ウッズとがっちり握手を交わす松山の笑顔はまるで少年のよう(撮影:岩本芳弘)

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かつて、タイガー・ウッズ(米国)がゴルフ界を独壇場と化していたころ、ウッズがホストを務める大会は練習日から表彰式に至るまでウッズのワンマンショーだった。
今年のヒーロー・ワールド・チャレンジは1年3か月と数日間ぶりに戦線復帰を果たしたウッズに世界の注目が集まっていたが、彼のワンマンショーとなるはずの大会で主役の座を奪い取ったのは、日本の松山英樹だった。
タイガー・ウッズとトロフィを囲んで2ショット!
昔から「ウッズの大会」でウッズが優勝した際の表彰式では、彼自身がマイクを握り、ちょっぴりおどけながら「進行役」と「優勝者」を1人2役で演じて見せたりもしていた。まだ「ヒデキ・マツヤマ」の名前が存在も知られていなかったあのころ、大会ホストのウッズの傍らに松山が優勝者としてたたずむシーンなど、誰一人、想像すらしていなかった。
だが、今年のバハマのサンデーアフタヌーンの表彰式でウッズの傍らに立っていたのは松山だった。カメラマンたちに揃って笑顔を向けていた2人。ウッズはすました笑顔だったが、松山は少年のようにうれしそうに微笑んでいた。「タイガーは僕が幼いころからの憧れだった」。初日からそう語っていた松山は、憧れの人の大会で優勝を遂げ、憧れの人とツーショットで記念撮影。それは松山にとって至福のときであり、長年の夢が1つ叶った瞬間でもあった。
振り返れば、世界に挑み始めた2013年の松山は、初めて間近に眺めるトッププレーヤーたちの姿に「すげー」「でっけえ〜」と驚きの声を上げるほど、あどけなかった。米ツアー本格参戦を開始した2014年。メモリアル・トーナメントで早々に初優勝を挙げたが、優勝争いの大詰めでドライバーを壊したり、ギャラリーに打球が当たってしまったりと、連続するアクシデントをくぐり抜けでの勝利だった。2015年は勝ちかけて勝てない1年だった。「核になるのはアイアン」と自身に言い聞かせるようにアイアンショットを向上させる必要性を口にしていた。
そして今年、フェニックスオープンで華々しく米ツアー2勝目を飾ったが、それでも「たまたまパットが入っただけ」と振り返り、アイアンショットの出来栄えには決して満足してはいなかった。昨季最終戦が終わった今年9月も同様の感想を語っていたが、その直後から見せた日本とアジアにおける快進撃。そして今大会を制して、ついには5戦4勝。バハマの地で松山を初めて間近に眺めた人々は、「すげー」「でっけえ〜」と唸っていたに違いない。
2位に7打差で迎えた最終日。それでも楽勝とはいかなかったが、ヘンリック・ステンソン(スウェーデン)の追撃を2打差でかわし、これまでとはまた違う勝ち方で冷静に勝利をモノにしたところに松山の成長が見て取れる。「後半は10番のダボで苦しかったけど、最後はパー、パー、パーでフィニッシュできて良かった」。
昨年のヒーロー・ワールド・チャレンジでは最下位だった。米ツアーの昨季終盤戦を戦っていたころは、世界ランキング上位者だけしか出場できない今大会の18名の出場枠に入れるかどうかさえ定かではなく、しかし出場できれば出たいと、バハマ行きを狙っている状態だった。
そして、出て、戦って、見事に優勝。どこから何を眺めても、着実に、いやいや目覚ましすぎるほど目覚ましい成長を遂げている松山。「来年の目標はメジャーで勝つこと。そしてPGAツアーで複数回、優勝することなので、それに向けてしっかりと取り組んでいきたい」。
松山が自身のゴルフに満足しきる日は、おそらく引退するときまで到来しないのだと思う。努力と前進あるのみ。だが、ウッズの大会で勝ち、ウッズの傍らでうれしそうに笑う松山の姿にファンはきっと大満足。そして、この私も、想像すらしていなかった場面が現実化している彼の今と、彼のうれしそうな笑顔に、ただただ感慨深い想いでいっぱいだ。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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