慶應義塾大学内には、他大学からは決して窺い知れない“格差”がある。それは、大学入学に至るまで、どのような経路を辿ってきたかという格差だ。

比率的には、大学受験を経て入学した「外部生」が圧倒的に多いが、貴族的な小学校といわれる「幼稚舎」から、中学は男子校の「普通部」と共学の「中等部」、「SFC」がある。

高校は男子校である「慶應義塾高」、埼玉にある「志木高」、女子校である「慶應義塾女子」、共学である「SFC」、そして「NY高」と高校の内部生は5つに出自が分かれる。

前回は、幼稚舎生・圭一郎と外部生・由佳のできちゃった婚を描いた。今週は由佳の胸の内に迫る!




涙が出るほど嬉しかった「結婚しよう。」の言葉


圭ちゃんに妊娠していることを話した時は、正直不安でした。

彼の心の中にまだ栞ちゃんがいることも感じていたし、実際に、彼の目が一瞬泳いだのも分かりました。でも、彼は「結婚しよう。」って言ってくれた。涙が出るほど嬉しかったです。その言葉が聞きたかった。

感動より、安心した、のかな。

やっと、圭ちゃんを自分のものに出来たって思いました。

最初に彼と会ったのは、大学の入学式です。

私は長野から出てきたばかり。日吉駅を降りて、キャンパスへの銀杏並木が新入生でごった返すのを見て、胸がバクバクするような田舎者でした。

もちろん友達もまだいないし、講堂に入って式が始まるのをそわそわしながら待っていると、ガヤガヤと話しながら入ってくる男女のグループがいたんです。

一瞬で、付属校上がりの子達だって分かりました。放ってる空気が違うんです。そこだけ、パッと明るいというような。

男の子はスーツ姿がこなれてて、女の子は皆綺麗にメイクしていて、洗練されてた。こんな子達と国道沿いの「コナカ」で買ったスーツを着た私が友達になれるのかなって思いました。

そんな中にいたのが、圭ちゃんです。

一目惚れでした。紺のスーツが似合ってて、すごいかっこよかった。後になって圭ちゃんに言ってみたけど、私のことは全然気づかなかったって。当たり前ですね。


殿上人、圭一郎に近づく方法とは?




私は田舎が嫌いで、東京にどうしても出てきたくて、一生懸命勉強して、第一志望の慶應に入りました。

私も長野ではそれなりに可愛いと言われたけど、慶應は段違いに可愛い子が多くて、驚きました。サークルもルックス順に争奪戦になるし、内部進学の子しか入れないというような暗黙の了解があったりしました。

特に目立ってたのは、栞ちゃんと沙羅ちゃんと早希子ちゃん。3人で連れ立って歩いていると、みんなから注目されていました。

内部生って、私たち外部生と仲良くなる必要が無いんです。内部生だけで世界が完結するから。

私はそこそこの規模のサッカーサークルのマネージャーをやって、カフェでアルバイトをして、就職活動も真面目にやって、普通の大学生活を送ってました。幾つか恋もしました。

でも、圭ちゃんの事はずっと頭の片隅にありました。とはいえ、接点もなかったし、たまにキャンパスですれ違う程度。横目で追っているだけ。

でも、運が巡りあわせてくれたんです。


4年越しに掴み取った圭一郎との接点


必死に就職活動をしてつかんだ、総合商社の一般職。その会社の内定式で、彼の姿を見つけた時、心が踊りました。

ーやっと近くに行けるー

商社は社内での飲み会が多くて、1年目はもっぱらその飲み会のセッティングが主な仕事。たまたま同じ部門ということもあって、顔を合わせる機会も必然的に多くなりました。

最初は気持ちを隠して、一同期として仲良くなることを目指しました。

歓送迎会の幹事をやったり、雑務を一緒にやったりする中で、距離も縮まって、呼び方も名字から名前になりました。彼から「由佳」って呼ばれた時は舞い上がったことを覚えています。

