早や年の暮れ。今年も1年、「あっという間だったなぁ」と感じている方も少なくないのではないだろうか。人間は歳を取るほど1年の経過を早く感じるという心理的傾向がある。

 そんな記事を読んだことがあるが、まさに私もそう感じている。今年初めに新年の目標を立てた方もいらっしゃるだろう。明確な目標は立てていないまでも、ほとんどの方はこんな年にしたいという願いを持たれたのではないだろうか。

 年の暮れを迎えるにあたり、その目標や願いの達成状況を振り返るとどうだろうか。振り返った瞬間、「目標を立てた時の自分」と「今の自分」とのコミュニケーションが始まる。

 目標とは自分との約束である。目標を達成するということ、それは自分との約束を守るということであり、約束を守れば自分との間に信頼関係が生まれる。この信頼関係の強弱が人生を大きく左右する。

目標達成を左右する自己効力感

 自己効力感という言葉がある。

 これはカナダの心理学者:アルバート・バンデューラが提唱したもので、何らかの目標を立て、その目標を達成できる自信のことをいう。

 自己効力感は、目標達成に向けての行動を実際に始められるかどうか、どのくらいその努力を継続できるか、困難に直面した時にどれほど耐えられるか、といったことを決定づける。

 そのため、諦めずに目標を達成できるかどうかは自己効力感が高いか低いかに大きく影響を受ける。高い自己効力感を持っている人は、いろいろなことにチャレンジし、そして結果を出していく。

 自己効力感の状態が人生を大きく左右するということは容易に想像がつくだろう。勝ち癖、負け癖などと言ったりするが、勝ち癖のある人は自己効力感が高く、負け癖がある人は自己効力感が低い状態にあると言える。

 私は公認会計士、心理カウンセラーとして、企業の経営顧問をさせていただいているが、組織の経営はメンバーの自己効力感の状態に大きく左右される。特に、経営者や部長、課長といったリーダーの自己効力感は企業の経営に大きく影響する。

 そのため、顧問として関わる際には、クライアントの経営者の自己効力感を高い状態に維持することも意識する。

 この自己効力感を高めるための方法として、成功体験を得る 、同じような能力の人間が努力し成功しているのを見る、 励まされる、心身の状態が良好であることの4つが挙げられる。

 この中で最も自己効力感を高める効果が期待できるのが成功体験を得ることだと言われている。成功体験を得るためには、目標を設定し、達成したという経験を得る必要がある。そのため、目標の設定の仕方は自己効力感に大きく影響する。

 適切な目標を設定し、着実に達成し続けられれば、自己効力感を高めていくことができる。自己効力感が高まれば、目標を達成する確率は自ずと上がり、また目標を達成することでさらに自己効力感が高くなるという好循環に入る。

 難易度の高い目標を達成したという経験は、自己効力感を大きく上げる効果があるが、一方で達成できなかった経験は、その分だけ自己効力感が下がるおそれもある。そのため、難易度の高い目標を設定する場合は注意を要する。

小目標を達成し続ける

 私は経営コンサルティングの際に、クライアントが難易度の高い目標を定める場合には、目標を大目標、中目標、小目標といった具合に分けて設定していただくようにする。そして、小目標を繰り返し達成していただき、達成していることをフィードバックする。

 それによって成功体験を味わい自己効力感を高めていただきながら、大目標に向けて邁進していただくようにしている。

 また、目標を設定しても忙しくてそのことに取り組む時間が取れず、結果として達成できていないといった状況が続く時は、いったん目標の設定を取り下げていただくようにする。

 目標を達成できないという経験を繰り返すと自己効力感が下がり、自分で決めた目標を達成するということに対する意識が低くなるからである。

 これは言い換えれば、目標という自分との約束を破り続けることで、自分との約束を破ることに慣れてしまうことを意味する。そのため、明らかに達成できないような目標は設定しないということも重要である。

 そうやって達成しやすい目標から始め、成功体験を徐々に積み重ねることによって、自己効力感を育てていくことができる。

 「成功するために必要なことは?」

 大企業の経営者や知名度のある人にそういった質問をする雑誌のインタビューを見ることがある。その答えとして多いのが、「諦めないこと」である。

 「そりゃそうだけどさ・・・」と思ってしまうほどに身も蓋もない答えである。ただ、諦めるということに関する心理的な要因を分析してみると、「諦めないこと」という答えの奥深さが見えてくる。

諦めない4つの心理的要因

 その心理的な要因として、(1)明確な理由の有無(2)原因帰属(3)失敗の捉え方(4)自己効力感の4つが挙げられる。

 まず、目標を達成することに対する明確な理由の有無である。理由は人のモチベーションに大きな影響を与える。

 目標を達成しなければならない理由、諦めてはいけない理由を明確に持つことができていれば、逆境にあっても諦めることなく踏ん張れるが、そういった理由が明確になっていない場合は、逆境において踏ん張りが利かず、諦めにつながりやすい。

 また、目標達成の過程において生じた失敗の原因の捉え方も諦めやすさに影響する。失敗の原因を、努力の不足にあると捉えるか、才能の欠如にあると捉えるか。このような原因の捉え方を原因帰属と言う。

 原因帰属を努力に見出す人は失敗しても奮起し努力することで目標達成に向けて邁進しようとする。しかし、原因帰属を才能に見出す人は失敗すると目標達成を簡単に諦めてしまう傾向にある。

 それから、目標達成過程における失敗の捉え方も諦めやすさに影響する。

 うまくいかなかったことをただネガティブに捉える人はモチベーションが下がりやすく、目標達成を諦めやすいタイプだと言える。

 しかし、うまくいかなかった場合、その原因を分析し、そこから仮説を立て、検証しようとする人は、うまくいかなかったという事実を「この方法ではうまくいかないということが分かった」とポジティブに捉える。

 このタイプの人は、うまくいかない場合でもあまりモチベーションが下がることなく、目標の達成に向けて別の方法を模索し、試そうとする。

 「私は失敗したことがない。ただ、1万通りのうまく行かない方法を見つけただけだ」。これは発明王エジソンの言葉であるが、まさにエジソンもこのタイプの人だったと思われる。

 そして、様々な苦労はあっても最終的にはこの目標を達成することができるという絶対的な自信、つまり自己効力感の有無も諦めやすさに大きく影響する。

自己効力感は自信につながる

 自己効力感が高い人は明るい未来を信じ切ることができるが、自己効力感が低い人は明るい未来を信じ切ることが難しい。その結果、諦めやすさに差が生じる。

 何かの目標を設定したにもかかわらず諦めると自己効力感が下がる。自己効力感が下がれば、次の目標を達成できる確率も下がる。

 逆に、諦めずに何とか目標を達成すれば自己効力感が上がり、その後の目標も達成できる確率が上がる。そう考えると、確かに「諦めないこと」は人生の成功者になれるかどうかに大きく影響すると言える。

 もし、自己効力感が低いと感じているのであれば、小さな目標からでもコツコツと達成し、それをきちんと認識していくことから始めてみるといい。それは目標という自分との約束を律儀に守り続け、自分との信頼関係を築いていくことでもある。

 自分との信頼関係、それを略すと「自信」となる。その自信こそが成功のために最も必要なことなのかもしれない。

筆者:藤田 耕司