日本人横綱への道は果てしなく遠い――。
 「もはや国技ではない」との辛辣な声も聞こえてくる。

 九州場所(福岡国際センター)は11月27日、横綱鶴竜の優勝で幕を閉じた。だが、場所を大いに盛り上げ、大きな溜め息を誘ったのは、鶴竜でも、綱取りに挑んだ大関豪栄道でもなく、大関稀勢の里(30)だった。
 先場所の稀勢の里は、3場所連続して挑んだ綱取りに失敗。同じ大関の豪栄道が初優勝を全勝で飾ったこともあって、支度部屋でこの世の不幸を1人で背負い込んだような顔をしていた。
 「無理もありません。この結果、大関以上でただ1人、“優勝していない力士”という不名誉なレッテルを貼られてしまったんですから。愚痴の一つもボヤきたくなろうというものです」(担当記者)

 この失意のどん底から這い上がるには、基本的なことだが、稽古するしかない。事実、この秋巡業で、上位陣で最も稽古したのは稀勢の里だった。
 「貴乃花巡業部長に、やりすぎるな、とブレーキをかけられる場面もあったほどでした」(同)

 この積もり積もったうっぷんを晴らすように、九州場所後半戦の稀勢の里の闘いぶりは、例えようのないほどすごかった。9日目の豪栄道を皮切りに、白鵬、鶴竜、日馬富士とどっちが横綱かと見紛うばかりの力強い相撲で、文字通り粉砕。優勝戦線に食い込み、九州場所を熱く盛り上げたのだ。
 この“横綱3連破”は史上10人目で、過去の9人中7人が優勝している。勝ち方があまりにもすごかっただけに、ファンが逆転優勝、綱取り再挑戦を夢見たのも当然だった。
 ところが、横綱3連破直後の13日目、平幕の栃ノ心に右四つに持ち込まれ、最後は右からの下手投げで思い切りたたきつけられて3敗目。これで逆転優勝も綱取りも、一瞬のうちにパー。館内には「またか」という声が充満した。

 この裏切り行為に、さすがの稀勢の里も意気消沈。
 「迷いはなかった。敗因は右四つになったことかって? そういうことじゃないですか」

 支度部屋で呆然としていたが、八角理事長も「あれも稀勢の里、これも稀勢の里。負けられないという気持ちが強すぎたのだろう」と呆れ顔。
 毎度おなじみのパターンと言ってしまえばそれまでだが、いつまでもこんなことを繰り返していては賞味期限が切れてしまう。

 今の大関陣はいまひとつ信頼がおけない。角界に頭一つ抜きんでた日本人力士が出てこないものだろうか? 一発で横綱を決めてくれる猛者が…。