ノルシュテイン作品の中で最も愛される『霧の中のハリネズミ』
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 アニメーション作家として国際的に高い評価を受けているユーリー・ノルシュテインが、生誕75周年を記念して行われる特集上映「アニメーションの神様、その美しき世界」を前に来日し、アニメーション作りを始めたきっかけや、妻で美術監督のフランチェスカ・ヤールブソワとの創作活動の舞台裏を明かした。

 ノルシュテインは1941年、旧ソ連生まれ。『霧の中のハリネズミ』や『話の話』など切り絵を中心にアニメーションを手掛け、国内外で多くの賞を受賞しているアートアニメーションの巨匠だ。しかし本人は、望んでこの道に進んだわけではないという。「子供の頃から絵が好きで画家を目指していたが、限界を感じて絵の道をあきらめたんだ」とノルシュテイン。その後は国立の映画スタジオ、ソユーズムリトフィルム(連邦動画撮影所)に就職し、2年間の研修を経てアニメーション監督になった。

 童話から抽象的作品まで多彩な作品を生み出してきたノルシュテイン。その作画や美術は妻のフランチェスカが手掛けている。職場で出会った2人が共作を始めたのは、パートナーになってからだった。「美術監督が見つからなくて困っていたときに、隣を見たら優れた画家がいてね」とノルシュテインは振り返る。フランチェスカはノルシュテインの申し出をすぐに受け入れ、それ以来コンビを組み続けている。

 二人三脚の創作活動においては、2人が意見を戦わせることも少なくない。「わたしはつねに具体的で高い要求をフランチェスカに求める。芸術家である彼女も自分なりのアプローチを持っているが、それがわたしの意向と違えば受け入れない。時には衝突も起きるよ」とノルシュテイン。しかし、そんな2人の作品への強い思いは良い結果を生んできた。「同じ美術監督とは思えないほど、作品ごとに味わいが違うとよく言われる。それだけ彼女の幅が広いということだ」と妻を称える。

 そして2人が長らく取り組んでいるのが、1980年代から断続的に進めている未完作『外套』だ。現状については「今言えるのは、継続はしているということくらいかな……」とのこと。長期にわたる創作活動のモチベーションを尋ねると「頭が悪いからだ」と笑う。「賢い人はこんな仕事しないだろう? アニメーションは驚くほど時間と手間がかかる、ひどく効率の悪い仕事なのだから」と語るが、そんなこだわりや実直さこそ、世界中の作家やファンたちがノルシュテインを愛してやまない理由なのである。(取材・文:神武団四郎)

「ユーリー・ノルシュテイン監督特集上映〜アニメーションの神様、その美しき世界〜」は12月10日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開