【専門誌では読めない雑学コラム】
■木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第83回

 みなさんがゴルフをするとき、どうやってコースを選びますか?

 一番多いのは、コースを自ら選ばず、単に「誘われたから行く」というパターンでしょうか。3〜4人でラウンドする場合、誰かひとりが予約すれば、残り2〜3人は誘われるほうですから、誘われ率は自然と高くなり、そうしたパターンが多くなるのは必然なのでしょう。事実、他にコンペもありますから、生まれて一度も自分でコースを予約したことがない、という"ツワモノ"が結構おります。

 じゃあ、たまたま自分が予約することになったら、どうしますか?

 今はネット予約がメインですから、そうした予約サイトで、行くエリアと予算、あとは昼食付きかなどをチェックして、最後にスタート時間を決めたらボタンを押すだけ、という方が多いかもしれませんね。

 コースの善し悪しは、判断材料にならないのでしょうか?

 そんなことを聞いてみると、「う〜む......。(コースの)何が凄くて、何が凄くないのか、よくわからない」という方が多いようです。

 ゴルフをやっているときは、夢中でプレーしていますから、どのホールも一緒に見えてしまうのでしょうか。だったら、18ホールはいらないかもしれませんね。6ホールぐらいを3回プレーしたほうがいいかも......って、ほんまかいな。

 というわけで、今回は超簡略的ではありますが、日本のゴルフの設計家のお勉強をしましょう。

 まず、覚えることは、これです。

「東の井上、西の上田」

 これは、関東の女優・井上真央と、関西のソウルシンガー・上田正樹、どっちが好きか? と聞いているわけではないです。

 東は井上誠一、西は上田治という名前です。双方とも著名な設計家で、主な活動期間が昭和30年台〜40年台と近いこともあって、よくライバル視されていました。

 先に、名匠・井上誠一から説明しましょう。彼が設計したコースは、大洗ゴルフ倶楽部、日光カンツリー倶楽部、霞ヶ関カンツリー倶楽部、龍ヶ崎カントリー倶楽部、鷹之台カンツリー倶楽部、東京よみうりカントリークラブ、武蔵カントリークラブ、大利根カントリークラブ、戸塚カントリー倶楽部、愛知カンツリー倶楽部などなど、日本を代表する名門ばっかりです。

 しかも距離が長く、大胆にして繊細。ゆえに、プロツアーの日本オープンの開催率が非常に高い、というのが特徴です。何を隠そう、私も井上誠一のファンで、以前は彼が設計した鶴舞カントリー倶楽部のメンバーでした。

 続いて、西日本を中心に活躍した上田治。彼が設計したコースもまた、古賀ゴルフ・クラブ、門司ゴルフ倶楽部、下関ゴルフ倶楽部、小倉カンツリー倶楽部、広島カンツリー倶楽部、茨城ゴルフ倶楽部など、プロツアーの日本オープンや有名トーナメントの開催コースが目白押しです。

 ふたりは、チャールズ・アリソン(イギリスの設計家)から刺激を受け、強烈なライバル意識を持っていたとか。

 以前、北海道苫小牧市にある上田治設計の樽前カントリークラブに行ったとき、そんな上田治と井上誠一の"因縁"について、関係者にお話をうかがったことがあります。樽前CCを作るとき、ちょうど井上誠一は札幌ゴルフ倶楽部を建設中だったそうで、上田治は彼に負けじと、樽前CCの建設には相当な情熱を注いでいた、という話を聞きました。

 さて、こうした話を聞くと、井上誠一、上田治といった大先生が設計したコースでプレーしたいと思うでしょう? ですが、それらは名コースばかりで、名門ゆえにビジターではなかなか予約さえさせてもらえません。

 そこで、抜け道というか、大先生たちが設計したコースでも、プレーできそうなところを紹介したいと思います。

 井上誠一設計で簡単にプレーできるのは、千葉県にある大原・御宿ゴルフコースです。ここは、私も何度も行っている、お気に入りのコースです。パブリックコースで、料金もお手頃ですから、ビジターが行くにはもってこいでしょう。

 圧巻は、17番ミドルホール。第1打の落としどころに、左右に計10個の白砂の大きなバンカーが点在しています。そこをなんとかクリアし、グリーン方面に向かって歩き出してふと後ろを振り返ると、あら不思議、さっきのバンカーがまったく見えないじゃないですか!?

 白い10個のバンカーは、「波やカモメのイメージで作った」と言われています。ゴルファーは"旅人"であり、その目前に10羽のカモメが飛んで来て、過ぎ去る。後ろを振り向くや、もうそのカモメたちの姿は消えていた――私は、そう理解しました。

 ゴルフコースに詩情あふれる物語性を残すなんて、素敵じゃないですか。さすが、井上誠一ならでは、です。

 井上誠一の設計は、ゆったりしたレイアウトで、「これはちょっとな!」と不満に思うホールはまずないです。各ホール、ちゃんと考えて作っています。

 大原・御宿GCのショートホールなどは、池がらみでバンカーも多く、攻め応えがあります。それでも、リゾートコースゆえ、池があまりタイトに絡んできてはいません。グリーンぎりぎりまで池が迫っていないのが、井上先生の優しさなのかもしれません。

 ぜひ一度、"初・井上誠一"を体験しに、大原・御宿GCでプレーしてみてはいかがでしょうか。

 一方、上田治設計のコースですが、ビジターでもプレーできるコースが結構あるようです。上田先生は、名門コースをたくさん作っていますが、カジュアルなコースも結構手がけているんですね。上田先生はどうも頼まれたら断れない性格のようで、おかげで50以上ものコースを設計した、という話も伝えられています。

 関東しか知らないので、オススメは関東のコースになります。ひとつは、新千葉カントリー倶楽部ですね。昔は「まずは新千葉から」と言われ、「お値打ちのコースの割には、上田治設計でしっかりしている」と評判でした。ここは、54ホールあって、メンバーの数もかなり多いのですが、メンバーの紹介があれば、時期によってはビジターでもプレーさせてくれるみたいです。

 有名なのは、あさぎりコースです。雄大で距離も長く、攻め甲斐が十分にあります。関東プロやプロアマ競技など、大きな大会はあさぎりコースが使用されることが多いです。ぜひ、知り合いに紹介してもらって、ラウンドしてみてはいかがでしょう。

 もうひとつは、新東京都民ゴルフ場です、って河川敷コースじゃないですか。そう、上田先生はそういう庶民的なコースまで設計しています。

 何度か行きましたが、河川敷コースなのに、砲台グリーンとか、妙にレイアウトが凝っていたな、という印象が残っています。大先生のコースを体験する手始めに行くにはいいかもしれません。

 どうでしょう、多少はコースの設計家に興味を持っていただけたでしょうか。また機会があれば、今度は有名な外国人設計家が作った、コースの特徴と醍醐味などをレポートしてみたいと思います。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa