アメリカとの3位決定戦を制して、大会を3位で終えたヤングなでしこ。ここからA代表に駆け上がる選手は……。(C) Getty Images

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 ヨルダンでのU-17女子ワールドカップに続き、パプアニューギニアで開催されたU-20女子ワールドカップでも、年代別女子代表がメダルを獲得した。女子のU-20年代でのメダル獲得は、2012年の地元大会以来2度目のこと。6試合を戦って4勝2敗。スペイン戦を除く5試合では、相手チームをポゼッション率でも上回った。
 
 個人に目を移しても、MVPには「決勝を戦った北朝鮮やフランスにもいい選手がいたので驚いた。チームのみんなに感謝したい」という杉田妃和(INAC神戸レオネッサ)がU-17女子ワールドカップに続いて受賞。さらに、5ゴールを挙げた上野真実(愛媛FCレディース)が大会得点王に輝いた。
 
 大会で残した成績については、チームとしても、個人としても、合格ラインを悠々とクリアする結果と言えよう。それでも指揮官は、慎重にこの結果を分析する。
 
「私が想定している以上の力を発揮した選手はいませんでした。パスワークをはじめ、日本が世界のチームとまったく別のアプローチをして、現地の人にも喜んでもらったが、勝ち切れなかったのは事実」
 
 高倉麻子監督は、結果と内容に目を向けたうえで、こうチームを厳しく評価した。
 では、今大会で他チームに劣った部分、足りなかったものはどの部分か。指揮官と、実際にプレーした選手からは「フィジカル差」と「試合を決める力」が挙げられた。
 
 競り合いで身体を入れられないのも、ゴール前の接触プレーでバランスを崩すのも、体格差によるところが大きい。今大会も失点の多くが、サイドからの浮き球1本で生まれた(4失点中3点。うちPK2本含む)のも、対応するDFの心理的コンプレックスを含めた影響は小さくない。
 
「結局、どの年代でも同じ。もう、フィジカルの要素を抜いては考えられない」と高倉監督。とはいえ、小・中学生年代の選手なら、食事の指導を含めて選択肢は多いが、20歳前後の選手に「背を伸ばせ、大きくなれ」と言っても仕方がない。頭ひとつぶん大きな相手にも当たり負けしない体幹や、対応のテクニックを磨く他ないだろう。これは、代表合宿だけでは時間が足りない部分でもあり、各人の努力に負うところは大きい。
 
 決定力不足については、すでに優勝したアジア予選の頃から、その兆候は見られていた。「きちんとした体勢でシュートを打てていないし、シュートの技術自体も低い」(高倉監督)。課題克服のために指揮官が、GKとフィールドプレーヤー双方にノルマを設けたシュート練習でも、だいたい勝つのはGKチームのほう。枠内に飛ぶ本数も少なかった。
 
 今大会、日本は6試合を戦って北朝鮮(21得点)に続く16得点を奪った。だが、ノックアウトラウンドに進んだ8チームで、シュート1本あたりの得点や枠内シュート率を比較すると、半分より下になる(北朝鮮、ブラジルが、力量的に劣っていた開催国パプアニューギニアとのゲームで稼ぐなど、対戦相手の違いが影響しているのも事実だが)。
 
 とりわけ、ベスト4以降の2試合では、準決勝の延長30分を含む210分間で44本のシュートを放ちながら、わずか2ゴール(うち1点はPK)という結果に終わってしまった。大会を通じて4得点という立派な数字を残した籾木結花(日テレ・ベレーザ)をはじめ、攻撃の選手が責任を感じているのは、そのためだ。
 
 U-17年代あたりまでは脆弱な守備組織を比較的個の力でも突破できるため、決定機の数そのものが多く、ひとつのミスが致命傷にはなりにくかった。しかし、年齢が上がるに連れて、対戦相手の守備力も高まり、きれいな形での得点は減っていく。彼女たちが、今後、なでしこジャパンで戦うためには、攻守ともに「その一本」に対する意識を高める必要がある。
 アジア予選のMVP・小林里歌子(日テレ・ベレーザ)を欠いても、予選不参加組から抜擢された上野が穴を埋めた。3位決定戦でもディフェンスリーダーの乗松瑠華(浦和レッズレディース)を欠きながら無失点。特定の選手や、選手間の相性に頼り過ぎない、育成年代らしいチームだった。
 
 そんなチームが結果と育成の二兎を同時に追いながら、魅力的なサッカーをプレゼンした。ボランチ・杉田のMVPも、個人としてだけでなく、日本チーム全体のパフォーマンスを評価されての受賞だろう。そうしたポジティブな部分にはほとんど触れず、指揮官は「もの足りない」部分を指摘し続ける。
 
「実際は、何人か、試合中のプレーや集団生活の中で、良い部分を見せた選手はいます。でも私はたぶん、これからもずっと、選手たちには『物足りない』と言い続けます。そうしないと彼女たちがA代表に来られないので」
 
 厳しい言葉は、期待の大きさの裏返し。なでしこジャパンの監督でもある高倉監督が、かわいい教え子に甘い言葉をかけないのは、「上で待っている」からなのだ。
 
取材・文:西森 彰(フリーライター)