パプアニューギニアで開催されていたFIFA U-20女子ワールドカップが3日、フランスを3−1で下した北朝鮮の優勝で幕を閉じた。日本はアメリカとの3位決定戦を1−0で制し、2012年の日本開催大会と同じく最高位タイの3位で大会を終えた。

 圧倒的なポゼッション率を見せた日本が完全にピッチを支配した。立ち上がり、立て続けに攻め込まれるが、CKはGK平尾知佳(浦和レッズL)が、ショートカウンターは守備陣が難なくピンチの芽を摘んでいく。

 しかし、3位決定戦を前に日本はアクシデントに見舞われていた。前日練習で、キャプテンであり、守備の要として全試合にフル出場していた乗松瑠華(浦和レッズL)が右足を痛め、出場が絶望的となっていたのだ。優勝を目指してきたこのチームが準決勝でフランスに敗れた。それでも何も結果を残さずに帰ることはできないと、必死に気持ちを立て直した矢先のことだった。

「最後の試合、絶対に勝って帰ろう」――ベンチから見守ることしかできない乗松が精一杯の想いを伝え、チームをひとつにした。代わってCBを務めたのは羽座妃粋(はざ ひすい/日体大)。日本が初黒星を喫したスペイン戦での失点は羽座の不運なハンドで与えたPKだった。誰よりも苦い思いを持って3位決定戦のピッチに立った羽座のプレーは、何度も日本のピンチを救い、時おり生じるズレはコンビを組む市瀬菜々(ベガルタ仙台L)や右サイドバックの宮川麻都(日テレ・ベレーザ)らと互いにサポートしながら厚い守備を作った。

 序盤こそアメリカに攻め込まれたが、要の不在を感じさせない守備陣の奮闘で落ち着いてやり過ごすと、日本は持ち前の運動量でパスを組み立てた。

 17分、杉田妃和(ひな/INAC神戸)がボールを受けた瞬間にアイコンタクトを取ったのは籾木。そこからピタリと足元につけた籾木がすかさず長谷川唯(日テレ・ベレーザ)へ。フィニッシュまでは至らなかったが、いいスイッチだった。

 続く21分には守屋都弥(みやび/INAC神戸)のスローインから籾木が中へ折り返し、そこへ走り込んだ隅田凛(日テレ・ベレーザ)がシュート。34分には守屋からのパスをオーバーラップした宮川が中央へ、そこに長谷川が合わせた。いずれもゴールが生まれても不思議がないタイミングだったが、すべてクリアされてしまう。完全に主導権を掌握しながら崩しきれない前半が終了したとき、アメリカのフレンチ監督は満足気な表情で選手を迎え入れていた。

 高倉麻子監督が先制点を奪うために先に動く。後半開始から上野真実(愛媛FC)を、59分には松原志歩(セレッソ大阪堺)を投入し、勝負をかけた。

 しかし、アメリカは攻撃をカウンターに絞り、守備ではバイタルエリアに侵入するまでサイドへのチェックに人数を割かず、日本が狙うDF裏のスペースのケアを重点的に手厚くする。さらにこの日のGK マーフィーは反応が冴え渡っていた。

 90分間で日本が放った29本のシュートを、アメリカの守備陣は固いブロックで防ぎ続けた。ただ1本を除いて。日本がアメリカのゴールをこじ開けたのは、試合時間も残りわずかとなった87分。左サイドバックの北川ひかる(浦和レッズL)のパスを受けた上野が、これまで浴びせたミートするシュートとは対極のフワリと浮かせたループシュートでゴールネットを揺らした。

「最後の最後まで苦しい試合で決めきることができてよかった」と、上野は安堵の表情。初戦にハットトリックを達成し、今大会にピークが合った上野だったが、大会途中からは苦悩も抱えていた。

