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 ゴールドマン・サックス(GS)出身者が、トランプ氏の次期政権の要職に就き始めています。最も注目が集まったのが、財務長官のポスト。ここに、GS出身のスティーブン・ムニューチン氏が指名されました。

 GS出身者で財務長官になった人物としては近年、クリントン政権のロバート・ルービン氏、ブッシュ政権のヘンリー・ポールソン氏がいますが、それ以来となります。

 ムニューチン氏はGSには17年間勤務し、最高情報責任者(CIO)を任されました。ムニューチン氏の父も同様に同社に勤めていたので、ムニューチン家は親子そろってのGS出身。ウォール街とのつながりが強いこともうかがえます。

 また、次期政権の首席戦略官兼上級顧問として起用される予定のスティーブン・バノン氏も、かつて在籍していました。バノン氏は80年代に同社でM&Aなどをしていました。

◆トランプ氏当選後、約25%上昇したGS

 そして、現在要職に就く可能性が指摘されているのがゲーリー・コーン氏。コーン氏はGSの現社長兼最高執行責任者(COO)です。

 11月29日にはトランプ氏と会談。それからすぐ、トランプ氏の政権移行チームとの会談予定が立てられました。政権の要職に据えるための協議が行われているわけです。もしコーン氏も要職に起用されれば、3名ものGS関係者が政権の要職に就くことになります。このような政治イベントは、株価にも反映されます。トランプ氏が勝利した後、多くの銀行株と共に、ゴールドマン株も上昇しました。

 11月8日に181.92ドルだったゴールドマン株は一週間後には211.19ドルまで上昇。約16%の上昇です。

 そして、再び動きが起こったのが11月末。

 30日にはムニューチン氏が財務長官になるということが分かり、さらに、トランプ氏の政権移行チームがコーン氏を政権の要職に据えることを検討しているということも分かりました。

 その翌日の12月1日、GS株の終値は226.63ドル。11月8日から計算して、約25%も上昇したことになります。そして、この一連の上昇により、2007年以来の高値をつけました。実に9年来の最高値。2007年というとリーマンショック前となります。

 ただ、米国の市場関係者と話してみると、このような上昇は永遠に続くものでなく、「政治イベントが一区切りすれば落ち着くだろう」という声が少なからず聞こえてきます。

◆選挙期間中はウォール街を批判しておきながら……

 このように盛り上がった11月のGS株ですが、大統領選挙中はこのような結果になろうとは、なかなか予想できなかったでしょう。ヒラリー氏は以前からウォール街との強固なつながりが指摘されており、GSでも有料講演などをしていました。

 ヒラリー氏に対して、「金に汚い」というイメージを持っている米国民は、今なお多数います。

 そして、トランプ氏もこれを材料に選挙期間中、ヒラリー氏とウォール街の関係を批判してきました。アメリカに数多くいる反ウォール街勢力の有権者は、ヒラリー氏には投票したくなかったので、結果としてトランプ氏に投票した側面もあります。

 しかし、選挙が終わってみればトランプ氏は路線を変更、GS関係者を政権の要職に据えています。しかも一人ではなく、複数人。民主党はこれを批判しているものの、ウォール街はトランプ氏の一連の行動に沸き、市場では楽観ムードが漂っています。

 市場と政治は密接に絡み合っていることがよく表れた11月でした。今後もトランプ氏の動きを注視する必要があるでしょう。

<文・岡本泰輔>

【岡本泰輔】
マルチリンガル国際評論家、Lingo Style S.R.L.代表取締役、個人投資家。
米国南カリフォルニア大学(USC)経済/数学学部卒業。ドイツ語を短期間で習得後、ドイツ大手ソフトウェア会社であるDATEVに入社。副CEOのアシスタント業務などを通じ、毎日、トップ営業としての努力など、経営者としての働き方を学ぶ。その後、アーンスト&ヤングにてファイナンシャルデューデリジェンス、M&A、企業価値評価等の業務に従事。日系企業のドイツ企業買収に主に関わる。短期間でルーマニア語を習得し、独立。語学コーチング、ルーマニアビジネスコンサルティング、海外向けブランディング、財務、デジタルマーケティング、ITアドバイスなど多方面で活動中。