「内なる心の声に従って、やりたいことだけをやっていれば、人生は絶対にうまくいきますよ!」という主張をする人がたくさんいますが、私はそうは思いません。

 ご自身がそれで幸せだったら別に否定はしませんが、起業を夢見るサラリーマンなど、他の人に安易にすすめるには、それは無責任すぎる話なのではないかなと思います。

やりたいことをやるメリット

 彼らの主張はこうです。

 人間は、やりたいことをやっているときが幸せであり、最大限に集中できる。「好きこそものの上手なれ」ともいうように、学びや情報収集も苦ではなくなるので、いずれはその分野で第一人者になれるだろう。そうしたら、成功するに決まっている。そもそも人生は短いので、苦手なことややりたくないことをやっている時間はないのだ、と。

 これは、ある意味では正しい考え方だと思います。私もサラリーマン時代を通じてやりたいことを見つけ、起業をしているのでどちらかというと「そっち側」の考え方をしています。確かに、やりたいことを仕事にするのは理想的です。

 でも1つ大きな問題があります。やりたいことしかやらないと、少なくとも当面は食べていけないということです。

やりたいことだけをやっていると食べていけない

 例えば、絵を描くのが好きだから、会社を辞めて絵だけ描いていたいという人がいたとします。確かにこの先の人生が70年間あるとして、寝食を忘れて絵ばかり描いていたら、最終的には突き抜けて、何らかの価値がある絵を描けるようになる可能性はあるでしょう。ここで問題なのは、「確率」と「時間軸」の問題です。

 まず、絶対に成功するわけではないということ。絵であれば、70年やっても売れないということは十分にあり得ます。死後に売れるパターンもあるかもしれませんね。それで人生に悔いがないのであれば、確率は大きな問題ではないかもしれません。仕事をしながら絵を描くよりは、成功する確率自体は高いでしょうし。

 より深刻なのは、時間軸の問題です。10年や20年は収入が途絶える可能性が高いのです。家族がいればもちろんのこと、1人だとしても収入が途絶えた状態で、70年間も頑張り抜けますか、という話です。食べていけなくなって、今までより悪い条件のアルバイトをしたりして、やりたいことに取り組むための時間がなくなり、本末転倒になることが多いのです。

真剣に考えるべき「収入を得る方法」

 もちろん私は、「人生とは耐えることなのだから、何も考えず、黙って今の仕事を続けるべきだ」ということを言っているわけではありません。私は、「会社を辞めても生きていけるだけの能力がある人が、自分の頭で考えて人生を選び、例えば大企業を飛び出して起業をすることは、この国や世界を活性化させ、豊かにする」という考え方をしています。

 しかし、そのときに「やりたいことしかやらない」というのは違うと考えています。「やりたくないことはできるだけやらない」くらいなら、起業家の権利として認められると思います。でも会社を辞めるからには、短期・中期的には収入を得る方法を真剣に考える義務があります。それは、100%やりたいことではないかもしれません。

好きなことと得意なことは違う

 そもそも、好きなことと得意なこと、やりたいこととできることは違うんです。「好きこそものの上手なれ」という言葉は確かにありますが、「下手の横好き」という言葉もあるんです。逆に、そんなに好きではないのに、なぜか人よりうまくできてしまうということは結構あります。収入を得るためには、それを生かすと早いんです。

 好きだけど得意ではないことは、趣味としてやっている分には幸せですが、仕事にしてしまうと不幸ですよね。今まであれほど好きだった趣味も、仕事になってしばらくすると苦痛になることもありますし。だから、仕事は得意なことで収入を得る手段であり、余暇を使って好きなことで楽しむ、という考え方の人生は、それなりに合理的です。

やりたいこととできることのベストミックス

 なので、会社に勤めながら余暇を生かして好きなことをする、という人生を否定するつもりもないんです。仕事の苦痛は耐えられる範囲であり、能力以上の給料をもらっており、切り替えて余暇を楽しめるのであれば、それは幸せな人生と言えるでしょう。

 人生を通じて実現したいビジョンが大きくなったときや、仕事の時間は膨大な無駄であり苦痛であるという思いが強くなりすぎたとき、起業を考えれば良いと思います。

 そのときに必要なのは、「時間軸」です。少なくとも短期的には、得意なことを生かしながら、100%やりたい仕事ではなくても、キャッシュを生む活動をするべきでしょう。そうして事業を安定させながら、中長期的にはやりたいことに向かっていけるようなグランドデザインを構想し、仕組みを作ることが大切なのです。

 理想を描くことは大切です。かといって、最初から理想通りのことしかしないというのは、あまりにも現実から目を背けた姿勢であり、成功は遠のいてしまうことでしょう。

 それでは、また。人生計画で夢を目標に変えて実現する、シナジーブレインの安田修でした。

筆者:安田 修