 2トップの一角として、主力の座を射止めていた上野が右大腿を痛めたのは、準々決勝で先制点に絡むプレーをした時だった。準決勝ではスタートからプレーするも途中で再び足を痛めて交代。決して万全の態勢ではなかったが、いつも通り平常心でコツコツとコンディション調整に力を注いでいた上野。あまり表情を崩さない上野が、この決勝ゴール後は、力強く突き上げた両手を、多くの仲間が駆け寄るまで下ろそうとしなかった。

 そこに彼女が抱き続けてきた"責任感"の重みを感じずにはいられない。この上野の決勝ゴールで日本は銅メダルを獲得。日本は上野のGOLDEN BOOT(最多得点)と、ファイナリストの北朝鮮、フランスを抑えて杉田がGOLDEN BALL(大会MVP)、そしてフェアプレー賞を受賞。表彰式では選手たちの曇りのない笑顔が溢れた。

 今大会は、女子サッカーの最高峰とされるオリンピックが終了した直後の開催とあって、世代的にも、時期的にも次なる東京オリンピックに向けての試金石であり、パワーバランスの縮図でもあった。おそらく各国とも、この大会の活躍をきっかけにフル代表入りする選手も少なくないはず。日本も例外ではない。U-17世代から高倉監督の指導を受けてきた選手も多く、現在、なでしこジャパンを兼任する高倉監督の本格的な新生なでしこジャパン構築の方向性をうかがう意味でも、高倉イズムを叩きこまれたこの世代のサッカーが世界の舞台でどれほど通用するのかは重要なポイントだった。

 日本の連動性を駆使したパスサッカーは、今大会も目を惹いた。日本ほど多彩な攻撃バリエーションを見せた国はなかったが、通用したかと問われると肯定することは難しい。

 まだ経験値の低さから十分とは言えないまでも、それぞれが相手を見極めながら連動することで、相手のスピードを殺す守り方を見出し、守備力を対応させていく手応えはあった。

 一方で、攻撃に関しては収穫と課題が両極端に得られた。

 準決勝のフランス戦は日本の現在地を明確に表した一戦だった。長谷川の言葉を借りれば「いい試合をしても結局は結果」ということ。互いに長所を消し合いながらの真っ向勝負を決したのは、"決定力"。実に明快だ。

 フランスは日本の連動が崩れたその一度のチャンスをモノにし、そこで動揺した日本の隙を見逃さず、確実にゴールを奪った。日本は相手をブレさせることができず、フランスの守備に風穴を開けられなかった。これこそ、経験なくしては身につけることができない"駆け引き"だ。この世代の選手たちがそのレベルにまで達していることの証明でもあったが、その"駆け引き"を自分たちのモノにする力があったのはフランスのほうだった。

 3位決定戦では、ゴールをこじ開けたことで課題を克服した面もあれば、完全に試合をコントロールしている中で、もっと早い段階で仕留めきれなかったという事実も残る。

 3位を勝ち取ったことを評価し、次世代の成長に期待を寄せた指揮官だが、「技術的にも判断も精神的にも一段も二段も上に上がっていかないとダメ。上のレベルの戦いには力が及んでいない」とも受け止めている。

 "なでしこジャパンで世界一を獲る"という新たな目標に向かうヤングなでしこたちだが、高倉監督も簡単に"なでしこジャパン"への門を開くつもりはない。それでも「少しずつ融合していければ」と、招集の可能性を含ませた。

 優勝を目指していたチームが、準決勝敗退というショックを受けたメンタル面からすると、そこで掴んだこの3位は意味深いものがある。選手たちにとってこの銅メダル獲得は自信につながるはずだ。同時に、なでしこジャパンの成長に直結する課題が得られたことも大きい。そのことを彼女たちは実感している。

「この3位はあくまでも通過点」だと選手たちは口々にいう。東京オリンピックまで4年。そのとき、ここから巣立った選手がどのように成長しているのか。最後の育成世代の代表として戦い終えたヤングなでしこたちの、ここからのさらなる奮闘に期待したい。

早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko