12月7日、DeNAは「WELQ」など10のキュレーションメディアを閉鎖したことについて、経緯を説明する謝罪会見を行った。

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DeNAは12月7日、「WELQ」など10のキュレーションサイトを閉鎖したことについて謝罪会見を行った。会見には現社長の守安功氏や、創業社長の南場智子氏が出席したが、現場を知る事業責任者の姿はなかった。3時間に及ぶ会見で明らかになったこととは?

■キュレーションサイト閉鎖が続いている

11月末頃から、ネット上で何かを調べようと検索すると、上位に表示される記事をクリックしても中身が空っぽ、という事態が続いている。きっかけは、DeNAが運営する「WELQ(ウェルク)」の記事をすべて非公開化したことだった。サイバーエージェント、リクルートなどDeNA以外の企業もこの動きに続いており、「記事が読めないサイト」は現在急増している。

WELQは健康情報を扱うキュレーションメディアで、ヘルスケア情報だけでなく、病気についてなど医療情報も扱っている。その内容の信ぴょう性について問題があるということ、そしてそのコンテンツが著作権侵害なのではないかという批判を受け、11月29日にDeNAはWELQの全記事を非公開化、読めないようにした。12月1日には女性向けファッションを扱うキュレーションサイト「MERY」以外の9つのメディアの記事を非公開化、さらに12月5日にはMERYを含むすべてのキュレーションサイトの記事を非公開にしている。

12月7日、DeNAは本件についての謝罪会見を行った。出席したのは、代表取締役社長兼CEOの守安功氏、経営企画本部長の小林賢治氏、そして会見直前に急遽出席が決まった、創業社長で現取締役会長である南場智子氏の3名のみ。事業責任者である村田マリ氏など、キュレーションメディアの制作現場を知る人の姿はなかった。

■DeNAのキュレーションサイトは、何が問題だったのか

今回、DeNAのキュレーションサイトが問題になった理由は、大きく分けて2つある。

1つは、WELQにおいて、医療の専門知識を持たないライターが書いた医療系の記事を掲載していながら、その内容についての正確性を担保せず、不正確な内容の情報を公開していたということだ。薬機法(旧薬事法)違反の記事も多くあり、11月28日には東京都の福祉保健局にDeNAの担当者が呼び出され、指導を受けるという事態にもなっていた。これについて守安社長は「当初、WELQは筋トレなど、ライトなヘルスケア情報のサイトということで昨年(2015年)8月にスタートした。外部から『WELQの医療情報(の信憑性)はどうなの』と言われるようになったのが、今年の夏ごろの話。医療情報に関しては、公開された記事をあとから監修していけばいいと考えていた。世間の認識とズレていた、甘かったと反省している」とコメントしている。

もう1つはMERYやiemo、Find Travelなど、同社のキュレーションサイト全てに関わる、記事の制作プロセスである。一般のメディアサイトであれば、編集部があり、外部スタッフ(ライターや編集協力、カメラマンなど)と協力しながら、取材などを元にオリジナルの記事を制作していくのが常だ。しかしDeNAのキュレーションサイトではオリジナルの記事を書く代わりに、外部のサイトに書いてあることを無断でコピー&ペーストし、文末を少し書き換えてまったく同じ文章にならないようにすることで“オリジナル”な記事に仕立てる、という作り方をし、制作コストを極端に低く押さえていた。これは他サイトに掲載されていたコピー元の記事を書いた人たちの著作権侵害に当たるのではないかという指摘だ。

会見では、同社のキュレーションサイトの記事作成プロセスについて説明が行われた(画像)。DeNA社内のプロデューサーが社内外のディレクターに指示を出し、ディレクターはライターに直接、あるいは外部パートナー(クラウドソーシングサイトなどを指す)を通じてライターに原稿執筆を発注する。このほか、ライターが直接記事を投稿できるケースもあり、どうやって投稿された記事なのかは外からは分かりにくくなっていたという。

筆者が気になったのは「編集部(に相当するもの)がなかった」という点だ。メディアにおいて、記事の品質や内容の正確性を担保するためには編集部が必要だが、それがなかったと、小林氏は説明している。

また、「プロデューサー、ディレクターから、外部パートナーまたはライターに記事作成を発注する際において、他の方が作成された記事などを参考にする場合には、元の記事と同一の形にならないように作成するよう指導していたマニュアルがあった」とも小林氏は明言している。他の人が書いた記事を(適切な手順を踏んで)書き写すのであれば「引用」だが、元記事があることを知っていながらわざわざ書き換えていたならば、それは「盗用」である。

