<トランプの米大統領選勝利後、次第に浮かび上がる不吉な枢軸。ヨーロッパのリベラルな秩序は最大の危機に瀕している>

 2017年はリベラルなヨーロッパが総崩れしかねない。四方八方からポピュリスト勢力に挟まれれば、ヨーロッパはプレッシャーに耐えきれないかもしれない。

 ヨーロッパでは、左派右派を問わずポピュリスト政党がリベラルな既存秩序に対抗し、巻き返しを図っている。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の支援も得た欧州各国の反乱に、今やドナルド・トランプのアメリカが加わった。EUは早々にその「犠牲」になりかねない。

 来年がカギだ。欧州各国の未来を決定づける選挙が目白押しだ。フランスやオランダ、ドイツで行われる国政選挙では、反EUを掲げるポピュリスト政党の躍進が見込まれる。

 来年4〜5月の仏大統領選は最も重要だ。フランスのEU離脱(フレグジット)の是非を問う国民投票を実施すると公約に掲げた極右・国民戦線のマリーヌ・ルペン党首は、大統領選第1回投票で上位2候補に入っても、決選投票では敗れると予想されている。だがポピュリズムの波に乗る国民戦線には勢いがある。何よりトランプが大統領選を制した後となっては、世論調査はもはや当てにできない。

【参考記事】テロ後のフランスで最も危険な極右党首ルペン

ルペンが勝てばEUは終わる

 フランス抜きでEUが生き残れるはずもなく、ルペンが勝てば、EUは終わったも同然だ。

 戦いはもう始まっている。先週末には、オーストリアで大統領選のやり直し選挙、イタリアでは憲法改正の是非を問う国民投票が実施された。オーストリアでは極右・自由党の候補ノルベルト・ホーファーが僅差でリベラル系の候補に敗れ、EU初の「極右」の国家元首の誕生は辛うじて阻止された。ホーファーは選挙戦で、EU離脱の是非を問う国民投票の実施を示唆するなど、反EUを鮮明にしていた。

 イタリアではマテオ・レンツィ首相が、不安定な政情を正すことを目的にした憲法改正案の是非を問う国民投票に挑んだが、開票の結果は大差で否決。レンツィは辞任の意向を表明した。これにより来年の解散総選挙の可能性が浮上し、反既得権益と反EUを標榜する「五つ星運動」がますます勢いに乗りそうだ。

【参考記事】国民投票とポピュリスト政党、イタリアの危険過ぎるアンサンブル

 欧州各国で右派や左派のポピュリスト政党が台頭したのは、財政危機と難民危機をきっかけだった。その躍進を支えたのは大衆の不満だ。リベラルなエリート層がグローバル化によって利益を享受する反面、自分たちは異質の文化の脅威にさらされ、置き去りにされていると感じていた。

フレドリック・ウェスロー(欧州外交評議会、上級政策研究員)