出光興産本社が入居する帝劇ビル photo by Wiiii CC BY 3.0

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 石油元売りで業界第2位の出光興産。12月10日には創業者をモデルにした映画『海賊と呼ばれた男』が公開される同社は「お家騒動」で揉めている。業界第5位の昭和シェルと合併する話が進んでいたにも関わらず、創業家がこれに反対し、ついには現経営陣が合併をほぼ断念するまでに至ったのだ。

◆石油業界大手5社の財務状況は?

 石油業界では、圧倒的トップシェアを持つJXホールディングスが業界4位の東燃を買収する話が進んでいるなど、国主導で業界再編が起きている。この業界の実情と、出光興産の未来を決算書から読み解いた。

 石油の開発から輸送、国内での精製、そして販売までを一貫して行う石油業界は、大手5社におおむね集約されている。その中でも首位のJXホールディングスが頭一つ抜け出しており、’15年度には8.7兆円の売上高がある。対して、2〜4位までは昭和シェルの2.1兆円から出光興産の3.5兆円までと、拮抗している。

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 それにしても、他の業界と比べて売上高の規模が桁違いである。JXが第8位にランクインしているのを筆頭に、5社とも日本の全上場企業の中でトップ100に入る売上高を誇る。

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 その割には正社員の数はJX以外、1万人未満であり、1人あたりの売上高あたりのランキングでは石油業界はさらに上位に来る。トップの東燃はなんと社員1人あたりで8億円近くも稼いでいる計算だ。

◆原油価格の低下で厳しい台所事情

 そんな桁違いの規模を誇る石油業界だが、利益率ベースだと苦しい現状が見えてくる。’14年度期に各社赤字転落し、’16年度期に入ってもほとんど利益を出せていない企業ばかりである。

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 背景にはシェールガスの発見などに端を発する原油価格の低下がある。長期的には国内の石油需要が漸減していくというよりも本質的な問題も横たわっている。要するに石油業界は莫大な金額を動かしているものの、ほとんど儲かってはおらず、今後さらに市況が厳しくなることも確実であるという苦しいマーケットなのだ。

 とはいえ、石油は今なお現代社会に不可欠なものであり、石油会社が多数倒産して、国内で安定供給できない事態はあってはならないこと。そのため、国主導で大手同士の統合が模索されてきたのだ。経営統合が実現すれば、各会社の抱える過剰な設備の問題も解消できて、より筋肉質な財務基盤になることが期待できる。

 石油業界の大手は自己資本比率が10〜20%台前半程度と、かなり低く、借入にかなり依存している。売上の9割を占めるのは原価であり、これをなるべく抑えていくのが不可欠である。経営統合は死活問題なのだ。

 つまり、創業家の反対によって昭和シェルを手に入れられなくなった出光興産の経営はこれから厳しい局面に差し掛かる。大手の中でも出光は特に苦しい事情を抱えているのである。

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 直近の四半期決算では出光は黒字転換を果たした。だが、それは大量に抱えていた在庫を捌いたことで、在庫評価損を抑えられたからにすぎない。この2年間で、出光興産は3000億円あまりたな卸資産を減少させた。

◆多角化に出遅れた出光興産が生き残る道とは?

 原油価格が低下すると、保有している在庫という資産の価値が目減りしていく。それが赤字として計上されていたのが解消されただけであり、衰退していく業界構造というより大きな要因は少しも変わっていない。

 自社の手掛けている業界の凋落が免れないものであるなら、基本的には生き残る道は2つしかない。1つは海外展開である。例えばJTは国内のたばこ工場を次々と閉鎖したが、同社は今や海外たばこ事業の売上が国内たばこ事業の2倍に達するグローバル・カンパニーへと脱皮した。