「ポケモンGO」が世界的大ヒットした理由

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まいど、相場の福の神こと藤本誠之です。いきなり、「まいど」と言われても困るかもしれませんね。私は、SBI証券投資調査部のシニアマーケットアナリストです。『相場の福の神』というのは、ラジオ番組でつけられたキャッチフレーズです。現在、年間に200社以上の上場企業の経営者と面談して、その中から今後大きく成長しそうな企業を個人投資家に紹介する仕事を行っています。いつもは、ユニークな「人材活用術」を行っている成長企業を紹介するコラムを連載していますが、今年9月21日に、『ポケモンGOが世界経済を救う!』という書籍を書きました。その書籍のコンテンツの中から、ポケモンGOについて、いかに世界経済を救うかについて数回にわたってご紹介いたします。

■ポケモンGOは本当に世界経済を救うのか?

今年の夏に全世界で配信が開始されたスマホゲーム「ポケモンGO」が株式市場に与えた影響は、強烈なものでした。米国で「ポケモンGO」が配信され、アップストアのダウンロード数や、売上高ランキングで1位になったとのニュースが伝わってから、任天堂株が急騰しました。最初のうちは、状況が良くつかめなかったのですが、その週末に米国から様々な「ポケモンGO」に関するニュースが伝わり、これは単なるスマホゲームのヒットではなく、社会現象になった、これはえらいことが起こったと感じました。

だから、7月18日のWEBでの連載コラム「祝・任天堂ストップ高!『ポケモンGO』関連銘柄はこの3つ」で、「任天堂株もさらなる上値が期待できそうです。場合によっては、史上最高値7万3200円(2007年11月)の更新も夢でないかもしれません。」と書いています。おそらく、任天堂株の史上最高値更新について言及した、最初のアナリストだったでしょう。

私と「ポケモン」の関わりは、子供がきっかけです。二男一女の3人の子供がいますが、3人とも、まさに「ポケモン」にハマっていたのです。ほぼ、すべてのポケモンのゲームソフトを買い、新しい任天堂のゲーム機が出るたびに買っていたのです。3人の誕生日やクリスマスのプレゼントは、ほとんど任天堂のゲーム機とソフトだったと言っても過言ではないでしょう。その他、テレビアニメや、ポケモン番組を見ており、映画にも結構行きました。

まさに私はいわゆる「ポケモン親世代」だったのです。

その「ポケモン」がスマホゲーム「ポケモンGO」になって世界中で社会現象となっていることに、興奮しました。そして、様々なニュースなどを見ていて、この「ポケモンGO」は、世界経済に大きく貢献すると確信しました。そこで、書籍『ポケモンGOは世界経済を救う!』を執筆することに決めたのです。正直、この書籍のタイトル『ポケモンGOは世界経済を救う!』は、少し盛っていて大げさな表現だとは思いますが、世界経済に与える影響は決して無視できるものでないことは明らかです。

■ゲームにハマる要素は「収集」と「交換」

今回は、まずは「ポケモン」そのものについて復習してみましょう。

ポケモンは1996年にゲームボーイの1ソフトとして登場したわけですが、ポケモンがヒットし、これだけの認知度を得られたのは、ゲームにとどまらずに派生作品・商品が大量に作られたことにあると思います。それは、マンガ、アニメ、キャラクター商品、カードゲーム、アーケードゲーム化……など非常に多岐にわたり、私なども小さい子供を持つ親ですが、家の中には購入当時は100円くらいだったでしょうか、ポケモンの指人形が何百個もあります。

主要メディアにおける展開をざっと見渡してみても、ゲームのポケモンが販売された1996年2月の2カ月後の4月には、ゲームを原作としたコミカライズ作品(マンガ化)の「ふしぎポケモン ピッピ」が『別冊コロコロコミック』(小学館)連載を開始し、後に、ゲームソフト名そのままの「ポケットモンスター」と改題した連載が『月刊コロコロコミック』に、同年9月から移籍連載をスタートさせています。翌1997年4月1日にテレビ東京で始まったテレビアニメで、最高視聴率で18.6%を記録、今でも続く同局の最長寿番組となっていますし、いくつもの関連番組が生まれました。映画では、東宝による配給で1998年から「ピカチュウ・ザ・ムービー」(PIKACHU THE MOVIE)がスタートし(2013年の16作まで)、2014年の17作からは、「ポケモン・ザ・ムービー」(Pokemon the movie)とシリーズタイトルを変えながら、現在も人気作品として続いています。どれだけ人気かと言えば、いずれの作品も方が作品全体で毎年ベスト10に入るといった具合で、2015年の18作目までの合計で観客動員数が7000万人を超えるという、他には見当たらないいわゆるキラーコンテンツとなっています。

アニメは海外でも放映されて、アメリカでも大人気となりました。このポケモンというキャラクターは、逆に日本人だとその海外における人気ぶりに気付きにくいものです。ですが、全世界的に見れば一番売れたゲームソフトはスーパーマリオで、ポケモンはその次に売れたソフトです。ですから、その認知度・人気度は、実は日本人が想像する以上のものがあります。例えば、ニューヨークの年始を祝うパレードでは必ずピカチュウの風船がアドバルーンとして飛ばされているほどです。

