中尾武彦アジア開発銀行(ADB)総裁は日本記者クラブで会見し、中国経済について、「サービスと消費が主導する経済に移行し、中高進国の構造になりつつある」と分析した上で、日本の1990年代のような「バブル崩壊」はないとの見方を示した。

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2016年12月1日、中尾武彦アジア開発銀行(ADB)総裁は日本記者クラブで会見し、中国経済について、「サービスと消費が主導する経済に移行し、中高進国の構造になりつつある」と分析した上で、日本の1990年代のような「バブル崩壊」はないとの見方を示した。またインフラ資金需要が膨大なアジアにおいて、「ADBは中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)とは補完的関係にあり、ライバルではない」と強調した。発言要旨は次の通り。

アジアの開発途上国は全体として堅調な成長ペースを維持、GDP成長率は2016年、2017年ともに5.7%となる。中国経済はやや減速するものの6%台半ばを維持。自動車販売台数が2000万台と高水準を保つなど、サービスと消費が主導する経済に移行しつつある。都市化が進行する一方、宇宙や高速鉄道など競争力が強い分野も出現しつつあり、中高進国の構造になりつつある。日本の1990年代のようなバブル崩壊はない。

人口増加が著しいインドはモディ政権の経済重視志向もあって7%台の成長を堅持。インドネシア、パキスタン、バングディッシュ、フィリピン、ベトナム、ミャンマーなども5〜6%の成長が続く。

2008年に欧米を襲ったリーマンショック不況の際、欧米市場との経済取引に依存しているアジア開発途上国にも打撃となり、成長も急減するとの見方が有力だった。ところがアジア域内での取引が活発化したため杞憂に終わった。アジアの成長の要因は、インフラへの投資、教育や保健など人的資本への投資、マクロ経済の安定、開放的な貿易・投資体制、民間セクターの促進、政府のガバナンス(統治)、将来ビジョン・戦略、政治や治安の安定など。アフリカや中南米など他の開発途上地域に比べ、これらの長所が際立っている。

アジアは19世紀の初めまで世界のGDPの半分以上を占めていた。その後欧米の台頭によって凋落したが、現在3割程度に回復した。ADBの委託研究「Asia2050」によると、「アジアの世紀」が実現した場合、2050年には52%に達する見通しだ。

ADBは中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)とは補完的関係にあり、ライバルではない。ADBはアジア諸国と援助(ドナー)国に限定しているため加盟67カ国・地域にとどまっている、AIIBは域外途上国にも広げ、100カ国近くに達した。融資額も増え、成功したと思う。ADBとAIIBは国際協調融資などで協力できる。パキスタン、バングラディッシュ向けで実績も上がっている。

職員数はADBの約3000人に対し、AIIBは約100人とまだ少数なので、ADBの支援を求めている。今後とも両者が協力していきたい。世界で突出した成長を続けるアジアにはインフラ関連だけでも膨大な資金需要がある。豊かになったとはいえ、貧困率が10%で貧困人口も多い。主な非加盟国は日米だけになったが、ADBとAIIBはライバルのような対立構造ではなく、アジアでは補完し合える。

世界におけるアジアの存在は高まっている。ADBは税制、気候変動などのセミナーも開催。来年5月に、50周年記念総会を横浜で開催するのを機に「発展するアジア」のけん引役としての役割を果たしていきたい。(八牧浩行)