2016年12月2日〜4日の3日間にわたり、幕張メッセ 国際展示場 9・10ホールにおいて、最新テクノロジーとポップカルチャーの祭典「東京コミックコンベンション2016(東京コミコン)」が開催された。

 2日目となる12月3日はメインステージにて、「VR INNOVATOR INC.CEO 村中りか & ドリフトキング土屋圭市トークショー」が行われた。

 村中氏は過去20年間近くコナミのAAAゲームのテーマ曲やエンディング曲および、音楽全体を製作してきた。代表作としては、メタルギアソリッドの第一弾から現在に至る大人気ゲーム「メタルギアシリーズ」、ホラーゲームの金字塔「サイレントヒル」や「悪魔城ドラキュラX」など多数ある。

 ドリキンこと土屋氏は日本を代表するレーサーの1人。1984年の富士フレッシュマンレースではADVANカラーに包まれたAE86トレノを駆り、開幕から破竹の6連勝を達成、程度の良いAE86はいまでも中古車相場において高値で取引されるほどの人気を誇る。

 現在は、レーシングチームARTA Projectのエグゼクティブ・アドバイザーを務めるほか、ドリフトイベントであるドリフトマッスルを主催するなど、レーシングシーンの第一線で活躍している。

 

VRで脳をだます〜 医療への挑戦

 トークショーでは、土屋氏が監修したVR対応のドリフトレーシングゲーム「Fearless D」を紹介。この「Fearless D」では、ユーザーはVRゴーグルを装着することで、周囲360度が見渡せる迫力ある3D映像を体験できる。

 村中氏はゲームに登場する自動車について、土屋氏監修のもとに世界に1台しかない“夢の車”を制作することを明らかにするなど、イベントとしては非常に盛り上がりを見せたイベントとなった。ドリキン信者の筆者としては、個人的には非常に楽しいトークショーであった。

 同トークショーでは「高齢化社会に向けたIoT×VR マテリアルに関する説明」というセッションが予定されており、実は筆者、そのセッション目当ての取材であった。ところがVRゲームの話題が、かなり盛り上がってしまい、そのままVRゲームに関する話だけでトークショーは終わってしまった。

 がっかりしていたところ、幸運にも主催者の計らいで急きょ、村中氏への独占取材がOKとなったため、その様子をお伝えしたいと思う。

VR Innovator Inc. CEO 村中りか氏


 

 トークショーがVRゲームの話題で盛り上がってしまったため、当然VRゲームに関してしか語ることができなかった村中氏。実際に力を入れていきたいのは医療関連の分野だという。

 具体的に何をしているのかというと、現在米国のカリフォルニア大学と契約し、脳梗塞の患者さんに対してVRとエクササイズマシンを使用することで、脳神経回路の修復に挑戦しているという。

 脳梗塞の患者たちは、脳の神経がつながっていないことが原因で、腕が上にあがらないなどの運動マヒの症状がある。通常は、リハビリ療法で外部から動かして刺激を与えることで脳神経を接続するといった処置が取られる。これは患者も痛みを伴うなど、かなり負担がかかる。

 筆者の父親も長いこと脳梗塞を患っていたが、何よりも嫌いなのがリハビリであった。これを患者が楽に行うためにVRとエクササイズマシンの組み合わせた新たなリハビリ手法を考案したというのである。

 村中氏によるとVRで脳を騙すことで、切れてしまった脳の神経回路を修復できるというのだ。

 

各種センサーを内蔵したIoTベスト

 また村中氏は現在、血圧や心拍数などの体内データを計測できるセンサーを、布の中に織り込んだIoTベストを開発中だという。VRベストでゲームをプレイするといった解説も行われたが、実はこのベスト、高齢者を想定して開発を進めているとのことだ。

 たとえば、深夜徘徊の多い老人に、このベストを着せることで万が一の深夜徘徊、その他、就寝中の心臓麻痺、血圧以上などの異変が発生した場合、同居の家族や介護ヘルパー、かかりつけの病院にインターネット経由で通知することができる。警備会社や大手医療機器サービスといったところと契約すれば、救急車の出動にも対応可能だ。

 プロトタイプのベストを実際に身に付けた。このベストには加速度センサーとジャイロセンサーなどのセンサーが組み込まれており、体を前後左右に動かすだけで、パソコン内で表示された自動車でレーシングゲームを楽しむことができた。

 このことからVRゴーグルを用いてエクササイズマシンに乗り、ベストを着て体を動かすだけでリハビリが行えるだろうというのは容易に想像ができた。

プロトタイプのベストで、レーシングゲームをプレイしている様子


 

 高齢者向けではないVRゲーム向けのベストとしては、ゲームには欠かせない横Gや加減速Gやタイヤからのロードコンタクトを感じたりできるベストの開発にも着手しているとのことだ。

 村中氏の構想では、半畳程度のスペースにシートを置きVRヘッドセットとベストを着ることで、自宅をアミューズメントパーク化することができるという。五感を刺激することで、健常者はリアルに近い体験をゲームで楽しめ、リハビリが必要な人はリハビリができるといったゲームが作れるかもしれない。

IoTと何を組み合わせたらよいのか?

 村中氏はIoTにVRやARを組み合わせることで、高齢者向けにさまざまなサービスが提供できると考えているそうだ。たとえば、旅行に行けない人でもVRで旅行を楽しんだり、遠隔地にいる患者さんと医者をつなげたりするといったことが可能になる。

 今回は、VRゲームの製作でコロプラ VR Fundから出資を受けているため、まずはVRゲーム向けのベストを制作することが先決となっているそうだが、将来的には高齢者に向けたベストを製作して医療の分野で役立てたいという話だった。

 ゲームの世界から医療へと応用できる技術がIoTによって実現できるという非常に興味深い内容であった。

 プレイしていて楽しいゲーム。これと同じ様に楽しくリハビリが行える世界が来るとしたら、それは素晴らしいことである。村中氏の今後の活躍を祈りつつ、会場を後にした。

筆者:Tetsuji Sekiguchi Ph.D.