深刻な大気汚染がすすむ中国・上海(「Thinkstock」より)

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 大手企業の業績を直撃しているのが、中国および新興国市場の景気減速である。特にこれまで景気を牽引してきた中国経済の失速は、「さらに続く」のか「ようやく反転」するのか、あるいは「一気にバブル崩壊」になるのか、見通しが立たない状況となっている。

 中国不動産投資への過熱はさらに続いており、つまりそれはバブルの危機をはらんでいるという裏返しでもある。何かのきっかけで一気にバブルがはじけ、かつての日本と同じ構図になることは十分に想像できる。すでに「タイミングの問題だけだ」と指摘する識者も少なくない。

 こうしたなかで、中国投資には明らかに大きな変化が始まっている。この傾向は特に今年、さらにいえばここ数カ月で顕在化しているもので、投資・進出よりも撤退・閉鎖が目立ってきているのだ。

●中国市場関連の報道は、撤退・閉鎖情報が急増

 弊社クリアリーフ総研では、電機・エレクトロニクスの業界調査およびニュース配信を行い、そのなかのひとつとして中国関連コンテンツも持つ。中国コンテンツ欄の記事だけを集計すると、2015年は92本の配信中、生産進出や増設投資など投資拡大(プラス材料)の記事が74本、生産撤退や現地子会社の再編など投資縮小(マイナス材料)の記事が18本だった。

 これが16年になると、11月上旬までの段階で全体67本の配信記事中、プラス材料が44本、マイナス材料が23本となっている。マイナス材料のウエイトでいうと、15年は全体の19.6%だったが、16年は34.3%となっている。さらにいえば、数年前までは毎月10〜20本の中国関連記事が掲載されていたが、全体的に中国関連のニュースは減少している。

 明らかに電機業界各社は中国投資に及び腰になっている。補足すれば、中国投資は国内投資での撤退とは比較にならないほどの困難がつきまとう。撤退の際には、進出のときに受けていた税制優遇の全額返還を求められるケースもある。にもかかわらず、撤退あるいは縮小を進める企業が増えているのだ。

●電機業界における16年の中国投資縮小の動き

 クリアリーフ総研が16年に掲載した、電機・エレクトロニクス業界各社の中国市場における投資縮小の動きなどを報じた記事タイトルは以下のとおり(日付は掲載日/詳細は同社サイト参照)。

・UACJ エアコン用銅管広州子会社解散へ(11月4日)
・セガサミーホールディングス ジョイポリスを香港企業に売却(11月2日)
・SJI 中国取引先債権を貸倒償却(10月26日)
・川重冷熱工業 中国空調機器合弁を解消(10月25日)
・東京コスモス電機  広州新工場に番禺工場統合(10月19日)
・双葉電子工業 天津の連結子会社を閉鎖、解散(9月26日)
・日立金属 圧延ロールの中国生産打ち切り(9月1日)
・クレスコ 中国市場縮小で上海子会社閉鎖(8月30日)
・永大化工 中国市場参入を取り止め(8月23日)
・日本ケミコン 海外再編の一環で中国体制も(8月19日)
・日本研紙 中国昆山の子会社を清算(8月3日)
・デクセリアルズ 蘇州の2工場を統廃合(8月2日)
・東海カーボン 天津生産拠点を縮小(6月24日)
・ラオックス  中国店舗をすべて閉鎖へ(4月1日)
・CIJ  上海開発子会社を解散(3月29日)
・東芝  美的集団に白物家電売却(3月18日)
・JMACS  上海の合弁電線販社を解散(3月1日)
・東芝  中国一般照明事業売却。再編の一環(2月29日)
・神戸製鋼所 中国景気減速で特損。赤字転落(2月5日)
・ジーエス・ユアサコーポレーション 天津工場閉鎖。爆発事故影響(2月3日)
・日立金属  上海のコイル用巻き線子会社売却(1月27日)
・中国GDP  2015年は6.9%増。25年ぶり低水準(1月20日)
・レカム  大連子会社3社を合併(1月7日)

 実際には投資の動きもあるが、中国への投資が縮小していることは間違いない。

 中国からの投資撤退の動きについては、現地の賃金上昇など投資メリットが薄れたことが大きい。それは中国の経済成長による必然だが、日系企業などの中国投資が中国経済を潤沢にした側面は間違いなくあり、そのメリットが薄れて「中国生産撤退」の動きが本格化すると、今度は中国経済の失速につながる遠因となることも否定できない。

 日本でバブルが崩壊、以後経済成長が失われたことと同じ歴史が中国で起こるリスクは大きい。
(文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役)