最終18番、池田は勝ちパターンにハマりかけたが…(撮影:福田文平)

写真拡大

 国内男子ツアー最終戦『ゴルフ日本シリーズ』最終日のバックナインは、ジャンボ尾崎が持つ最年少メジャー3冠記録更新を狙う小平智、勝利での賞金王戴冠を狙う池田勇太、今季4勝目を狙うキム・キョンテ(韓国/以下キョンテ)が一進一退の攻防を繰り広げたが、3人に食らいついていたパク・サンヒョン(韓国/以下サンヒョン)が最終18番での劇的チップインバーディで抜け出し、日本ツアー初勝利。幾度もドラマを生んできた“東京よみうりの18番パー3”が新たな歴史の1ページを紡いだ形となったが、濃密な最終ホールの裏側をツアー通算9勝を挙げ、ゴルフ雑誌やテレビの解説で幅広く活躍している佐藤信人氏に語ってもらった。
【関連】日本シリーズの戦いを振り返る!国内男子ツアーフォトギャラリー
■ 1打リードを持っていた小平智が18番のティショットに選んだクラブは…
 トータル11アンダー、2位以下に3打差をつけて単独首位からスタートした小平智が3つスコアを伸ばし、一時独走状態となったフロントナイン。だが勝負の分かれ目が初めから最終ホールになると決まっていたかのように、バックナインに小平がスコアを落とし、池田、キョンテが追い上げる展開に。最終組の1つ前で回ったキョンテは17番パー5でバーディを奪取し、最終18番のティグラウンドに降り立った時点では13アンダーで小平と並んでいた。
 トッププロのみが集結する舞台にも関わらず、簡単にはパーセーブできない最難関ホール。だがキョンテはティショットをグリーン右のバンカーの手前に落とすというミスを犯すも、芸術的なロブショットでピンそば80cmにピタリ。グリーンを囲んだギャラリーはキョンテが13アンダーでホールアウトし、小平の結果を待つという状況を確信していた。
 しかしパーセービングパットはカップに蹴られ、まさかのボギー。「ティショットはミスをしましたが、アプローチで素晴らしいロブショット。パーパットもやさしくはないですが、キョンテの実力からしたら10回打ったら10回は入るパットです。本人も呆然としていましたし、“神様のいたずら”としか思えない(佐藤氏)」という感覚が18番グリーン付近に流れ、騒然とした空気に包まれた。
 キョンテのボギーフィニッシュを18番ティグラウンドから確認していた最終組。小平は13アンダー、池田とサンヒョンは12アンダー。ピン位置はグリーン右手前で、奥に突っ込んだケースではグリーン外にこぼれる危険性のある下りのパットを強いられる。小平は、1打のアドバンテージを持っていたため、無理にグリーンオンせずとも手前から攻めて、逃げ切りを図ることも考えられる状況だ。
 最初に打ったサンヒョンはグリーンを捉えられず、ピン右のラフ。続く池田のショットはグリーン左手前のカップまで約5mのバーディチャンス。池田は攻めなければいけない状況で完璧なショットでチャンスを創出した。最後にティボックスに立った小平だが、握られていたクラブはクリーク(5番ウッド)だった。
 「ほかの多くの選手がユーティリティを選択しているなかでのクリーク。17番パー5でバーディを取れなかったことが、18番でのマネジメントに影響したのでは?と思いました。前ホールで追ってくる池田、サンヒョンがバーディを奪ったのに対し、小平はパーだったことで差を縮められた。さらに18番で先にティショットを打った池田がグリーンオンしただけに、グッと流れが池田に傾きそうな場面です。追い詰められたことで“確実に乗せた方がパーを獲れるか…?”“バーディを獲らないと勝負を決められないかも…?”などという感覚になったとしてもおかしくはありません」
 結果、小平のティショットはグリーン左奥、10m以上の下りスライス。パーセーブが危うい最も難易度が高いスポットへ落とすことになってしまった。
■ 池田の勝ちパターンにハマりかけた。だがパクの一振りでストーリーに変化が…
 「池田はあの局面では完璧なショットを放った。3人がティショットを打った時点では“池田が優勝するのかな”と思いました。3日目のバーディパットとラインも似ていました。前日はショートしているので、しっかりと打って決めきる姿が想像できました(佐藤氏)」
 最初に2打目を打ったのはサンヒョン。2013年に宮里優作が劇的チップインパーで優勝を決めた位置に近いポジションからのアプローチは、誰もが想定しなかったチップインバーディ。“キョンテの80cm外し”から漂っていた混沌とした空気が倍増するように、周囲の緊張感が一気に高まったあとの小平のファーストパットは寄らず下り3mを残し。そして池田がバーディパットを外して脱落、小平も一筋ラインから逸れてパーセーブはならなかった。
 「池田は“ウイニングパット”から“プレーオフに進出するために絶対に入れなければいけないパット”に。一瞬にしてものすごくプレッシャーのかかる局面に変化しました。マラソンでいったら小平、池田、キョンテの3人が先頭集団を走っていて、ポッとサンヒョンが抜けていったような流れ。ですが17番できっちりとバーディを獲って差を詰めたことも重要な局面でしたし、あのアプローチも簡単ではない。傾斜がキツイので入らなければ下に3mくらい落ちていってしまっていたはずです(佐藤氏)」
 サンヒョンは「キョンテ選手の結果を見ても“2位タイで終われれば”というラクな気持ちで挑みました」とホールアウト後に語ったが、池田がティショットで小平にプレッシャーをかけて状況が変わったことで難ショットにチャレンジ。佐藤氏の読みどおり、「自信はありましたが、外したら2m以上は下ってしまう覚悟はあった」とサンヒョンは想定していたが、賭けに勝って池田の勝ちストーリーを潰したのだった。
 「本当にゴルフの難しい点を見せられた気がします。それまでの流れが良かったとしても1打ごとに状況が一変する。このレベルのなかではサンヒョンが“持っていた”という表現を使わざるを得ませんね(佐藤氏)」。
佐藤信人/1970年3月12日生まれ。千葉県出身。薬園台高校卒業後に渡米、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。1993年に帰国しプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝を挙げた。ツアー通算9勝。現在はゴルフ雑誌やテレビの解説で幅広く活躍している。趣味は旅行と読書

<ゴルフ情報ALBA.Net>