ゲームソフトのポケモンシリーズは1996年に最初の「赤と緑」から始まるわけですが、1999年には「金と銀」が、2002年には「ルビーとサファイア」と、2〜3年おきに必ず2種類ずつのソフトがリリースされています。それが、ゲームボーイから始まり、ゲームボーイアドバンス、ニンテンドー3S、3DSと、任天堂が発売するゲーム機に引き継がれながらリリースされ続けます。

誰が見ても分かることではありますが、本書のような経済的視点から見るとこれが任天堂の商売の上手なところで、たった一つではない複数のソフトを同時発売し、しかも、このゲームにハマる肝心な要素は「収集」と「交換」にあるので、2種類のソフトで出てくるモンスターはほとんど同じですが、なかなか手に入らない“レアキャラ”や、手に入るキャラクターでもソフト毎で異なる“色違いキャラ”を設定することで、「収集」“コンプリート欲”を喚起させ、「交換」によるユーザー間のソーシャルゲーム性を高めるという戦略には舌を巻くものがあります。

ちなみに、今年の11月には3DSでの「サン・アンド・ムーン(太陽と月)」の2つのソフトがリリースされています。世界中での初回出荷本数は1,000万本を超えており、大人気のようです。

■ポケモン世代は全年齢層に広がる

こういった、続々と新種が出てくるポケモン戦略のヒントとなった話として面白いのは、ポケモンを開発したのは任天堂1社でなく、ゲームフリークという会社も開発元となっているということです。そして、このゲームフリークの社長だった田尻智氏がポケモンの開発にあたって参考にしたのが、ウルトラマンシリーズだったと言われていることです。ウルトラマンシリーズの中のウルトラセブンでは、カプセル怪獣というものが出てきますが、当初は、このカプセル怪獣から着想を得て、カプセルモンスターというロールプレイングゲームの企画をしたそうです。それが、カプセルトイのようなモンスターが通信ケーブルを行き来するという発想に変わり、最終的にはポケモンに結実したということだそうです。そこには、カプモンという名称では商標権に抵触するので、ポケモンに変化したという現実的な事情もあったようですが。

いずれにせよ、プレイヤー間による「交換」といった双方向的な概念をゲームに取り入れたポケモンは全く新しいゲームとして世間で受け入れられました。

より正確に言えば、ポケモンというゲームは、
(1)収集
(2)育成
(3)対戦
(4)交換

という4つの要素が非常に重要なゲームですが、双方向的な「交換」がないと収集の成果である「図鑑」が完成しないという、そもそもが一人では完結できないゲームでした。そこが広く受け入れられた要素だったと思います。しかも、友達と対戦もできる。だから、「こいつより強いモンスターが欲しい」という欲求も高まり、よりユーザー間でのソーシャルな欲求を高め、ある意味、キリがなかく、どこまでも突き詰められる要素が付加されていたわけです。

また、先に触れたポケモン関連番組の、例えば今でもやっている「週刊ポケモン放送局」では、芸人トリオのロバートや、アキバ系芸能人の代表格でもある“しょこたん(中川翔子)”などがポケモンフリークタレントとして登場して、親しみやすかった上に、新しいソフトに関する情報がどんどん出て来るといった、同時進行性も大きな魅力であったに違いありません。

以上が20年前に生まれたポケモンの歴史ですが、実はポケモン世代というのはもっととても長いんです。

だいたい5歳から中学生くらいまでが実際のゲームをプレイするとして、20年前の5歳ですから下が25で上が35歳が「ポケモン登場世代」です。今でもポケモンは新作が登場し続けているわけですから、この登場世代を含んだ下は5歳から上は35歳までが「リアルポケモン世代」に当たります。どちらかというと男子の方が多いのかもしれませんが、リアル世代は周りのみんながやっていたので、女の子もだいたいは当たり前のようにやっていたので、特に男女を問う必要はありません。

また、小さい子供の遊びなので、親が強引にゲームソフトを買わされたり、テレビアニメを見せられ、映画館に連れていかされるので、この親世代も自然と親しむようになります。女性がだいたい20〜40歳までに子供を産むとすると、20年前の20歳ですから下は40歳から上は60歳までが「リアルポケモン親世代」に当たります。私もその親世代ですね。さらに上の、孫にポケモンのゲームソフトや関連商品をせがまれて買ってやった「じいちゃんおばあちゃんの「せがまれ世代」までと考えると、ほぼ全年齢層がなにがしかでポケモンに馴染みがあると言えるんです。

このような背景が全世界的にあったので、スマホゲーム「ポケモンGO」が世界的な大ヒットになったのでしょうね。

次回は、「ポケモンGO」と他のスマホプリとの違いについて、解説したいと思います。

(SBI証券シニアマーケットアナリスト 藤本誠之=文)