彼のことを知れば知るほど、気持ちが大きくなりました。私は、しがない地方のサラリーマンの娘で、彼みたいな都会のおぼっちゃまに憧れてた。遊び方も分かってて、持ち物も格好も洒落てて。ああ、こういう人と結婚して、私もそっちの世界に行きたいって。

同期という一線を超えたいとずっと願っていたけれど、踏み込めずに時間は過ぎて行きました。

なぜなら、彼にはずっと想っていた人がいたから。

その人は、慶應でトップクラスに輝いていた栞ちゃんです。

大学の時に、あの栞ちゃんが、圭一郎に片思いしていたことは有名な噂でした。彼女が告白してフラれたのも。そして、卒業後、2人が付き合うことになったことも。

栞ちゃんと付き合っている間、彼はすごく幸せそうだったけど、振り回されている様子でした。

会社での付き合いもそこそこに送り迎えや、彼女の呼び出しに応じていて。でも、みんな「しょうがない。」って目で見てた。

私は圭ちゃんがそんな風に扱われているのを、もどかしい気持ちで見ていました。彼も彼で仕事が忙しいし、大変なはずなのに。女子アナってそんなに偉いの?支えるっていう気持ちはないの?


圭一郎を振り向かせるための禁じ手とは?


半年ほどそんな状態が続いて、ある日突然、圭ちゃんが一目で分かる程生気のない顔で出社した日がありました。

「どうしたの?ひどい顔だよ。」

「栞にフラれた。」


弱ってる時がチャンス、1番近くにいる存在に


それから圭ちゃんは酔っ払うたびに、栞ちゃんのことを話に出すようになりました。私は聞いてあげていました。親身になって。でも、心の中じゃ、神様がくれたチャンスだと思いました。

そう、弱ってる時が狙い目ってよく言うじゃないですか。

だから、彼の誘いには必ず乗ったし、連絡も頻繁に取った。彼の1番近くにいるようにした。もう誰も入れないように。




ある日飲み会でかなり酔っ払った彼は、私の家へ来ました。狭いワンルーム。

2人で初めて迎えた朝に怖かったけど聞いてみました。「私たちどうするの?」って。圭ちゃんが困った顔して、「付き合うか。」って言ってくれた時、泣きそうになりました。

そこからは、いかに彼にストレスをかけないかということに気を遣いました。いつも笑顔で、一緒にいて楽な存在。

だって、栞ちゃんになくて私にあるものは、どこにもいかない安心感だと思うから。

もともと家事を自分でやれない彼は、どんどん私の部屋に入り浸るようになって、すぐに私の妊娠が発覚しました。

順序は違ってしまったけれど、長野の両親も「玉の輿だね」ってすごく喜んでくれました。圭ちゃんのご両親にもお会いしたし。

今はとても幸せです。不安もありません。

ーこの子がきっと圭ちゃんをずっと引き留めるー

「絶対、私、いい奥さんになります。」

次週12月13日火曜更新
慶應ヒエラルキーの最上位は「慶應」中退?内部生公認エリートの実態とは。

【これまでの慶應内格差】
Vol.1:エリート街道を歩むメガバンカー、どんなに背伸びしても所詮外部生?!
Vol.2:婚活市場最強スペックの人気アナ、栞。幼稚舎出身の男を前に、人生初の挫折?!
Vol.3:幼稚舎出身のスーパーお嬢様を巡る、普通部男子とNY高男の冒険?
Vol.4:普通部の“普通すぎる男”を捨て、華やかなNY高男に挑む幼稚舎女子の恋の行方
Vol.5:慶應法政へ推薦入学の外資コンサル女に恋の予感。それを打ち砕く内部女子
Vol.6:慶應女子出身派手女、マイペース系SFCの地味女に、結婚戦争で敗北?
Vol.7:慶應志木の逆襲!もう田舎者とは呼ばせない!
Vol.8:幼稚舎男との結婚のために、外部女子は捨て身になれる。狙え、格差婚!