2018-0622
当サイトでは【定期更新記事:経産省広告売上推移(経済産業省・特定サービス産業動態統計調査)】にあるように、経済産業省の特定サービス産業動態統計調査を基にした広告費動向を定期的に追いかけ、グラフを生成し、その内容、つまり従来型4マスメディア(テレビ・新聞・ラジオ・雑誌)の広告とインターネット広告の動向を精査している。その中で、かつて新聞広告とインターネット広告は金額的にほぼ同じ、むしろ新聞広告の方が大きな市場規模を有していたが、昨今ではその立場は逆転し、インターネット広告が優位な状態にある。今回は広告市場の変貌を端的に推し量れるこの立ち位置の変化にスポットライトを当て、移り変わりの流れを確認していくことにする。
データの取得元は「特定サービス産業動態統計調査」の【長期データ収納ページ】。ここには業態別に月・四半期・年・年度ベースでの金額・伸び率を示したファイルが納められている。ここから「広告業」のファイルをダウンロードし、必要となる「新聞」「インターネット広告」の部分を抽出、その値を基にグラフを生成する。インターネット広告は単独項目として登場するのは2006年1月以降なので、グラフもそれ以降を対象とする。

まずは取得できる全期間における推移。恐らくは2006年1月以前にもインターネット広告費はそれなりの額が動いていたはずだが、今件データとして収録されたのは2006年1月の80.3億円が初めて。一方同時期の新聞広告費は541.3億円。


↑ 新聞広告費とインターネット広告費(月次、億円)

インターネット広告費は2009年までは「漸増」との表現が適切な上昇傾向だった。しかし2010年に入ってからは上下変動幅を大きくしつつ、全体的には上げ幅を拡大する流れにある。特に年末の12月と年度末の3月には大きく上振れするのが特徴的。消費一般もこの時期に拡大する傾向にあるため、より効果的な広告効果を狙うべく、機動力を有し柔軟性の高いインターネットに広告リソースを一層投入しているものと考えられる。また【ネットショッピング動向をグラフ化してみる】でも解説の通り、インターネット通販では3月と12月は大いに世帯単位での利用額が増加することから、連動性が高いインターネット広告へのリソース投入もまた活性化すると推測すれば道理は通る。

一方、新聞は静かに減少。2010年に入るとようやく下げ止まった感はあるが、時折大きな減少を示す。そして2015年以降は再び漸減の動きを示しているようにも見える。【新聞の推定購読者数の推移をグラフ化してみる】や【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる】など他の調査結果によれば、新聞そのものの発行部数、そして新聞に対する広告出稿の減少は継続しており、今後新聞広告費が再び大きく下げる傾向となる可能性は高い。

またインターネット広告費と似た傾向として、新聞広告費では毎年3月に大きく値が跳ね上がる。年度末から新年度にかけ、さまざまな環境の変化に併せ、幅広い属性に向けた周知に期待ができる新聞に対する広告効果を狙った出稿増、特に新商品や雑誌の新刊などの広告展開が行われる結果と考えられる。

「新聞広告費…下げから横ばい、再び緩やかだが下げ」「インターネット広告費…漸増」との動きがあり、2010年半ば以降何度と無く双方がクロスした以上、両者間の立ち位置がいずれ入れ替わるのは容易に想像できた。そして2013年に入ってからは、インターネット広告費が新聞広告費を上回る機会が多々生じ、2015年後半ぐらいからはそれが当たり前となっている。

インターネット広告費の上昇率が大きくなる2010年以降に限り、グラフを再構築したのが次の図。「インターネット広告費>>新聞広告費」を記録した月の、インターネット広告費側の値の丸を黄色で塗りつぶしている。さらに差異が分かりやすいように、「インターネット広告費」から「新聞広告費」を差し引いた結果の推移も併記した。この値がプラスの場合、「インターネット広告費」は「新聞広告費」を上回っていることになる。

↑ 新聞広告費とインターネット広告費(月次、億円)(2010年1月-)
↑ 新聞広告費とインターネット広告費(月次、億円)(2010年1月-)

↑ 新聞広告費とインターネット広告費(月次、億円)(直近1年間)
↑ 新聞広告費とインターネット広告費(月次、億円)(直近1年間)

↑ 新聞広告費とインターネット広告費(月次、億円)(インターネット広告費−新聞広告費の値)(2010年1月-)
↑ 新聞広告費とインターネット広告費(月次、億円)(インターネット広告費−新聞広告費の値)(2010年1月-)

現時点で二者間の立ち位置が逆転、つまりインターネット広告費の額面が新聞広告費を超えた月は2011年3月に始まり、全部で71か月分(直近の2018年4月分まで)。2013年に入ると2月以降は継続してインターネットの優勢が続き、2013年11月と2014年1月にイレギュラー的に逆転現象が起きた以外は、インターネット広告費が優勢の月が続いている(2014年2月以降51か月連続)。

直近における新聞広告費優勢最後の月となる2014年1月分は、都知事選の影響が多分にあったことが観測されており、イレギュラー的な要因の結果と考えられる。また1月はインターネット広告の閑散月でもある。そのような事案が発生する以外においては、「従来型4マスメディアとインターネット」との仕切りにおいて、「市場規模で比較してテレビ広告の次に来るのは新聞広告では無く、インターネット広告」との状況は、固定化されつつある。



一連のデータを元にした記事の展開を始めた2009年6月分時点では「あるかも」程度の可能性でしかなかった「新聞の広告市場規模をインターネットが抜き去る」状況が、今やすでに現実のものとなっている。何らかのイベント的な出来事で、今後稀に新聞の広告費がインターネットのそれを抜く時期が生じる可能性はゼロでは無いが、全体的な流れを変えることは無いだろう。

メディアのすう勢を推し量る物差しの一つ「広告費市場規模」に関しては、事実上インターネットが新聞を追い抜いたと見て、まず問題はあるまい。

なお広告費に関するもう一つの定点観測記事【電通・博報堂売上】では差が縮まりつつあるものの、現時点でもなお新聞広告の売上がインターネット広告を凌駕している。これは(電通・)博報堂「以外」の代理店において、インターネット広告の展開比率がより高いことを意味している。さらに今件経産省の公開データでは、インターネット広告専売の代理店も合わせているのも要因の一つではある。