【今さら聞けない】エンジンの「DOHC」って何?

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吸排気のバルブを別のカムシャフトで動かし高性能化を狙った

DOHCというのは、ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフトの略です。日本語でいえば、シリンダーヘッドにマウントされる2本のカムシャフトという意味でしょうか。

4ストロークエンジンではカムシャフトのカム山によって吸排気バルブを押すというメカニズムが必要になります。そのカムシャフトを1本ではなく、2本にすることで高性能化を狙ったのがDOHCとなります。

一般的には吸気側のカムシャフトと、排気側のカムシャフトを独立した形になります。それによってバルブのはさみ角が自由に設定できる他、直接バルブをカム山で押すことができるのでシンプルになるというメリットがあります。

昔はDOHCのバルブはさみ角は90度というのも、よくありました。吸気バルブと排気バルブを直角に配置するには、他の方式ではかなり複雑になったのです。バルブはさみ角が大きいのでバルブ径を大きくすることができ、ハイパワーを実現することができたのです。

原始的な4ストロークエンジンのバルブ駆動系は、サイドバルブ(略称はSV)という形式でした。クランクケース内に配置されたカムシャフトからプッシュロッドを上に向かって押します。バルブは上向きなので、プッシュロッドが直接押す形になります。

サイドバルブのエンジンでは、バルブはシリンダーの真横にあって、燃焼室はシリンダーの上部からバルブの上部を結ぶ使用済みの固形石鹸のような形でした。現代のエンジンとは燃焼室の形が違いますが、汎用エンジンではこの構造を採用するものも少なくありません。

現在のようなピストンの上にだけ燃焼室が形成されるのは、OHVが登場してからです。オーバー・ヘッド・バルブの略です。サイドバルブではエンジンブロック側にバルブがあるのに対して、シリンダーヘッド側にバルブを配置した、という意味です。

バルブは燃焼室、ピストンに対して上から刺さる形です。構造としてサイドバルブを進化させて、プッシュロッドの上向きの動きを、ロッカーアームというシーソーのそうな機構で下向きにするのです。これによって燃焼室の表面積が小さくなり、熱効率は大きく向上することになりました。

DOHCは燃費にも貢献する技術

OHCというのは、オーバー・ヘッド・カムシャフトの略です。今度はバルブだけでなく、カムシャフトもエンジンヘッド側に配置されたわけです。高回転ではプッシュロッドという棒が正確性に問題があるので、プッシュロッドを排するためにカムシャフトをクランクケースからシリンダーヘッドに移動させた、というわけなのです。

当初はバルブを直接カム山で押す構造で、吸排気系がエンジンの同じ側にあるカウンターフローという方式でした。しかし吸排気効率を考えて、吸気系からエンジンを経て排気系という一方通行の流れが良いことが判ります。これをクロスフローと呼び、それを実現するためロッカーアームを介することになりました。

しかしロッカーアームを介する以上、いろいろな制約があります。その制約をなくして自由度を高めたのがDOHCなのです。吸気バルブと排気バルブが別々のカムシャフトで駆動されるので、トレンドとなっている可変バルブタイミング機構を組み込むことが可能で、それがパワーと燃費を両立させているのです。

バルブのはさみ角はハイパワーを狙えば大きくなりますが、燃焼室の表面積は大きくなるので効率は悪くなります。現代の高効率エンジン、ダウンサイジングターボではバルブのはさみ角は小さくなっていますが、それでもバルブ駆動系のシンプルさによって優位性があるのです。

昔は凄いものだったけど、今はごくフツーのものになっていたりします。そんな技術はたくさんあります。技術のブレークスルーと言うんですが、高コストから低コストへ、少量生産から大量生産へ、つまり航空機工学から自動車工学へ、軍需産業から民生産業へ、という先進技術の流れが結果として技術的進歩を広く多くの人に行き渡らせるのです。

(文:岡村神弥)