経緯説明と記事作成プロセスの説明のほか、取締役会で出た指摘を受けて、第三者による調査委員会を設置し、事実関係の調査を行っていくという。また今後の対策として相談窓口を開設すると発表。同社のサイトの情報によって健康被害を受けた人、また記事の正当性に懸念がある人は窓口から連絡が欲しいと話した。

守安氏、小林氏の説明のあとは質疑応答が行われ、会見は3時間にも及んだ。以下、筆者が特に気になった4点に絞って質疑応答の内容を紹介する。

■疑問1:「iemo」「MERY」買収時に、著作権違反サイトという認識はなかったのか

DeNAのキュレーションプラットフォーム事業は、2014年にiemoとMERY(運営会社:ペロリ)を買収したところから始まっている。買収する場合には対象企業や事業のデューデリジェンス(財務、法務などさまざまな観点からの調査。その結果を受けて契約内容や買収額を決める)が行われるのが常だ。DeNAがiemoとペロリを買収するときに、キュレーション事業について著作権違反という認識があり、今回のような問題が起こる可能性があることを買収時にある程度予見していたのか。あるいはデューデリジェンスでの説明が正確でなかったために誤認していたのだろうか。

この質問に対し、守安氏は以下のように答えている。「買収時に当然デューデリジェンスは実施した。その中で著作権に対する考え方、法的な観点からリスクは一部あるかもしれないと分かった上で買収の判断を行いました。ただその時『法的な観点のみから見れば、このような考え方で大丈夫なんじゃないか』という議論があったが、本来その時に『もっと著作権者の方がどのようにこの事業を考えるのかを含め、配慮が不十分だったのではないか』と反省しているところです」

■疑問2:著作権侵害で問題になっていた人物をなぜ採用したのか

iemoとMERYの買収後すぐ、キュレーションプラットフォーム事業を立ち上げるタイミングで合流したメンバーの中には、その頃日本で著作権侵害が問題視されたため、運営サイトが閉鎖された関係者も混じっていたことが知られている。すでに著作権侵害で問題を起こしている人たちを採用したのはなぜなのか。

この質問に対し、守安氏は「そのように指摘されても仕方がない。著作権者に対する配慮を含め、当初の認識が甘かった」としか答えなかったが、続けて南場氏は以下のように話している。

「その意思決定をした場に私もおりました。問題のある個人を採用するのはどうなのか、と経営会議でも議論になりました。しかし問題を起こしたのは非常に若い人物で、私どもとしては、こうした問題を決して起こしてはいけないと思っています。ただ、その若者が、ネット上で大炎上して心を痛めている、大反省をしていて、すでにお詫びもしているというのであれば、もう一回チャンスを与えてみようじゃないかということで、『私に会わせてもらえないか』と経営会議で私自身が発言し、その人物にも会って確認したのです。

インターネット文化の発展のプロセスにおいて、こうした大きな間違いを起こしてしまった若者に再度チャンスを与える。これは安易に行ったわけではなく、経営会議でもそこが大きな論点となり、そういう人物を入れて良いのかと侃々諤々の議論がございました。

その意思決定よりも、採用した後に、当社としてしっかりと教育ができたのか。当社自身が結果として同じような過ちを犯してしまったということ、これはその後の私どもの認識の甘さだったと考えています」

■疑問3:記事制作方法を変え、儲からなくなってもメディアを続ける意思はあるか?

DeNAのキュレーションサイトでは、コスト削減のために編集部を置かず、記事執筆は外部パートナーに委託し、独自取材を行わず他サイトから情報を持ってくることによって、コストを極めて安価に抑えてきた。

一般に、Webメディア事業のビジネスモデルは、広告収入から記事制作コストを引いたものが利益になる。広告収入以外にも大きな収入源があるのでもない限り、記事制作コストが高くなれば利益は大幅に減り、“おいしいビジネス”ではなくなってしまう。

広告収入以外にも、DeNAのキュレーションメディアには大きな収入源があったのか。また、今後他サイトから情報を持ってくるのをやめて、オリジナルコンテンツをつくるように路線変更し、記事制作コストが跳ね上がって利益が減ったとしてもこの事業を続けるのか? 筆者の問いに対し、守安社長は以下のように答えた。

「収入面に関して、一部MERYにおいてEコマースを行っていたので物販売上がありましたが、基本的には広告収入が大半です。そしてコンテンツ制作にコストをかけた場合ビジネスモデルとして成り立つのかという質問。まさにそこを我々が考え抜くことが必要だと思っているので、挑戦はしていきたいと思います。

