されただけだった。社会人で改めてプロを目指すことになる。

田端のように、亜細亜大に合格したものの辞退し、しばらく野球から離れていたが、この春から日本ウェルネス大北九州で野球を再び始めた者もいる。

日本の場合、プロに行くのはごく一握りの選手だが、それでも独立リーグはあるし、チーム数が少なくなったとはいえ、社会人野球もあるなど、選択肢は多い。

だが、韓国の場合、社会人野球は15年ほど前になくなり、プロで戦力外になったり、入団できなかったりした選手の受け皿としては、韓国のプロ野球機構(KBO)に所属しない漣川ミラクルというチームが独立球団としてあるだけである。

韓国の選手は、ケ・ヨンウンとチェ・ユンヒョクが大学に進学した他は、すぐにプロ入りしている。ケ・ヨンウンも斗山に10位指名されており、高校で指名されなかったのは、当時の代表ではチェ・ユンヒョクだけである。

もっとも、当時の3年生で9球団、2年生は翌年から1球団増えて10球団になり、1球団当たり10人が指名される。

それに対して高校のチーム数は最近70校に増えたが、当時は60校余り。代表クラスの選手であれば、大半が指名されて当然ともいえる。

膨大な資源の中から宝石を探さなければならない日本と違い、限られた人材の中から選ぶ韓国では、スカウト活動がそれほど活発でない。

近年、大学の試合は地方で開催されることが多く、スカウトの目が行き届かないこともあり、大学に進んだ2人は、今年のドラフトで指名されることはなかった。

しかも、崔順実の娘、チョン・ユラの不正入学の影響で、スポーツ特待生の入学や、入学後の成績管理が厳しくなり、大学スポーツは大変な時代になっている。

プロ入りした選手では、兵役中もしくは兵役を終えたばかりの選手が多い。

一口に兵役と言っても、軍隊のチームである国軍体育部隊の尚武や警察のチームに所属する、自治体や公共企業体の現場で働く公益勤務、軍の部隊に配属される現役入隊という3つのケースがある。

U18の大会の5・6位戦で、大谷から先制二塁打を放ったソン・ジュンソクは肩を故障し、昨年から、軍部隊に配属されている。

肩や肘の故障は、日本でも問題になっているが、韓国ではより深刻だ。この時の代表の投手はほとんどが、肩や肘、とりわけ肘に故障を抱えていた。

手術をして1年は本格的な投球ができないのなら、この際、兵役を解決しようというケースもある。当時韓国高校球界ナンバー1と言われたユン・ヒョンベもこのケースで、昨年から自治体の公益勤務要員になっている。

兵役期間中も野球を続けられる尚武や警察のチームの入団は、競争が激しい。ただ入れたとしても、2つのケースがある。

1軍で活躍していた選手は、元のチームが復帰を待ちわびている。仮に兵役期間中に他の選手が台頭したとしても、貴重なトレード要員となる。

一方、入団数年で兵役に入ったU18の代表のような選手たちは、尚武や警察であろうと、公益勤務であろうと、軍部隊に配属されようと、除隊後の実力をみて、今後の野球人生が決まる。

近年は、尚武や警察を経てブレイクするケースが目立っている。

今年の新人王であるシン・ジェヨン(ネクセン)は警察の、昨年の新人王であるク・ジャウク(サムスン)は尚武を経験している。

その一方で、入団した年に新人王になったのは、2007年のイム・テフン(当時斗山)以後いない。

この年はシーズン終盤になって、北京五輪で日本キラーとなる高卒ルーキーのキム・グァンヒョン(SK)も台頭している。その前の年は、現ドジャーズのリュ・ヒョンジン(当時ハンファ)が、高卒ルーキーながら、新人王とMVPを独占した。高卒ルーキーが活躍したのは、この頃までで、その後は若手が伸び悩んでいる。

今回、早々に兵役を終えた選手は、元のチームでないケースもあるものの、とりあえずプロ野球に戻ることができた。けれども、これから数年が正念場になる。

当時の韓国代表では、まだ1軍で本格的に活躍している選手はいない。それでも、来年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は無理としても、今後のWBCや五輪などの舞台で、日韓の大谷世代が再び相まみえる日は来るのだろうか。

韓国の選手にとっては、ここ数年が勝負どころになる。

(文=大島 裕史)