結果として、これがビジネスモデルとして成り立たないということになるかもしれません。しかし現時点では、これもキュレーションビジネスと呼ぶのかということから考えないといけませんが、こうしたバーティカルなメディアをどうすればユーザーのみなさまにも喜んでいただき、世間のみなさまにも納得いただいて、ビジネスとしても成立するものができるかというところは考えていきたいと思っています」

DeNAにとって、メディア事業はもともと本業ではない。ビジネスとして成り立たなければ撤退する可能性があるということか? と問うと、守安社長はこう答えた。

「それはどの事業においてもだと思っています。弊社の事業すべてについて、当然営利企業ですから、投資期間をどれくらい見るかということでも変わってきますが、未来永劫利益を生む可能性が低いということであれば、事業から撤退するというのは必要な判断だと思っています」

■疑問4:南場氏はWELQを見ていたのか。WELQの医療記事を見てどう思ったか

筆者の2つ目の質問は、南場会長に対してのものだ。創業社長である南場氏が2011年に社長職を退いたのは、夫である元USEN取締役・紺屋勝成氏ががんにかかり、その闘病に専念するためだった。キュレーション事業の買収や今回の問題、サイト閉鎖はすべて南場氏が現場を離れている間に起こったことである。

会見が行われた2日前、12月5日に紺屋氏は亡くなられた。その南場氏にWELQのことを質問するのは非常に心苦しいものがあったが、それでもどうしても聞きたいことがあった。夫の闘病生活を支えるため、南場氏はおそらくネットで医療情報、特にがんについての情報を探したはずだ。その中で、WELQの記事を見たことがあったのか。そしてWELQの記事を見たとき、「医療情報がスマートフォンで手軽に検索できるのは良いことだ」と思ったのか、それとも「こんなずさんな情報がネットの検索上位に来るのはひどい」と思ったのだろうか? ……とても聞きづらい質問だったが、南場氏の答えは真摯なものだった。

「大変不覚なことでございますけれども、WELQのそういった情報提供について、まったく認識していませんでした。私は日々もちろん情報を探しています。家族の闘病が始まったときから、インターネット情報を徹底的に調べまして、インターネット上の(医療)情報がそれほど役に立たないとか、がんに効くキノコといったような話がでてきて信頼できないと2011年時点で思いました。そして私の情報収集は、論文と、専門家からのレクチャーを受けるということを中心にしていました。ただ毎日、同じ病気の患者さんのブログは毎日チェックしていました。

そして、この件を知ったのは、実は報道されてからなのですが、『がん』という言葉でWELQの中で検索をしてみて、いくつか出てきた記事を読んだときには『いつこういう重い情報を、医療情報を扱うようになったのか』ということで愕然としたという事実がございます。経営者として非常に不覚であったと……反省しております」

■現場を知る人物が答えない限り、問題は何も解決しない

会見を通して強く感じたのは、守安氏は本当にメディア事業を行っている自覚があるのだろうかという違和感だった。DeNAのキュレーションサイトにおける記事作成プロセスは、明らかに著作権の侵害に当たるが、守安氏は会見中一貫して「著作権を侵害してはいけないということを基本方針にしていた」「著作権への配慮に欠けていた」「他サイトの権利を侵害しかねない」という言い方しかしていなかった。少し突っ込んだ質問に対しては「分からない」「第三者調査委員会の報告を待つ」としか答えない。

守安氏よりも具体的に問いに答えられる人がいるとすれば、それは今回会見に現れなかった、キュレーションプラットフォームの現場を統括する事業責任者だろう。DeNAのキュレーションプラットフォーム事業は、2014年にMERYとiemoを買収したことから始まっている。iemoは住まいやインテリアに特化したキュレーションサイトを運営する企業で、その代表だったのが村田マリ氏だ。現在村田氏はDeNAの執行役員として、MERY以外の同社のすべてのキュレーションプラットフォーム事業を統括する立場にあるが、今回これだけ大きな騒ぎになっているにも関わらず、現在もシンガポールにおり、日本には戻ってきていないという。

DeNAにとってメディア事業とは何なのか。今回指摘された問題点を一つ一つ解決し、本当に真摯にメディア事業に取り組んでいくつもりがあるのか。それはどのように進めれば実現できるのか。……今回の長い会見では出なかった答えに、DeNAは答える責任があるはずだ。

(文=PRESIEDNT Online編集部 吉岡綾乃)